スピーチ


2010年6月23日

第111期定時株主総会 事業報告

ゴーンCEO
2009年度の業績をご説明する前に、2008年後半に始まった世界的な金融危機と景気後退を受けた厳しい経営環境について、お話ししたいと思います。

自動車産業は、史上最も深刻な危機に直面しました。

日産は、速やかに態勢を整え、経済環境の急激な悪化に対処しました。5カ年計画の日産GT 2012を一時中断し、リカバリー・プランを実施しています。リカバリー・プランはフリーキャッシュフローと収益性の回復を目的とした計画です。同時に私どもは、会社の将来にとって重要な戦略的プロジェクトを犠牲にすることはありませんでした。

2009年度の財務実績は当初の予想を上回る結果となりました。更に、2010年度末の完全回復に向けて順調に取り組みを進めています。

会社の急速な回復は、いつでも、どのような危機に対しても、日産が迅速且つ効果的に対応できることの証と言えます。

また、特に自動車業界の合従連衡が顕在化する中、ルノー・日産アライアンスの価値を再確認できました。

更に、自動車メーカーは数多くの技術に加え、小型車、ファミリーカー、4x4、クロスオーバー、高級車等、あらゆる商品セグメント、そして自動車市場の拡大を牽引する、急成長を続ける新興国を中心とした各市場に参入する必要があることが、今回の危機でより明らかになりました。どの技術、セグメント、市場もおろそかにすることはできません。危機の最中、業界内では新たな提携関係が生まれましたが、今後もそれは増えていくでしょう。各社はそれぞれのアイデンティティと自主性を維持すると同時に、規模の拡大を求めています。

ルノー・日産アライアンスは、スケールメリットを生み出し、当社はこのスケールを最大限活かしていきます。具体例を二つ挙げましょう。2014年度までに日産が投入する新型車の37%がルノー車と共通のプラットフォームとなり、パワートレインの構成部品の66%も共用する予定です。

この11年間、ルノーとの間に培ってきた強い絆は、危機の中、シナジー効果を加速する力となりました。2009年はアライアンス全体で、2,280億円に上るシナジー効果を創出しました。2010年には新たに1,200億円相当のシナジー効果を見込んでおります。シナジー効果は主として、部品・プラットフォーム・パワートレインの共用、現地調達の適正化、そして、サービスサポート・基礎研究及び物流分野における協業で創出します。

これまでのアライアンスの成功によって、新たなチャンスも生まれています。ルノー・日産アライアンスは、この4月にメルセデスとスマートで知られるダイムラーと戦略的協力関係を結びました。3社は、プラットフォーム、パワートレイン、小型商用車を含め、双方にとってメリットのある様々な領域で協業を進めます。日産にとってのダイムラーとの提携による最初の成果は、インフィニティに採用するダイムラーのディーゼルとガソリンエンジンです。日産、ダイムラー、そしてルノーは変速機の分野でも協力していきます。

また、ルノー・日産アライアンスは、ダイムラーの最大の企業株主となりました。株式の持合は、お互いを尊重し、信頼し、透明性をもって、長期的に力を合わせていくという約束の証です。各社はそれぞれの強みを活かしながらも、自社のアイデンティティと自主性を保持します。各パートナーは、好機を最大限活かし、将来の成長につなげていきます。

グローバル自動車業界において増していく日産の存在感、難局に対処する力、そして長期的な価値を創造するという信念は、この1年間の厳しい環境にあっても揺ぎ無く貫いてきました。私どもは、継続的な成長、価値創造、そして持続可能なモビリティ社会への貢献を重視しています。これらの取り組みが、信頼を深めると信じています。

ではここから、2009年度の業績と2010年度の計画について、COOの志賀よりご説明いたします。


志賀COO
2009年度販売状況

私からは、まず、販売実績の説明をいたします。

2009年度のグローバル全需は、前年から250万台近く増加し、6,400万台に達しました。これは主に、各国政府による需要喚起策と、中国市場を中心とする新興市場の拡大によるものです。

