スピーチ


2019年02月12日

2018年度第3四半期決算発表

日産自動車株式会社
最高財務責任者 軽部博

総括
2018年度第3四半期3か月の主要財務指標は、売上高3兆500億円、営業利益1,033億円、当期純利益704億円となりました。自動車事業のフリーキャッシュフローはマイナス696億円でしたが、前年度と比べ大幅に改善し、12月までの9か月間ではほぼ前年並みとなりました。第3四半期末の自動車事業のネットキャッシュポジションは1兆3,300億円でした。
なお、今年度の営業利益および当期純利益には、過年度の財務情報の修正累計額として92億円を費用計上した影響が含まれています。

第3四半期3か月は、全体需要が前年比で3.6%減少する厳しい市場環境となりました。当社のグローバル販売台数も前年と比べ2.6%減少しましたが、全体需要を上回る結果を残すことができました。
地域別にみると、日本、中国、タイ、フィリピン、中南米等の市場において全体需要を上回る伸びを達成いたしました。
一方で、米国においては販売の質の向上に対する取り組みを継続する影響で台数は減少しましたが、販売費用が改善するなど少しずつ結果が現れ始めています。また、欧州もWLTP導入やディーゼル車の需要の落ち込み、Brexitを控えた不透明感の影響を受け、台数が減少する結果となりました。

2018年度第3四半期の営業利益は1,033億円と、209億円の増益となりました。完成検査問題の影響や過年度の財務情報の修正といった一時的な要因、原材料価格の上昇や為替といった外的要因の影響がありましたが、それらを除いた会社のパフォーマンスは、モノづくり・その他で減益となったものの、販売活動がそれを上回る増益となり、改善が見られました。

販売実績
2018年度第3四半期までの9ヵ月のグローバル全体需要は前年から0.3%増の6,874万台となりました。

当社のグローバル販売台数は、日本、中国、その他の地域で台数を伸ばしましたが、北米及び欧州で減少したことから、前年比2.1%減の402万台となりました。グローバル市場占有率は前年比0.1ポイント減の5.9%でした。

<日本>
日本国内の全体需要は前年比2.1%増の373万台となりました。当社の販売台数は前年比8.4%増の41万台となり、市場占有率は前年比0.7ポイント増の11.0%でした。

2017年度は、10月に完成検査問題の対応のために生産を一時停止した影響で販売が少なかったことから、増加率が大きくなっております。その影響を除いても、今年3月に販売を開始した「セレナe-Power」や、昨年発売した新型「日産リーフ」は引き続き台数が大きく伸びているほか、e-Powerを搭載した「ノート」も好調を維持しており、「ノート」は2018年暦年で登録車販売台数1位となりました。

<中国>
会計年度が暦年ベースの中国では、1月から9月の全体需要は前年比1.6%増の1,936万台となりました。当社の販売台数は前年比7.4%増の109万6千台となり、市場占有率は0.4ポイント増の5.7%となりました。「シルフィ」「エクストレイル」といった既存の車種が台数を伸ばしたことに加え、2017年後半に新規投入したヴェヌーシア「D60」や「キックス」が台数増に貢献しました。

1月から12月までの通年では、下期以降の市場の減速の影響を受け、当社の販売台数も年初に発表した見通しの169万5千台には届きませんでした。しかしながら、全体需要が前年比2.7%減と縮小する中で、当社は前年比2.9%増の156万4千台と販売台数を伸ばし、市場占有率は0.3ポイント増の5.9%に達しました。

中国においては、9月末に新型の電気自動車である「シルフィ・ゼロ・エミッション」を発売したほか、11月にはヴェヌーシアの小型SUV「T60」、12月には新型「アルティマ」の販売を開始しました。

<北米>
米国の全体需要は前年比0.3%減の1,316万台、当社の販売台数は前年比8.4%減の107万8千台となり、市場占有率は8.2%でした。米国市場におけるセダンからトラックへのシフトの影響を受け、弊社の販売もセダンを中心に台数が減少する結果となりました。
米国においては引き続き販売正常化の取り組みを進めており、少しずつではありますが販売費用が改善するなど結果も現れてきています。

カナダでは前年比2.0%増の11万5千台を販売し、市場占有率は7.4%でした。

メキシコの当社の販売台数は前年比13.5%減の23万3千台に留まったものの、市場占有率は21.5%で、引き続き首位の座を維持しました。

<欧州>
ロシアを含む欧州における当社の販売台数は47万2千台で、前年から13.2%の減少となりました。ロシアを除くと、欧州の販売台数は前年比15.8%減の39万1千台で、市場占有率は3.0%でした。環境規制対応などにより販売台数を減らす結果となりましたが、「日産リーフ」の販売は引き続き非常に好調で、前年比3倍以上と大きく台数を伸ばしました。

