「第1回ニッサン童話と絵本のグランプリ」大賞受賞者インタビュー

フリーのデザイナーとして忙しくしていたころ、「ニッサン童話と絵本のグランプリ」の応募の知らせを見て、これは出さなくてはと思い、応募しました。それまで絵本なんてつくったこともなく、さて絵本ってさてどうやって作るのだろう、というようなところから始まったのです。当時は絵本制作の教科書やガイドブックといったものもなく、全部一からだったのでかなり困りました。文章にも苦労しました。どうしても説明が多く、長くなってしまい、読みにくくなってしまったりするのです。初めての本でしたので、絵はあまり悩まなかったけれど、文章はずいぶん直しました。

ワニくんがシリーズになるなんて思ってもみませんでした。「ワニくんのおおきなあし」を出して、もしかしたら他の作品の依頼があるかも、とは思っていましたが、まさか続編を書いて、といわれるとは思ってもみませんでした。今はシリーズになって嬉しいです。ちょうど自分の子どもが小さい頃にワニくんを出版できて、読み聞かせることができたりして、ワニくんとともに家の歴史がある感じですね。

ワニくんシリーズは言葉、せりふが少ないので余計に難しいですね。1ページにせいぜい1、2行程度。作品を重ねるにつれだんだん絵にぴったりくる言葉が浮かぶようになってきましたが、今でも文章やせりふに悩むことはあります。短い言葉で絵とあった言葉を、子どもにわかるように選ばなければならないのです。

シンプルな作品を心がけている、というか自然とシンプルな作品が多くなっています。特に思いをめぐらしているわけではないのですが、単純に面白かったり楽しかったりする作品だといいなと思っています。何かメッセージをこめようと考えすぎるととうまくいかないし、そもそもできてみないとわからない、というのが本当のところですね。作り出すときも、全体が見えてから作るというよりは、なにかアイデアがひらめいたら描き始めて、作りながら組み立てる、という感じですね。この辺は作品ごとに違うし、うまく説明ができない部分です。


作りたいときに作りたい風に作る、という純粋な気持ちが大事ですよね。できてみて、「よし良いものができた」と思うことは、実はあまりありません。特に作り上げたすぐのときは、絵の下手な部分ばかりが目に入ってしまってね。でもしばらくして見てみると「悪くない」と思ったり(笑)。「ワニくん」のようにシリーズになってくると、シリーズならではの面白さがある一方で新しい作品を生む難しさもあります。ぼくは作品を創るとき、以前の作品を見返したりはしないようにしていますが、時々出版社さんから「ワニくん痩せてない?」なんていわれることもあります(笑)。


川面にワニくんが足を突っ込むシーンがあるのですが、あれは嫌だとかコンプレックスに感じている部分を、少し冷静になってみるとそんなに気にする必要がないのではないか、というような気付きを表現したシーンなのです。そんな心落ち着けるところが今の子ども達にもあるといいと思います。子どもは子どもなりに追い詰められることもあると思いますし、逃げ場所のような心落ち着く場所が今の子どもには必要ではないかと思ったりもしますね。


そんなにアドバイスできることはないのですが、最近の作品には難しい作品が多いような気がします。皆さん、アートとして素敵な絵だと思うのですが、わかりにくい。やはり絵本というものは、誰が読んでもわかりやすくないといけないような気がしています。イラストレーターと絵本作家はやはり少し違うと思います。ぜひ皆さんにはわかりやすい、誰にも読みやすい作品を作っていただければなと思いますね。肩の力を抜いて創作に取り組んでほしいですね。


第一回ニッサン童話と絵本のグランプリ 大賞 みやざきひろかずさん