日産のグローバル販売台数は、前年から3%伸び、市場占有率は5.5%となりました。

2009年度はグローバルで8車種の新型車を発売しました。

  • 欧州にピクソ
  • 中東でパトロール
  • 日本国内へはNV200バネット、フーガ、ルークスを投入し、
  • 米国にインフィニティGコンバーチブルと370Zロードスター
  • そしてグローバル・コンパクトカー第一号の新型マーチがタイでデビューを飾りました。

新型車は全ての市場でご好評をいただいております。例えば、マーチはタイで、「もっとも環境にやさしいクルマ」部門で2010年のカー・オブ・ザ・イヤーに輝きました。更に、小型バンのNV200は欧州の著名な自動車ジャーナリストによる選考の結果、インターナショナル・バン・オブ・ザ・イヤーに選ばれました。

他のクルマも高い評価を得ております。例えば、370Zロードスターは、米国で、コンシューマー・ダイジェスト誌の消費者が選ぶ最も優れた製品、BEST BUY賞に選ばれました。日本では、スカイライン・クロスオーバーが、2009-2010あなたが選ぶカー・オブ・ザ・イヤーのRVオブ・ザ・イヤーを受賞しました。健闘を続けるニッサンGT-Rは、中東のカー・オブ・ザ・イヤーとスポーツ・カー・オブ・ザ・イヤー、そしてオーストラリアのパフォーマンスカー・オブ・ザ・イヤーを含め、7つの賞に輝きました。

世界中のお客さまに日産車をご愛顧いただいております。2009年度、日産は日本、欧州、米国といった全ての主要市場で、市場占有率の維持、または向上を果たしました。また、成長著しい中国でも販売台数を飛躍的に伸ばしました。

日本国内の当社の市場占有率は前年並みの12.9%でした。低燃費の日産エコシリーズの健闘が、販売を支えました。セレナは2年連続でミニバンの販売ランキング1位を獲得し、エクストレイルもSUVで3年連続首位を維持しています。

米国における当社の市場占有率は前年から0.4%伸び、7.6%となりました。第4四半期には販売台数が飛躍的に増加し、市場占有率は過去最高の9%に達しました。ヴァーサとアルティマがシェア向上の牽引役を果たしました。ヴァーサのセグメントシェアは23%と、セグメントトップを誇っています。

欧州における市場占有率は対前年で微増の2.8%となりました。キャシュカイとマイクラが健闘しています。各国政府の買い替え助成に支えられ、西ヨーロッパにおける当社の販売台数は前年から24%伸びましたが、ロシアの販売の急激な落ち込みで相殺されました。

中国では、引き続き販売を伸ばしており、ティアナ、シルフィなどの主力車種の販売も好調です。2009年通期の販売台数は前年から38%増加し、2010年度第1四半期の販売は68%増を記録しました。今や日産は、日系自動車メーカーの中で最大の販売台数を誇っています。しかしながら、供給が需要の拡大に追いつかなかったため、2009年度の市場占有率は前年から0.4ポイント減少しました。現在中国では、生産能力を増強するべく、広州の花都や鄭州で新工場を建設しています。

在庫管理
需要に対応した生産台数を維持するべく、グローバルな生産体制を各市場の状況に合わせて調整しています。
慎重に在庫管理を進めてきた結果、2009年度末の新車の在庫は低水準の47万台に留まっています。今後も引き続き厳格な在庫管理に取り組み、フリーキャッシュフローへの影響を最小限に抑えます。

2009年度財務実績
では、以上の取り組みを受けた財務実績についてご説明したいと思います。
2009年度末の連結売上高は7兆5,173億円となり、営業利益は3,116億円と前年の損失から大きく黒字に転じました。

また、自動車事業のフリーキャッシュフローもプラスとなり、バランス・シートは強化されました。自動車事業実質有利子負債も大幅に減少し、前年から飛躍的に改善しています。

単独決算の詳細につきましては、お手数ですが、お送りしました第111期報告書をご参照ください。

以上の結果は日産の本来の実力には及ばないものの、金融危機、世界的な景気後退、それに伴う需要の減退、そして不安定な為替レートの脅威に晒された厳しい環境下でスタートをしたことを考えると、高い実績であったと言えると思います。

