スピーチ


2010年11月4日

2010年度上期決算報告

日産自動車株式会社
取締役兼COO 志賀 俊之

はじめに
本日は2010年度上期の実績と2010年度通期業績見通しを上方修正致しますので、その内容についてご説明いたします。

2010年度上期の業績は当初の予想を上回ることができました。日産は集中的にリカバリープランの実行に取り組み、利益ある成長の好機を素早く捉えることができました。これらの活動と、全ての地域における販売増で、当社の業績は順調に推移しています。

2010年度上期の売上高は4兆3,000億円となり、連結営業利益は3,349億円、売上高営業利益率は7.8%に達し、当期純利益は2,084億円となりました。自動車事業のフリー・キャッシュフローは2,157億円、その結果、自動車事業における手元資金は負債額を上回り、自動車事業実質有利子負債は693億円のキャッシュ・ポジションとなりました。

2010年度下期は、想定を大幅に上回る円高、原材料価格の上昇、そしてグローバル経済回復の足取りが不透明なこと等、コントロール不可能な逆風が強くなることを想定しています。しかしながら、リカバリープランの実行は力強い業績回復につながっており、その結果2010年度通期の見通しを上方修正いたします。

2010年度上期事業報告
2010年度上期の業績をご説明するにあたり、まずは最近の事業活動についてご報告いたします。
日産は持続可能なモビリティ社会の推進を目指し、様々な取り組みを進めています。その代表的なものが、PURE DRIVEとゼロ・エミッションです。
PURE DRIVEの車は、次世代環境技術を搭載し、クラス・トップレベルの燃費を実現します。2010年度上期、アイドリングストップ機能を搭載した新型マーチは、その第一弾です。第二弾はオートマチック車のエクストレイル クリーン・ディーゼルで、このクルマは世界で最も厳しい排出基準をクリアしています。
更に、電気自動車、日産リーフの発売に向け、準備は順調に進んでいます。

これまで、電気自動車の普及に向けて、各国政府や自治体と80を超えるパートナーシップを結びました。欧州と米国では、電気自動車用のバッテリー工場の建設が始まっています。また、日本国内の全販売拠点に普通充電器を2基ずつ、計4,400基設置し、その内約200店舗に当社が開発した急速充電器を導入します。今年の12月には日本と米国で、日産リーフの販売がいよいよスタートします。すでに数多くのご注文をいただいており、当社のゼロ・エミッション戦略は予定通り進んでいます。

また今年度は、日産リーフを含め、グローバルで10車種の新型車を発売します。
その内、上期には、

  • 日本と欧州ではコンパクトスポーツクロスオーバーのジューク
  • 日本、インド、そして中国では小型車のマーチ/マイクラ
  • 国内では、高級ミニバンのエルグランド
  • そして、米国、欧州、及び中東では高級フルサイズSUVのインフィニティQXを投入しました。

今年度上期のもう一つの重要なイベントは、ルノー・日産アライアンスとダイムラーとの幅広い、戦略的協力関係の締結です。現在、新車開発やパワートレインの共用など、シナジー効果が期待できる複数のプロジェクトが進行中です。

2010年度上期販売状況
では2010年度上期のグローバルな販売実績をご報告します。今年度上期のグローバル全体需要は、急成長する中国をはじめ大部分の市場が拡大し、前年から14.5%伸びました。欧州が成熟市場で唯一減少しました。

2010年度上期の当社のグローバル販売台数は前年比23.8%増の200万9,000台となり、全ての地域で販売を伸ばしました。

日本国内の全体需要は前年比16.8%増の250万台でした。当社の販売台数は前年比15.3%増の32万8000台となり、市場シェアは前年から0.2ポイント減少しましたが、ジューク、マーチ、エルグランドの新型車3車種は好調な滑り出しとなりました。

北米では、米国、カナダ、そしてメキシコの全地域で販売を伸ばしました。2010年度上期の米国の全体需要は前年比8.3%増の610万台に対し、当社の販売台数は前年から9.8%アップし、市場シェアは7.3%に上昇しました。メキシコにおける当社の販売台数は前年から28.6%増大し、市場シェアは前年比2.9ポイント増の23%に達しました。

欧州の全体需要はドイツなど主要国で低迷し、前年から3.5%減の890万台となりましたが、当社は、堅調に販売を伸ばし、前年比12.6%増の27万7,000台に回復しました。市場シェアは前年比0.4ポイントアップの3.1%でした。ロシアにおいて、当社は販売を盛り返し、前年比38.9%増の42,600台となりました。

中国の全体需要は前年から45.6%拡大し、当社の1月から6月までの販売台数は、前年比51.4%増の50万3,000台に達しました。シルフィ、キャシュカイ、そしてティアナの健闘が販売増に大きく貢献しました。当社の市場シェアは前年から0.2ポイント上昇し、6.1%となりました。

アジア、アフリカ、南米、中東など、その他市場では、当社の販売台数は前年比32.9%増の32万1,000台となりました。タイでは、政府が認定する最初のエコカーとなったマーチが好調な売れ行きを示しました。

