高容量バッテリーで広げる 次世代モビリティの可能性

伊藤 淳史

PROFILE

2008年
神奈川大学 工学部 応用化学専攻 修士課程修了
2008年
日産自動車株式会社 総合研究所に入所。
以降、5年間、高容量リチウムイオンバッテリーにおける正極の研究開発に従事。
同研究をする中で、第52回電池討論会 電池技術委員会賞を受賞。(2010年)
2012年
神奈川大学 工学部 応用化学専攻 博士号(工学博士)取得
2013年
Argonne National LaboratoryにSTAとして赴任。
高容量リチウムイオンバッテリーの実現に向け、Si負極界面現象を研究。
2015年
帰国し、正極の研究開発及びセル設計を担当し、
高容量リチウムイオンバッテリーの高性能化を進めている。
※ STA(Short Term Assignment):アサインされたプロジェクトに応じ、限定した期間で海外へ駐在し、プロジェクトの達成に向けた職務に従事する海外派遣プログラム。

エネルギーの可能性を信じて研究者に

高校生の時に、携帯電話に入っているリチウムイオンバッテリーに興味を持ち、エネルギーの可能性を感じたという伊藤淳史。大学で電池の研究をはじめ、総合研究所に入所後も、電気自動車(EV)のさらなる進化を支える高容量リチウムイオンバッテリーの研究開発に携わる。「リチウムイオンバッテリーは太陽光や風力をはじめとするさまざまな自然エネルギーからの蓄電が可能ですので、エネルギーの可能性を広げ、持続可能社会に適合したバッテリーのひとつだと考えています。海外での実証事業でも確認されているように※、EVは単なる移動手段としてだけではなく家庭や企業に電力を供給するシステムとしても社会に貢献できるものです」

※米国ハワイ州マウイ島で実施されたスマートグリッド実証事業で「日産リーフ」が、太陽光や風力発電などの余剰電力を蓄える蓄電システムの一部として採用されている。

コラボレーションの力で研究者としての幅が広がる

入所6年目、STAで米国アルゴンヌ国立研究所に赴任。これまでとは全く異なる角度から、リチウムイオンバッテリーの研究に従事した。「大学時代からずっとリチウムイオンバッテリーの正極材料の研究をしてきましたが、アルゴンヌでは反対の負極材料の研究に携わりました。日本ではひとりでコツコツ取り組んできた研究も、米国ではやり方が異なっていました。自分の研究の面白さを上手にアピールして、相手の興味を引き出し、協力を求めていくのです。私自身も物理学者の意見がとても大きな刺激になりました。化学的な研究においても物理的な分析は欠かせませんし、止まりかけていた研究にブレイクスルーをもたらしてくれることもありました。時には、他の人の力を借りる。それは研究を加速させる力となります」日本では自分の研究領域に集中するあまり、その他の可能性に目を向けにくかったという伊藤だが、アルゴンヌでの日々が、研究者としての自分の幅を広げてくれたことを実感した。

次世代のEV開発に向け、新しい心臓部を創造する

帰国後は、高容量リチウムイオンバッテリーのEV搭載に向け、これまでの材料研究だけでなく、セルデザインにも携わるようになった。「バッテリーの高容量化が実現すれば、航続距離を伸ばせるだけではなく、車室を広くすることもできます。そうすれば、クルマの設計に自由度が増すので、さらに快適な車内空間を生むことができるでしょう。またコスト削減にもつながるので、今よりもっとEVに手が届きやすくなると思います」

これまでのバッテリーのすべてを超える

これまで日産は、EVを累計19万5千台以上販売*し、バッテリーの最小単位でいえば3,744万*ものセルを生産してきたが、発火など重大不具合は0件である。「品質の高さは『製品開発』と『生産技術』によるところが大きいのですが、研究者として素直にすごいことだと思います」現在の“すごい”バッテリーを超えるものをつくらなければならないプレッシャーがあるはずだが、今、研究している次世代バッテリーへの自信ものぞかせる。「すべてにおいて、これまでの製品以上の性能を出すことは当然です。またいつまでに目標をクリアしなければいけないという時間的制約ももちろんあるので大変ではありますが、新しい時代のクルマのカタチにつながるようなバッテリーを生み出したいと思います」

*2015年10月末時点

世界になかったものを生み出す「夢をカタチに」できる場所

高校時代に思い描いた将来の夢。その舞台に、今、自分は立っていると感じる。「興味を持ってやりたいと思うことを仕事にできるのはとても幸せなことだと思います。研究者であれば、きっと誰でも『いつかはこれを研究してみたい』と思うテーマがあるはず。総合研究所には、夢をカタチにするチャンスが至るところにあると思います」突飛に思えるアイデアだとしても、価値が認められれば、研究をはじめることができる。これまで世の中になかった新しいものを生み出す喜びが、そこにはある。

総合研究所を志望する皆さんへ

新しいクルマを世に送り出し、新しい価値を社会に提供するには、さまざまな分野の研究者が必要だと考える。「EVがクルマを新しいカタチに変えていくと思います。今までの概念からかけ離れたクルマが生まれるかもしれません。いろいろな分野から面白いアイデアを持っている人にたくさん集まってもらって、互いに刺激し合いながら未来のクルマを一緒に創造していきたいと思います」

(※2015年11月取材)

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