私は、リカバリー・プランの実行に全力で取り組んでくれた日産の従業員一人ひとりを誇りに思います。厳しい中、本当によく頑張ってくれました。

2010年度の見通し
以上が2009年度の状況です。では今年度の見通しについてご説明いたします。
2009年度は当初の予想を上回る業績を実現しましたが、市況は依然として不安定な状態が続いています。今年度は、売上の増大、コストの徹底管理、フリーキャッシュフローの創出という3本柱からなるリカバリー・プランの完遂に全力を注ぎます。

まず、ひとつめの売上の増大についてご説明いたします。当社は主要市場で、市場占有率向上に向けた具体策を進めていきます。具体例をいくつかご紹介しますと、

  • 日本国内では、保有台数増加を目指した基盤顧客対応プログラム等によって販売向上を図ります。これは、日産車を所有されているお客さまに対して、車両点検のご案内、店頭イベントのご案内、定期刊行物のお届け、調子伺い等、応対頻度や応対時期別内容を細かく定めた計画的な活動プログラムです。
  • 米国では、個々のディーラーの業績を厳格に評価することにより、ネットワークの強化を進めています。
  • 先ほど申し上げましたように、中国では生産能力の増強を図っています。
  • 欧州では、具体的なシェアアップ計画を実行中で、本活動の成果は、2009年半ばから出始め、現在も改善を続けています。

二本目の柱はコストの徹底管理です。モノづくり部門による原価低減活動は、2010年度もリカバリー・プランの重点領域です。モノづくり部門とは、開発、購買、生産、そしてサプライ・チェーン・マネジメントです。当社は今回の危機対応で実施してきたマーケティング費用、生産コスト、研究開発費、時間外手当、出張費、一般管理費等の費用の抑制にも引き続き取り組んでいます。

三本目の柱はフリーキャッシュフローの創出です。今年度は販売台数増と、インドやタイからのソーシングの増加に伴い、運転資本はフリーキャッシュフローの悪化要因になる見込みです。しかしながら、当社は在庫管理の徹底で、マイナスの影響を最小限に抑えます。加えて、投資活動等、運転資本以外のフリーキャッシュフローの構成要素の管理にも引き続き努めます。

以上、3本柱に取り組むことで、今年度、日産は完全回復を果たすことができると考えております。

2010年度財務見通し
2010年度は、連結売上高、連結営業利益、当期純利益のいずれも前年比アップを見込んでいます。

設備投資は3,600億円、研究開発費は4,300億円を想定しています。

2010年度末にはフリーキャッシュフローをプラスにし、自動車事業実質有利子負債を完済する見込みです。

持てる資源を最大限活かして市場占有率の向上を図り、原価低減を進め、運転資本を低い水準に抑えていきます。更に、ルノーとのシナジー効果の創出を加速していきます。

新商品・新技術
2010年度の売上増を支えるのは、グローバルで発売する新型車10車種です。その第一弾は、今月日本で発売したジュークです。今後ジュークは、米国と欧州をはじめ、複数の市場に順次投入していく予定です。

日本ではジュークのほかに、新型エルグランド、新型ミニバン、そして新型の軽自動車の発売を控えています。

米国に続いて湾岸諸国とロシアにはインフィニティQXを投入します。
加えて米国には、商用バンのNVシリーズとコンバーチブル・クロスオーバー。米国とカナダでは新型クエストを発売します。
そして、ゼロ・エミッション車、日産リーフがいよいよ米国、日本、欧州に登場します。
更に、グローバル・コンパクト・カーシリーズ第二弾の手頃な価格のセダンも投入予定です。

2010年度のグローバルな全体需要は、政府による需要喚起策が打ち切られる影響を受ける欧州や日本では前年を下回ると予想されるものの、新興国での伸び、米国の回復が寄与して、前年比3%増を想定しています。当社のグローバル販売台数は、前年比8%増の380万台と過去最高を見込んでいます。販売増を支えるのは、10車種の新型車と、15件を超える新技術です。

ゼロ・エミッションとピュア・ドライブは日産の環境技術を支える二つの重要な柱です。ピュア・ドライブとは、内燃機関搭載車両に採用する低炭素、低排出ガス技術の総称です。