ロシアにおける当社の販売台数は前年比1.9%増の8万1千台となり、市場占有率は5.8%でした。

<その他市場>
その他市場における当社の販売台数は、前年比1.9%増の61万9千台となりました。

アジアとオセアニアの販売台数は、前年比3.3%減の24万台となりました。タイは22%増、フィリピンは48%増と引き続き大きく伸びていますが、まだ課題が残るインドネシアやインドでは減少しました。「キックス」が好調な中南米においては前年比14.3%増の17万3千台を販売しました。中東においては当社の販売台数は前年比6.9%減の12万8千台にとどまりましたが、全体需要はさらに大きく減少しました。アフリカとその他市場では特にエジプトで大きく伸び、販売台数は前年比11.1%増の7万8千台となりました。

財務実績
次に2018年度第3四半期の財務実績をご説明しますが、これまでの発表と同様に、中国の合弁会社に持分法を適用する会計基準に基づき、ご報告いたします。

  • 連結売上高は8兆5,800億円となりました。
  • 連結営業利益は3,137億円、売上高営業利益率は3.7%でした。
  • 経常利益は4,718億円となりました。
  • 当期純利益は3,167億円、売上高純利益率は3.7%となりました。前年度の当期純利益には米国における税制改革による影響が含まれているため、大きな減少となりました。

<営業利益増減分析>
特別項目が639億円の増益要因になっていますが、これには昨年度の特別項目に加え、今年度の完成検査問題や過年度の財務情報の修正による費用計上の影響などが含まれています。

会社のパフォーマンスを示す販売活動とモノづくり・その他も、それぞれ増益要因となりました。
販売活動においては、販売台数が減少し台数・構成は減益要因となったものの、販売費用が改善したことが増益につながりました。モノづくり・その他は、購買コストの削減は引き続き結果を残し、規制対応コストや研究開発費・生産費用などの増加を相殺しましたが、原材料価格の上昇を吸収することはできませんでした。

さらに、新興国通貨を中心とした為替も引き続き逆風となりました。

以上の結果、第3四半期までの9か月の営業利益は、前年度から505億円減少し、3,137億円となりました。

主要財務指標(中国合弁会社比例連結)

中国合弁会社比例連結ベースの第3四半期3か月の財務実績は次の通りです。

  • 連結売上高は3兆3,600億円でした。
  • 連結営業利益は1,443億円、売上高営業利益率は4.3%となりました。
  • 当期純利益は704億円でした。
  • 自動車事業のフリーキャッシュフローは106億円でした。
  • 自動車事業のネットキャッシュポジションは1兆6,800億円となりました。

2018年度販売台数見通し
当社は、足元の状況を勘案し、今年度のグローバル販売台数および業績の見通しを修正しました。

米国における販売正常化や、欧州における環境規制対応等による台数減の影響が当初の見通しを上回ったほか、第3四半期以降グローバルに足元の全体需要が前年を下回る状況が続いており、弊社の販売もその影響を受けております。
以上の状況から、今年度のグローバル販売台数を、32万5千台引き下げ、560万台としました。

2018年度業績見通し

第3四半期までの進捗及びグローバル販売台数の修正も反映し、通期の業績見通しを次のとおり修正いたしました。

  • 連結売上高は11兆6,000億円
  • 連結営業利益は4,500億円
  • 当期純利益は4,100億円

為替レートの前提は第4四半期が1ドル109円、通期では110.6円としております。

2018年度見通し 営業利益増減分析

2018年5月に発表した営業利益見通しに対する増減要因は以下のとおりです。

  • 販売及びコスト削減パフォーマンス・その他で、1,300億円の減益要因となっています。これは販売台数減少の影響やインセンティブの未達などを効率化やその他項目によって一部吸収した差額です。
  • 原材料価格の上昇、および関税追加による減益が200億円。
  • 過年度の財務情報の修正による費用計上92億円を含む2018年度特別項目による減益が200億円。
  • 研究開発費の効率化による増益が100億円。
  • 為替前提の変更による増益が700億円。

以上により、当初の見通しと比較し900億円の営業利益の減少を見込んでおります。

2018年度 株主還元

5月に発表した今年度の配当の見通しは、このとおりです。

最後になりますが、昨年11月以降、元代表取締役らによる不正事案の件では皆様に大変なご心配とご迷惑をおかけしておりますことを深くお詫び申し上げます。
既に発表のとおり、現在、社外委員4名および独立社外取締役3名で構成されるガバナンス改善特別委員会を立ち上げ、3月末を目途に当社のガバナンスに関する提言をいただく予定になっております。すべてのステークホルダーの皆様の信頼を取り戻すべく、その提言をもとにガバナンスを抜本的に見直し、強化してまいる所存です。

以 上