2018年2月8日
2017年度第3四半期決算発表
日産自動車株式会社
常務執行役員 田川丈二
財務指標
2017年度第3四半期までの9か月間は、前年に対し、販売台数及び市場占有率を伸ばしました。一方、連結営業利益は前年から減少し、国内の完成検査問題及び米国におけるタカタに関わる集団訴訟費用から成る特別項目や、米国で想定以上の全体需要の落ち込みに対応して第3四半期に販売会社在庫を削減する方策を取ったことが、減益要因となりました。
2017年度第3四半期までの連結売上高は8兆5,300億円、連結営業利益は3,642億円、売上高営業利益率は4.3%となりました。当期純利益は5,781億円となり、売上高純利益率は6.8%でしたが、これには2017年12月22日に決定された米国の税制改革による改善影響2,077億円が含まれています。自動車事業のフリーキャッシュフローは1,003億円のマイナス、12月末現在の自動車事業のネットキャッシュポジションは1兆3,100億円となりました。
前年との比較では、先ほど申し上げた国内の完成検査問題及び米国におけるタカタに関わる集団訴訟費用から成る特別項目と、2016年度末に実施したカルソニック・カンセイ社の株式売却の影響が含まれております。
販売実績
2017年度第3四半期までの9か月間のグローバル全体需要は前年比2.0%増の6,852万台となりました。当社のグローバル販売台数は前年比2.9%増の410万9千台に達しました。市場占有率は0.1ポイント伸び、6%となりました。地域別に見ますと、
日本国内の全体需要は前年比4.5%増の366万台となる一方、当社の販売台数は前年比9.7%増の37万8千台となりました。
登録車の販売台数は完成検査問題を受け、前年比3.4%減の25万2千台にとどまったものの、軽自動車の販売が前年から50.6%拡大し12万6,000台に達したことで、登録車の落ち込みを補いました。昨年度に販売を再開した「デイズ」と「デイズ・ルークス」が販売をけん引しています。国内の市場占有率は前年比0.5ポイント増の10.3%となりました。
会計年度が暦年ベースの中国では、1月から9月までの9か月間の全体需要は、前年比2.6%増の1,908万台に達しました。当社の販売台数は前年比9.8%増の102万台となり、市場占有率は前年比0.3ポイント増の5.3%でした。
1月から12月までの通年の当社の販売台数は、前年から12.2%拡大し、152万台を記録しました。「エクストレイル」と「シルフィ」が貢献しています。通年のマーケットシェアは前年比0.6ポイント増の5.6%となりました。
北米の全体需要は前年比1.8%減の1,597万台となり、当社の販売台数は前年比1.4%減の156万1千台となりました。米国の全体需要は前年から1.9%減少し、1,320万台に留まる一方、当社の販売台数は前年比1.1%増の117万7,000台に達し、市場占有率は8.9%となりました。引き続き好調な「ローグ」と「ローグスポーツ」が販売を支えています。
カナダの全体需要は前年から4.6%増加する一方、当社の販売台数は前年比8.6%増の11万3千台に達し、市場占有率は7.0%となりました。
メキシコの全体需要は前年から8.3%減少し、当社の販売台数は前年比13.7%減の27万台に留まり、市場占有率は23.4%となりました。
ロシアを含む欧州における当社の販売台数は前年比0.3%増の54万4千台で、市場占有率は微減の3.7%となりました。ロシアを除く欧州の販売台数は前年比2.2%減の46万4千台となり、市場占有率は3.5%でした。ロシアでは景気の回復基調が続き、当社の販売台数は前年比17.8%増の8万台となり、市場占有率は6.3%となりました。
その他市場における当社の販売台数は、前年比2%増の60万7,000台となりました。中南米とアフリカ・その他市場を中心に台数が伸びたことに加え、「ダットサンredi-GO」や日産「キックス」をはじめとする商品が拡販に寄与しました。アジアとオセアニアでは前年比2%減の24万8千台を販売しました。中南米の販売台数は前年比14.5%増の15万1千台、中東は前年比6.6%減の13万8千台となりました。アフリカとその他市場では7万台を販売し、前年から11.7%伸ばしました。
財務実績
次に2017年度第3四半期までの財務実績をご説明しますが、これまでの発表と同様に、中国の合弁会社に持分法を適用する会計基準に基づき、ご報告いたします。
第3四半期までの9か月間の実績は次の通りです。
- 連結売上高は8兆5,300億円となりました。
- 連結営業利益は3,642億円、売上高営業利益率は4.3%となりました。
- 当期純利益は、主に米国の税制改革による改善影響から5,781億円に増加し、売上高純利益率は6.8%となりました。
第3四半期の3か月間を見てみますと、連結営業利益は824億円となりました。主に2つの要因が影響しています。