日産リーフに搭載される、当社の小型リチウム・イオン電池のエネルギー密度は、従来のバッテリーの二倍です。

今年の秋に発売する予定のフーガ・ハイブリッドは、日産独自のハイブリッド・システムを採用し、画期的なワンモーター・ツークラッチ・システムが、従来のツーモーター・システムを上回る加速レスポンスを実現します。

軽量化・小型化に成功した副変速機付きエクストロニックCVTはこれまで以上の発進性と高速時の低燃費を達成しています。

このように、数々の革新技術と商品を投入することで、2010年は「技術の日産」を強く印象付ける年になるでしょう。

続きまして、CEOのカルロス・ゴーンより、今後の戦略についてより詳しくご説明させていただきます。


ゴーンCEO
今後の方向性
日産はこれまで、様々な取り組みを実行し、危機に対処して参りました。当社は、最小限の資源で最大限の効果を得る質実を旨とし、コストの適正化に努め、優先順位の低いプロジェクトをキャンセルもしくは延期しました。同時に、会社の将来にとって重要な戦略をあきらめることはありませんでした。そのいくつかをご紹介しましょう。

品質領域でリーダーになること
品質領域で業界のリーダーを目指す取り組みを始めて今年は3年目になりますが、日産は着実に進歩を遂げています。

複数の日産車が、主要市場の最も影響力のある指標で、高い評価を獲得しています。いくつか例をあげましょう。
中国では、4車種が、それぞれのセグメントでJ.D.パワー初期品質調査の上位3位にランクインしました。
米国では、アルティマとインフィニティG37がコンシューマー・レポート誌のトップ・ピックに選ばれ、J.D.パワー初期品質調査では、ニッサン・ブランド4車種、インフィニティ・ブランド2車種が、それぞれのセグメントで、上位3位に入り、内、フロンティアは首位を獲得しました。
イギリスでは、キャシュカイとノートが、自動車雑誌「ホワット・カー?」から信頼性で4つ星を獲得しました。
ドイツでは、キャシュカイとノートが、ドイツの自動車ドライバーをサポートする組織であるADACより、信頼性でトップの評価をいただきました。

2007年度以来、当社の購入後3ヶ月のワランティ・クレーム発生率は50%近く改善しています。また、私どもはグローバルで、品質問題対応の早期化を図っています。

日産独自の取り組みである、フィールド・クオリティ・センターの世界的なネットワークが、対応スピードと効果の向上に寄与しています。各地域のフィールド・クオリティ・センターを通じて、現地の従業員と、研究開発、生産、サプライヤーが連携を深め、問題に速やかに対処しています。現場のエキスパートが迅速に技術評価を行い、問題解決にあたっています。フィールド・クオリティ・センターの効果で、品質問題を解決するまでの期間が短縮され、2007年度比で対応スピードは30%改善しました。

2009年度は、問題発生からリコールあるいはサービス・キャンペーン実施の決定・実行までの過程において、日産は、他の主要な日系企業の中でも群を抜いて迅速な対応を実施してきました。本活動は、市場でも評価をいただいております。先月、米国のラフード運輸長官に都内でお会いしたときに、日産のリコール決定プロセスは、米国の自動車業界の模範だとお褒めの言葉を頂戴しました。

持続可能なモビリティの推進役
品質とは、すなわち、お客さまを中心に仕事を進めることです。持続可能なモビリティの推進も同様です。

持続可能なモビリティの実現には、環境に配慮したクルマや、低燃費車、あるいは、燃料を一切消費しないクルマをご提供することだけでなく、より大きな価値と性能をもたらすクルマづくりが求められます。

ゼロ・エミッションの領域でリーダーになること
既に株主の皆様は、日産リーフをご覧になった、あるいは耳にされたことがあると思いますが、日産リーフは、ルノー・日産アライアンスが今後投入予定の8車種の電気自動車の第一弾です。私自身もその性能を確かめるべく試乗をいたしましたが、日産リーフは正に、21世紀のグローバル・カーです。スムーズでリニアな加速性能を持ち合わせ、優れたハンドリングと運転する喜びを味わえます。静かで、クリーンな日産リーフはITを満載し、お客さまとクルマの関わり方を大きく変えることになるでしょう。日産リーフは、世界初の手頃な価格の、量販ゼロ・エミッション車として、世界に大変革をもたらし、比類なき存在となるでしょう。

