2011年6月29日

日産 震災復旧の軌跡(東北地方販売会社 その2)

日産プリンス宮城本店の佐藤弘幸店長への震災直後の様子とその後の復旧に向けた取り組みについてのインタビュー

Q1. 地震が起こったとき、どちらにいらっしゃいましたか?

A1.

その日は母の病院の約束があり、お休みを頂戴していまして、地震には津波のあった女川(宮城県女川町)で被災しました。

Q2. 会社に連絡がとれたのはいつ頃でしたか?

A2.

会社に連絡がとれたのは5日目か6日目だったと思います。女川で被災して自分の目の前を津波が走り過ぎましたので、その後、道路に行っても瓦礫がいっぱいでクルマは当然走れる状態ではありませんでした。そのため、その日は仕方なく女川のその場所でクルマの中で母と息子と一緒に過ごしました。

警察の方とかに色々聞くと、私の住んでいる石巻の渡波地区は全壊していてとても行けないよ、もし行かれたとしても責任持てませんという話になったものですから、実際に石巻の自宅にいけたのはそこから2日目でした。

その頃には自衛隊さんがある程度道路を確保してくれていたので、自宅の途中まで息子のクルマで何とかいってという感じでした。そしてそこで1日過ごしたのですが、携帯でまだ連絡がとれない状態だったものですから、その次の日に娘を探しに美里町という石巻から50キロぐらい離れたところに行くことにしました。しかしガソリンがなくなってしまっていたため、美里には2・3時間歩いてそれからヒッチハイクで向かいました。それが地震から4日目か5日目だったと思うんですが、そこでやっと娘の安否がとれて、家族全員の無事が分かったという感じでした。

そしてそこでようやく携帯がつながったので、上司の部長に連絡を取りました。「生きてたのか、よかった、よかった」というのが第1声でした。こちらも「ご心配かけて申し訳ありません」というお話をして、その後、本部の常務、社長から連絡をいただいた、そんな感じでした。

Q3. 今どういうことを考えながら営業されていますか?

A3.

お客様商売なので、こんな状態でもプリンスさんは営業しているんだなというのを分かっていただければと思うんですよね。ですから常にお店の前には2・3名のスタッフがいて、お客様がお店がやっているのか分からない状態を作らないようにしています。これは前のショールームでも同じだったんですが、きちっとお客様をお出迎えをして、お見送りをして、きちっとお座りいただいて、お飲物をご用意して、そして常に声をかけさせていただいて、不安な気持ちにさせないようにする、それが一番大切だと思います。

その次が所員の安全ですね。これも非常に大切な部分だと思うんですよね。まだ頻繁に地震が起きているので、インカムで常に地震が起きるとすぐに「逃げろ」と指示を出すようにしているんですが、ここに来て、みんなが地震に少し慣れっこになってきているところもあるので、それをたまに締めてあげないといけないと思っています。またいつこの前のような大きな地震が来るか分からないですし、まだまだ危ない状態が続いていますから。

お客様の安全と快適に過ごしていただけること、そして所員の安全ですよね。これは私の責任だと思うので、私と工場長で地震のときは一斉に「出ろ」という指示を出していますが、ただ、頭上も危ないところが多いので、ただ出るんじゃなくて色々注意を促しながらという形ですね。

Q4. 一緒にやってこられたスタッフに対して今、どういう思いをお持ちですか?

A4.

この環境の中で過ごすのは本当に大変なことだと思うんですよね。事務所は今、サービス工場の中にあるので音はひどいし、煙はひどいし、においもしますから。ただ、その中でスタッフからはお客様と話をしながらも、前向きにやろうとする姿勢がみんなに見えるんですよ。工場の方もその通りですし。

また、我々の店は本店という新車の部隊と、苦竹センターという中古車の部隊が一緒の事務所とショールームを使っているんですが、それが今、地震前よりさらに交わり合う姿も出てきています。それは変な話不幸中の幸いですが、いい部分がおかげで出てきたと思っています。そしてこのいい部分は(現在工事中で6月中旬に再開予定の)新しいショールームになっても持ち越したいなと思っていて、今のこの状態を続けられるような配置にして欲しいと上にお願いしています。

スタッフはみんな、どうやったらお客様に満足してもらえるかを日々考えながら仕事をしてくれています。また、我々の店舗よりももっと被害がひどいところもありまして、私が前にいた石巻湊店、石巻店、塩釜店、多賀城店、気仙沼店といった津波にやられたところの仲間たちはもっと大変だっただろうと思います。地震の次の日からもちろん本部と連絡もとれなかったと思うんですが、自分達で店舗内の泥かきをして、お客様がいらっしゃった場合はある程度対応しながら、いち早くお店をきれいにするための努力をしていたのは本当にすばらしいなと思いましたね。

自分でも石巻湊店が自宅の近くなので見てきましたが、港店はあまりにもひどい状況でしたけど、他に見た石巻のお店や気仙沼のお店は、ここまで水が入ったんだといいながら、殆ど痕跡がないぐらい自分達の手でそれをやっているのはほんとすばらしいなと思いましたね、同じ仲間でありながら。

Q5. 今お客様が求められているものはどういうものだとお考えでしょうか?

A5.

復興キャンペーンということで、下取り車を高く買い取りいたしますということで、これはお客様に声を出してお願いしております。実は私は石巻出身なんですが、石巻など、被災した地域の方が一番何を望まれているのかというとクルマなんですね。現地に行ってみられると分かると思うんですが、皆さん歩きか自転車で移動されているんです。もしくは使えないようなクルマでやっと走っているような状態なんですね。そんな中で私たちディーラーが何ができるかというと、クルマを提供すること、それが我々がやれることなんじゃないかということで、これは今、会社をあげてやっています。ですので多少でも査定額をあげてさしあげて、お客様のクルマを被災地に送ってもらえませんかという取り組みをしているところです。

被災した方が一番欲しがっているのは30-40万円ぐらいで1年、2年乗れればいいというクルマなんです。これは被災した人しか分からないと思いますが、私のように石巻とか、浜の方にお住まいの方であれば分かるんですが、地盤沈下で海水面が非常に上がったり、道路が波打っていたりして、新車じゃもったいないんですよ。こういうことは新車のディーラーの店長が言うことじゃないと思うんですが、その方達に今、新車を薦めるよりは中古をお薦めして、プリンスさんはあの時すぐに中古車持ってきてくれたよね、それなら、少し落ち着いたら新車を買おうって絶対そうなる人たちなんですよ、あちらの方々って。だから今は何とか中古のクルマをもう少し全社あげて集めて、それをもう少し安く販売して、そして何年か後に皆さん新車にかわる、その方が私的にはありがたいなと思っているんです。