スピーチ


2012年2月8日

2011年度第3四半期決算報告
日産自動車株式会社
執行役員 田川 丈二

長引くグローバル経済の不透明感にも拘らず、2011年度第3四半期も、日産の事業運営と業績、そして販売は順調に推移しています。円高、欧州の債務危機が影を落とすマクロ経済、そして中国の成長の鈍化等、厳しい環境下にもかかわらず、当社は確かな販売と利益を実現しました。ほぼ全ての市場で需要が拡大する中、ニッサンとインフィニティブランドは、いずれも世界中で好調な販売を続けております。

2011年度第3四半期までの累計の連結売上高は、6兆6,984億円となり、連結営業利益は4,278億円、売上高営業利益率は6.4%に達し、当期純利益は2,661億円、純利益率は4%となりました。自動車事業のフリー・キャッシュフローは1,730億円のプラスとなり、自動車事業実質有利子負債は3,572億円のキャッシュ・ポジションとなりました。

日産は、東日本大震災から迅速に生産活動を再開させました。また、タイの洪水被害による現地での生産影響台数も10月から12月までの3ヵ月間で33,000台と、最小限ににとどめることができ、さらに同国以外での生産影響も出ませんでした。これらの成果はいずれも、従業員が復旧にむけて一丸となって取り組んだ結果です。今の日産には、素早く、足並みを揃えて、難題を克服する勢いがあります。

厳しいマクロ経済が続き、円高による通期業績への影響は予想されるものの、私どもは引き続き勢いを維持し、通期の売上と利益を計画通り達成する自信があります。

2011年度第3四半期の財務実績をご説明するにあたり、まずは最近の事業活動についてご報告いたします。

2011年度事業報告
当社は第3四半期も、グループ全体で着実に進歩を遂げており、複数の戦略を発表してきました。これまでのところ、中期経営計画の日産パワー88で掲げる、可能な限り早い段階での売上高営業利益率8%を達成し、それを維持しながら、2016年度末までにグローバル市場占有率を8%に伸ばすという意欲的な目標達成に向けた取り組みは順調に進んでいます。その中でも、ゼロ・エミッション リーダーシップの有効活用は、重要な戦略の一つと位置づけています。

日産リーフは今や、電気自動車の中で最も売れているクルマとなりました。加えて、日産リーフは、2011-2012日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞し、昨年12月までの累計でグローバルに22,100台の販売を達成しています。更に、グローバル自動車メーカーの中で、私どものように、持続可能なモビリティ社会の実現に向けて、環境を整えるべく、包括的なゼロ・エミッションの活動を行っている企業は他にはありません。当社はこれまでに、「e-NV200」コンセプトを披露するとともに、日産リーフの電気エネルギーを住宅に供給するシステム、日産独自の低価格な急速充電器等、新たな技術を多く発表しています。

この数ヵ月間でも、複数の革新的な商品と次世代のモビリティを目指した取り組みをご紹介しました。例えば、

  • ロサンゼルス・オートショーで初披露した、米国で生産予定の高級クロスオーバー インフィニティJX
  • 広州モーターショーで公開したヴェヌーシアブランドの第一弾、D50
  • 東京モーターショーで発表したNV350キャラバン
  • デリーオートエキスポで紹介した7人乗りファミリーカー エヴァリア
  • そして、北米国際自動車ショーで初公開した新型パスファインダーのコンセプトモデルです。

こうした車種の投入は、当社のブランドのプレゼンスを更に発展させることを目的としています。もちろん、成長著しいブラジル、ロシア、インド、中国といったBRICs諸国でプレゼンス向上を図ることは言うまでもありません。当社はこれら成長市場の需要拡大に応えるべく、生産の現地化に投資を続けています。中国のパートナーである東風汽車と共同で投資を行い、今期完成した花都第二工場もその一環です。花都工場は、世界中の日産の工場の中で最大規模となり、その結果、中国全体の生産能力は、2直で120万台となりました。

生産能力の増強は中国に留まりません。当社はアメリカズ地域でも投資を行い、昨年はブラジルのリオデジャネイロ州レゼンデに工場を建設することを発表しました。また、最近では、メキシコにおけるプレゼンス拡大を目指し、アグアスカリエンテスに工場を新設することを決定しました。同工場は2013年後半の操業開始を目指し、二つの既存工場を補完することになります。新工場プロジェクトの第一段階では、年間17万5,000台の生産能力を確保する計画です。これにより、当社のメキシコの年間生産能力は中期的に100万台以上に達する見込みです。

2011年暦年には、アフトワズを加えたルノー・日産アライアンス全体で、グローバルに800万台以上を販売し、世界最大の自動車グループの一つとなりました。

ダイムラーとの戦略的協力関係は、共同生産と技術開発を含め、引き続き重要な活動として取り組みを進めています。先月、デトロイトで、ダイムラーの4気筒ガソリンエンジンを日産のテネシー州デカード工場で生産することを、ダイムラーとともに公表しました。同エンジンは、メルセデス・ベンツとインフィニティのモデルに採用されます。生産開始は2014年を予定しており、本格稼働時には、年間25万基の生産能力を実現します。

日産とアショック・レイランドの合弁事業も順調です。先月、デリーオートエキスポで、合弁事業の商品の第二弾として、スタイルを発表しました。スタイルの生産は来年始まる予定です。