更に、ルノー・日産アライアンスによる電気自動車の取り組みは、他社と一線を画します。私どもはゼロ・エミッション・モビリティ・システムの導入を進めています。電気自動車という商品を単に販売するだけではありません。当アライアンスは、電気自動車に拘るあらゆる側面に関与しています。各国政府の協力のもと、官民一体となって、持続可能なモビリティ社会の推進に取り組んでいます。パートナーと手を組み、バッテリー開発に従事しています。バッテリーと電気自動車の生産を手がけています。充電とバッテリーの再利用のためのインフラ整備に注力しています。例えば、日本国内では、当社の販売拠点2,200箇所全てに標準の充電器を設置するとともに、全国半径40キロ圏内に、急速充電器を一基以上配備します。

日産リーフの発売は今年の12月を予定していますが、既に日本では6,000件、米国では約14,000件の予約をいただきました。この台数は、2010年度の生産能力を遥かに上回っております。
個人のお客さまからご注文が殺到しており、世界中のマスコミが、電気自動車の報道で日産を大々的に扱っています。先週は、世界中から400名を超えるジャーナリスト、政府高官、影響力のある方々が来日され、日産リーフを試乗されましたが、お陰様で大変ご好評をいただいております。

この新しい車を気に入ってくださっているのは、これらの方々だけではありません。

今月初めには、アップル社のCEOスティーブ・ジョブズ氏が、日産リーフを用いて、同社が発売する最新の携帯電話の広告配信サービスに関するデモンストレーションを行いました。

ゼロ・エミッション社会には注目が集まっており、日産は先導役として、力を尽くす所存です。

いくつか具体例をご紹介しましょう。ご存知のように、昨年ルノー・日産アライアンスは横浜市と共同で、ヨコハマ モビリティ“プロジェクトZERO”を開始しました。以来、様々な取り組みを進めています。

これまで、4万人以上が、E1グランプリに参加されました。E1グランプリとは、誰でも参加できるエコ運転ポータルサイトの燃費競争で、優勝者を表彰しています。
渋滞改善に資する経路ガイダンスの実証実験に参画し、渋滞中のCO2排出削減活動に協力しています。
公共施設の充電設備の設置等、横浜市の進める電気自動車インフラの整備にも携わっています。横浜市には、公用車として電気自動車34台を購入していただきました。横浜市は正に、世界のモデル都市となるでしょう。

よりクリーンな交通機関の実現を目指す日産の取り組みは、日本国内に留まりません。各国政府から、電気自動車の普及に向けた活動についてのご相談をいただいております。

世界中の人々にモビリティを
お客さまに手頃な価格のクルマをご提供することも、責任あるグローバルな自動車メーカーの仕事の一つです。インドのバジャージ社と共同開発を進めている超低コスト車はその一環です。また、新たなグローバル・コンパクトカー・ラインアップも本活動の一部です。日産には、手頃な価格の小型車からニッサンGT-R、インフィニティまで、幅広いお客さまのニーズにお応えする商品ラインアップが揃っています。

当社のグローバル・コンパクトカーは、お客さまがご家族と安心してお乗りいただける、安全で頼りになる、モダンで、自由な移動手段です。グローバル・コンパクトカーのエンジンは世界中で燃費の新たな基準を確立するでしょう。グローバル・コンパクトカーは新興国を中心に、多くの新規のお客さまを獲得することを目指しています。

先日、タイとインドの工場で新型マーチ/マイクラの生産が立ち上がりましたが、同車は中国、メキシコでも順次生産していきます。当社はクルマのソーシングと生産を行っている各地で、日産ブランドと市場占有率を強化しています。これはビジネス上のメリットがあると同時に、地域社会と地域経済に寄与する社会的責任を果たすことにもつながります。