2010年度上期財務実績
2010年度上期もリカバリープランの3本柱である、売上高の増大、コストの徹底管理、キャッシュフローの創出が、財務実績を支えています。

連結売上高は前年比27.7%増の4兆3,191億円となりました。販売台数増が大きく貢献しましたが、為替変動による減収効果により、若干相殺されました。

連結営業利益は3,349億円となり、売上高営業利益率は7.8%となりました。

当期純利益は2,084億円、売上高当期純利益率は4.8%です。

2009年度上期に対する営業利益の増減要因をご説明いたします。

  • 552億円の為替変動による減益はほぼ全ての通貨に対して円が上昇したことによるものですが、その内524億円は円ドルレートに起因しています。
  • 購買コスト削減は、エネルギー費と原材料価格の上昇による274億円の減益を相殺した上で、534億円の増益要因となりました。
  • 台数・車種構成はグローバル販売台数の増加により、2,993億円の増益要因となりました。
  • 販売費の増加は、932億円の減益要因となりましたが、これは台数増と、宣伝費等の販売固定費の圧縮を一部解除した結果です。
  • 北米におけるリース期間終了車両の売却益は前年を下回ったため、135億円の減益要因となりました。
  • 研究開発費は179億円増加しました。
  • 販売金融事業は148億円の増益要因となりました。これは、資金調達コストが改善するとともに、貸し倒れ引当金が前年に比べ、減少したためです。
  • 残る523億円は、主として関係会社の利益改善と、固定費の削減によるものです。

自動車事業実質有利子負債は2010年度上期に693億円のキャッシュ・ポジションとなり、前年から飛躍的に改善しました。年度当初の為替水準に置き換えれば、キャッシュ・ポジションは1,563億円となります。

2008年度に発生したグローバル金融危機以降、日産は在庫管理を徹底してきました。当社のグローバル在庫台数は、第1四半期末に比べると販売増に伴い増加しているものの、ピーク時である2008年11月の72万台からは大幅に減少し、57万台となっています。一方、在庫日数も絞っており、今後も販売、在庫、生産台数のバランスを慎重に管理していきます。

2010年度通期見通し
2010年度上期の実績は、日産が効率的な事業運営に成功している証です。私どもは、利益を確保しつつ、拡販に取り組む一方で、原価低減と効率化の手も緩めていません。
下期は、大幅な円高を想定したことと、原材料価格の上昇という外的要因に加え、開発費と、新型モデルが上期の2倍投入されることに伴うコスト増などから上期ほどの業績は望めません。

グローバル自動車市場は安定し、成長の兆しを見せています。今年度通期のグローバル全体需要は、前年比8.6%増の過去最高となる7,000万台を想定しています。2010年度通期の当社のグローバル販売台数は前年比16.7%増の410万台、市場シェアは前年の5.5%から5.8 %に上がることを見込んでいます。

また、今年度通期の当社グローバル生産台数は405万台を計画しています。
売上の増大、合理化の継続、そして下期のリスクを鑑み、次の通り東京証券取引所に通期業績予想の修正を届け出ました。下期の為替は1米ドル80円、1ユーロ110円を前提としています。

  • 連結売上高は8兆7,700億円
  • 連結営業利益は4,850億円
  • 連結当期純利益は2,700億円
  • 設備投資は3,400億円
  • 研究開発費は4,250億円

2009年度に対する営業利益の増減要因の前提は次の通りです。

  • 円高に起因する為替変動による減益は1,850億円を見込んでいます。
  • 販売増、台数・車種構成は4,750億円の増益を想定しています。
  • 原材料価格は1,000億円の減益要因となる一方、購買コスト削減は1,850億円の増益を想定しています。
  • 台数増に伴う販売・マーケティング費用は1,800億円の増加を見込んでいます。
  • 北米におけるリース期間終了車両の売却益の減少による減益は200億円を見込んでいます。
  • 研究開発費は400億円の増加を見込んでいます。
  • その他は、関係会社の利益改善等、384億円の増益を見込んでいます。

5月に発表しましたように、11月には一株あたり5円の中間配当を実施する予定です。

円高が利益を圧迫しているものの、私どもはグローバル事業全体の観点から、為替変動の影響を捉えています。当社の利益構造は益々多様化しており、事業を行っているあらゆる地域で利益を確保しています。各地域の販売車種は、さまざまな国から供給されており、急激な為替変動のリスクを軽減しています。

今後も日産はグローバル事業への円高によるマイナス影響を最小限に抑えるため、バランスの取れたアプローチを取ってまいります。生産の最適化やコスト効率の向上によって円建てコストを低減するとともに、日本国内において、2013年度までに市場占有率を15%とすることを目指し、円建ての売上高の増大を図ります。このような活動により、国内生産100万台を確保するモノづくりの強化にも懸命に取り組んでいきます。

2010年度下期はグローバルで新型車を7車種投入する予定です。

  • 日産リーフの販売は日米欧でいよいよ始まります。
  • さらに、国内にはミニバンの新型セレナと新型軽自動車
  • 北米にはミニバンのクエスト、コンバーチブルクロスオーバー、小型商用車のNVシリーズ
  • そして、その他複数の市場に手頃な価格のセダンを投入します。

また、おととい、日産オリジナルのハイブリッド・システムを搭載するラグジュアリ・セダンのフーガ ハイブリッドを国内で発売しました。フーガ ハイブリッドは今年国内に投入するPURE DRIVEの第三弾で、リッター当り19キロという小型車並みの優れた燃費を実現するとともに、ラグジュアリー・カーならではの質感と爽快な走りをご提供します。

新型車と新技術は今後も会社の成長を支えます。日産リーフの反響については、発売後に詳しくご報告できると思います。

まとめ
日産は今後の課題を克服し、グローバル経営環境の逆風に対して、冷静に対処する術を心得ています。確かなバランス・シートに支えられ、投資活動を続けていきます。ゼロ・エミッション車、グローバル・コンパクトカー、新興国、そして日産の将来に確かな手ごたえを感じています。日産は、適切な商品、適切な技術、そして適切な取り組みで、成長を続ける態勢が整っています。

以 上