イリュージョンに隠された視覚と錯覚の先端技術

衆人環視のステージで、雲のように宙に浮く美女。まさにイリュージョン。実は日産車の室内でも、官能評価スペシャリストという名のマジシャンが生み出すミラクルなイリュージョンが繰り広げられている。人間を徹底的に科学し、錯覚を応用して開発された新素材の数々。そんな素材を使った日産車の内装をショールームで見て、触ったあなたは、きっと自分の視覚や触覚を疑うに違いない。

シルクのシャツとポリエステルのシャツは、どちらの手触りが良く、高級感に溢れているか? そんな問いかけに、多くの方は前者と答えるだろう。しかし、手入れの難しさや耐久性を考慮すると、すべてのシャツをシルクで作るのはナンセンスである。そんなときは、いかにしてポリエステルでシルクの質感を表現するかという発想の転換が必要だ。ファッションと同じように、クルマにも感性的な心地良さが必要である。そこで日産は、感性品質の向上を加速させている。

「見て」「触って」「使って」。この一連の流れの中で、人間は何を以ってして「より心地良い」と判断するのか? その謎を紐解くためには、まず人間を科学しなければならない。

官能評価スペシャリストによる素材の評価風景。彼らの指先は高感度のセンサーだ。お客様の視点で、心地良さを正確に判断する技術を持つ。

まずは「見て」の部分。クルマのインテリア素材として、プラスチックは一般的である。しかし、プラスチックで本革のような質感を表現するのは難しい。テカテカと光を反射するプラスチックの特性に、多くの方が難色を示すのだ。英語圏で安っぽい素材のことを“プラスチッキー”と表現するのも頷ける。しかし形状等の問題で、本革を使えない部分があるのも事実。ならば反射する光の量を抑えられれば、プラスチックのような樹脂でも本革に負けない質感を表現できるのでは?

そんな発想から生まれた日産の加工技術がマイクログレイン。樹脂の表面に特殊な加工を施すことで、反射する光をあらゆる方向に拡散させ、しっとりとした高品質感を演出しているのだ。

「触って」の部分も奥が深い。人間の指は高精度なセンサーで、たった50ミクロンの髪の毛1本が机の上に落ちていても触って判断できる。しかし、そのセンサーも完璧ではない。つまり人間の指が、どの部分で、どうやってモノの硬さや柔らかさを判断しているかを解明すれば、たとえ硬いプラスチックでも柔らかいと感じさせることができるはずだ。そんな人間科学を研究することで、日産は表面加工で高触感にする技術、ソフトフィールグレインを開発した。高価な素材を使わなくても、感性に訴える素材作りに成功したのである。

マイクログレインやソフトフィールグレインの開発にあたって、日産精鋭の官能評価スペシャリストが活躍した。彼らはお客様の視点でモノを見て、触って、使って、評価を下す。その内のひとり、伴アカネは、この6年間で12,000回もモノを正確に評価したというから驚きだ。さらにマジシャンのように、どうしたら錯覚を起こさせられるか、トリックまでも考え出す。そして最後に、実際に使ってトリックが見破られないか検証するのである。

これは心地良い、これはノーグッドという評価を下せたとしても、それを的確に反映した素材を作れなければ意味がない。そのために日産は心地良さを定量化した上で、検証→測定→分析→設計というサイクルを何度も繰り返す。さらに日本だけではなく、世界中に点在する、どの生産拠点で作っても満足が得られる製品が生まれるよう、弛みない努力を続けているのだ。

日産車のどの部分に、どんな素材を使って感性品質を向上させているのか。それは日産ショールームに足を運んで、ご自身の目、手で是非とも確かめて欲しい。人間を科学した技術は、きっと心地良いと感じていただけるだろう。

マイクログレインはマーチのメーターフード、ソフトフィールグレインはマーチのアシストグリップなどに採用されている。