- 米国において市場環境を反映して減収になったことが418億円の減益要因となりました。モデルイヤー2017から2018への切り替えに伴い、販売費が増加したことに加え、販売会社在庫を削減して米国の全体需要の減少に対応したことが、米国におけるパフォーマンスに影響しました。
- 国内の完成検査問題は396億円の減益要因となりました。国内販売及び輸出の台数減少、生産工程の変更によるモノづくりコストの増加、工場のラインスピードの回復に想定より時間がかかったこと、国内向けの車両販売に関わる営業費の増加が影響しました。
- その他の項目は92億円の増益要因となりました。
第3四半期までの9か月間の連結営業利益は、特別項目を除くと4,446億円となりました。
増減要因は次の通りです。
- 昨年度はカルソニック・カンセイ社の営業利益238億円が含まれていました。
- 為替変動は323億円の増益要因となりました。
- 原材料価格は801億円の減益要因となりました。
- 台数・車種構成及び販売マーケティング費用の増加は1,386億円の減益要因となりました。
- 購買コスト削減と商品性向上コストを含むコスト項目は1,397億円の増益要因となりました。
- 引き続き研究開発投資を行っており、研究開発及び生産費用は214億円増加しました。
- その他項目は333億円の増益要因となりました。
国内の完成検査問題の影響と米国のタカタに関する集団訴訟費用を含む特別項目を入れると、営業利益は3,642億円でした。
中国合弁会社比例連結ベースの財務実績は次のとおりです。
- 連結売上高は9兆4,200億円に伸びました。
- 中国の合弁会社の好調により、営業利益は4,748億円、営業利益率は5.0%で、減益幅は持分法を適用した場合と比べ多少緩やかなものとなりました。
- 当期純利益は5,781億円に改善しました。
- 自動車事業のフリーキャッシュフローは91億円。
- 自動車事業のネットキャッシュポジションは1兆5,800億円となりました。
業績見通し
当社は2017年度のグローバル販売台数および業績の通期見通しを修正しました。国内、メキシコ及び欧州の台数減を、好調な中国とその他市場がカバーしきれない状況を勘案し、通期のグローバル販売台数の見通しを、5万台下方修正し、578万台に見直しました。
当社は、販売台数及び事業の見通しを反映して、通期の業績見通しを修正し、次の通り、東京証券取引所に届け出ました。為替レートの前提は通期で1ドル111円で、中国合弁会社に持分法を適用した値です。
- 連結売上高は11兆8,000億円。
- 連結営業利益は国内の完成検査に係る追加影響と、米国において市場環境に対応する方策をとったことに伴い、800億円下方修正し、5,650億円としました。
- 一方、当期純利益は、中国の合弁会社を含む持分法適用会社のしっかりとした業績と、米国の税制改革による当社米国事業への改善影響を反映し、7,050億円に上方修正しました。
11月に見直した営業利益に対する増減要因は次の通りです。
- 完成検査問題による減益を追加で300億円見込みました。
- 販売会社在庫の調整は400億円の減益要因。
- 原材料価格の上昇は200億円の減益要因。
- その他項目は100億円の増益要因です。
第3四半期に進めてきた取り組みにより、第4四半期の業績は次のとおり改善すると見込んでいます。
- 第4四半期のグローバル販売台数は第3四半期に対し29万6,000台拡大し、167万1,000台を見込んでいます。
- 売上高は3兆2,700億円に増加すると想定しています。
- 営業利益は、完成検査問題と米国における市場環境への対応といった第3四半期の減益要因2つが緩和し事業が正常化に向かうことから、2,008億円に改善し、売上高営業利益率は6.1%に上昇すると見込んでいます。
- 当期純利益は1,269億円、売上高当期純利益率は3.9%の見通しです。
株主還元
直面している課題はあるものの、2017年度の通期配当は引き続き前年比10.4%増の一株当たり53円をお支払いすることを予定しています。
まとめ
当社は、今年度に入ってからの9か月間、特に第3四半期は数々の課題に直面しました。国内の完成検査問題の影響、想定を下回る米国の全体需要、業界全体のインセンティブの上昇、原材料価格の高騰などです。今後も市場の逆風と完成検査問題に起因する状況に対応する中、着実に基礎体力の向上を図るとともに、財務実績の改善を果たしていきます。
当社は、米国の市場環境に対応すべく在庫調整などの対策を行っている他、年度末までの国内の完成検査問題からの完全回復に向けた取り組みを順調に進めています。これにより、年度末までには事業を正常化できると見込んでいます。
事業の持続的な成長、確かな利益とフリーキャッシュフローを実現し、魅力ある株主還元を実施していくことをお約束いたします。
以 上