次に、今年度第3四半期の実績についてご説明したいと思います。まずは、地域別の販売状況をご報告いたします。

2011年度第3四半期販売状況
2011年度第3四半期までのグローバル全体需要は前年比3.9%増の5,578万台となりました。当社のグローバル販売台数は前年比13.6%増の342万9千台に達しました。日産は各市場で、全体需要の増加率を上回る販売増を果たしています。その結果、9ヵ月間のグローバル市場占有率は、0.5ポイント増の6.1%となりました。

では、地域別の販売状況をご説明します。

日本国内の全体需要は、引き続き東日本大震災の影響で、前年比11.3%減の307万台に留まりました。一方、当社の販売台数の減少は2%に留まり、市場占有率は前年比1.3ポイント増の14%となりました。販売好調なセレナとジュークがシェア拡大に寄与しています。日産リーフの9ヵ月累計販売台数は6,000台近くに達しており、2010年12月の発売以来の累計では、1万台を超えました。

中国の全体需要は前年比4.7%増の1,260万台となりました。当社の販売台数は20.1%増加し、90万7,000台を記録しました。特に健闘が目覚しかったのは、ティアナ、サニー、そしてキャシュカイです。2011年10月から12月の3ヵ月間も日産の販売は勢いを持続し、26.8%伸びました。その結果、2011年暦年の販売台数は、前年比21.9%増の125万台に達し、市場占有率は1.1ポイント増の7.3%となりました。

次に北米ですが、米国の全体需要は前年比7.5%増の972万台となりました。当社の販売は11.3%増の75万7,000台に達しました。アルティマ、ローグ、そしてヴァーサが大きく貢献しています。日産リーフの販売も累計9,200台に達し、拡販に寄与しました。当社の米国の市場占有率は前年比0.3ポイント増の7.8%となりました。一方、カナダでは販売台数を2.1%伸ばし、66,400台となりました。メキシコでは、市場占有率25%と引き続き好調で、17万4,100台の販売を記録しました。

欧州の全体需要は前年比4.1%増の1,381万台となりました。当社の販売は市場の伸びを大きく上回り、前年比20.8%増の51万4,000台となりました。市場占有率は0.5ポイント増の3.7%に達しました。最大の牽引役はジュークとキャシュカイです。特筆すべきはロシアで、当社の販売台数は前年比59.5%増の11万6,000台を記録し、市場占有率は5.4%に伸びました。

アセアン、アフリカ、中南米など、その他の市場では、当社の販売台数は前年比14.2%増の58万1,000台となりました。中南米では、33.4%増の16万200台に達し、特にブラジルにおいては、前年比90.2%増の53,800を記録しました。インドネシアでも急成長を果たし、販売台数は54.5%増の44,400台となりました。また、インドでは前年の倍以上に相当する17,200台を達成しました。

2011年度第3四半期財務実績
では2011年度第3四半期までの累計の財務実績をご説明いたします。連結売上高は前年比2,766億円増の6兆6,984億円となりました。台数増を中心とする増収が、為替変動による減収を相殺しました。

連結営業利益は4,278億円となり、売上高営業利益率は6.4%となりました。

当期純利益は2,661億円、売上高当期純利益率は4%です。
第3四半期までの実績では、為替変動、原材料価格の上昇、そして販売費用の増加による減益が、台数増と購買コスト削減の増益を上回りました。2010年度第3四半期に対する営業利益の増減要因を詳しくご説明いたします。

  • 1,501億円の為替変動による減益は、主として米ドルに対する円高によるものです。
  • エネルギー費と原材料価格の上昇は、1,061億円の減益要因となりました。
  • 購買コスト削減は1,543億円の増益要因です。
  • 台数・車種構成は1,219億円の増益要因となりました。
  • 販売費用の増加は951億円の減益要因となりました。
  • 研究開発費は158億円増加しました。
  • 販売金融事業は433億円の増益要因となりました。
  • サービス保証費の減少を含むその他の項目は、265億円の増益要因です。

以上、第3四半期までの累計では減益となりましたが、2011年10月から12月までの3ヵ月間の連結営業利益は1,181億円となり、前年同期の1,140億円に対して増益となりました。長期化する円高や原材料価格の上昇などの逆風にもかかわらず、増益となったことは、今後への自信につながります。

2011年度第3四半期末の自動車事業実質有利子負債は引き続きキャッシュ・ポジションを維持し、3,572億円となりました。年度当初の為替水準に置き換えれば、キャッシュ・ポジションは4,460億円となります。

まとめ
日産はグローバルで、着実に歩を進めているということをあらためて申し上げたいと思います。私どもは2011年度第3四半期も確かな成果をあげ、7四半期連続で利益を計上しました。

今年の業績は、特定の市場・地域に偏らない、バランスのとれた成長に支えられています。おかげさまで、日産の商品は世界中でご好評いただいております。サニー、アルティマ、ジューク、キャシュカイ、そして忘れてはならない日産リーフと、日産車の販売は好調です。クルマの信頼性と情緒に訴える魅力があらゆる市場で台数増に寄与しています。

私どもが、日産パワー88の意欲的な目標達成に自信が持てるのもこれら商品力のお陰です。

グローバル経済はいまだ不透明で、長期化する円高はさらに深刻になりつつあります。欧州の経済不安も続いています。そのような中、当社は引き続きコストの効率化、フリー・キャッシュフローの創出、そしてバランスシートの管理に力を入れていきます。当社は「日産パワー88」の達成に向けて、着実に歩を進めています。今後どのような課題に直面しても、速やかに対応できる力の維持・向上に努めて参ります。

以 上