成長が大いに期待できる新興市場に参入することも重要です。当社は、新興国で様々な取り組みを進めています。
中国では、2012年に年間100万台以上の生産能力を確保し、その後も更に市場の成長に合わせて拡張していきます。また、市場占有率を現在の6%から10%に出来るだけ早い時期に伸ばしていきたいと考えています。
インドのチェンナイでは、アライアンス工場を操業開始しました。現在は20万台の生産能力ですが、本格稼働時にはその二倍に拡大し、インドの国内市場で販売するとともに、欧州、アフリカ、中東等、100ヵ国以上に輸出も行う予定です。先ほど触れましたバジャージ社との共同プロジェクトに加えて、アショック・レイランド社とも提携し、小型商用車の生産準備を進めています。
ブラジルでは、商品ラインアップの拡充と販売網の拡大を通じて、中期的には5%の市場占有率を目指し、ルノー・日産アライアンス全体で、10%以上の市場占有率達成に寄与します。
ロシアでは、2011年初頭に、サンクトペテルブルグ工場でエクストレイルとティアナに続き、ムラーノの生産が立ち上がります。ルノー・日産アライアンスは、現地のパートナーのアフトヴァズ社と共に、生産能力とプラットフォームを共有し、商品戦略を実行に移して、2015年までに3社合わせた市場占有率を40%に伸ばしていくことを目指しています。

新興市場と、そのお客さまは、世界の自動車市場で益々重みを増しています。

CSR(企業の社会的責任)
グローバルメーカーである日産は、世界中の人々の生活を豊かにすることを目指しています。持続可能なモビリティ社会の実現に加えて、様々な教育活動、環境の取り組み、人道支援もこのビジョンの一環です。具体例をご紹介しましょう。
これまで、15,000人の日本の子供たちに、日産デザインわくわくスタジオ、日産わくわくエコ・スクール、そしてモノづくりキャラバンを通じて、環境問題やモノづくりの科学の楽しさを伝える活動を行ってきました。
発足から26年目を迎えるニッサン童話と絵本のグランプリは、日本全国の図書館に何万冊もの本を寄贈しています。
住居に困っている方々のために、安価な住宅を提供するお手伝いをする、ハビタット・フォー・ヒューマニティの取り組みには、従業員がボランティアとして参加していますが、これまでの北米での活動に加え、オーストラリアとインドにも拡大しています。
米国の洪水や、チリ、インドネシア、ハイチの地震等の被災地に対しても支援を行っています。当社はハイチ大地震の復興支援のため、トラック30台を寄贈すると同時に、従業員から寄せられた寄付と同額を、会社から上乗せして寄付するマッチングギフトを贈り、ウィリアム・J・クリントン財団と国連世界食糧計画に協力しました。

以上が、当社のCSR活動と、21万人にのぼる世界中の日産従業員がよりよい世界を目指して取り組んでいる活動の一部です。詳しくは、本日よりホームページに掲載される最新のサステナビリティ・レポートをご覧ください。

グローバル日産社長賞
昨年の株主総会では、前年度会社の業績に目覚しい貢献を果たしてくれた従業員の何人かをご紹介しました。今年も、グローバル日産社長賞受賞者をご紹介したいと思います。今年表彰されたプロジェクトは2件で、合計43名が対象となりました。

一件目は、エコカー減税対象の日産エコシリーズの超短期開発と販売増の実現です。では受賞者を代表して、兵頭英樹(ひょうどうひでき)から本取り組みについてご説明させていただきます。

二件目は、2009年度リカバリー・プランの遂行に貢献したモノづくり活動です。受賞者を代表して、酒井寿治(さかいとしはる)より活動をご紹介します。

まとめ
日産の力は、やる気溢れる従業員一人ひとりの意欲に支えられています。従業員こそが、日産ブランドの力の源です。

改めまして、株主の皆様のご協力に感謝申し上げます。自動車史上、最も深刻な危機を乗り越えられましたのは、ひとえに株主の皆様のご理解の賜物です。2010年度は通期で、一株当り10円の復配を実施する予定です。私をはじめ、経営会議であるエグゼクティブ・コミッティのメンバーは、皆様のご期待に応える、日産に相応しい将来像の実現に向かって、全力を尽くす所存です。日産は、持続可能なモビリティの推進役を担う、力強いグローバル企業を目指しております。今後とも日産をどうぞよろしくお願いいたします。


以 上