2009年7月29日

 

2009年度第1四半期決算報告

日産自動車株式会社
取締役兼COO 志賀 俊之



はじめに
皆さん、こんにちは。COOの志賀でございます。本日はお忙しい中、当社の2009年度第1四半期決算発表にお越しいただきましてありがとうございます。

本日は2009年度第1四半期の実績と、リカバリー・プランの進捗状況をご説明したあと、2009年度通期の見通しについてお話しさせていただきます。

世界経済は依然として厳しい状況が続いており、見通しが不透明な中、グローバル自動車産業は現在の市場環境への対応に継続して取り組んでおります。

このような厳しい環境下で、日産は当初の予定通り、計画的にリカバリー・プランを進めています。5月に発表しましたように、2009年度は財務上、厳しい一年を想定しています。第1四半期の主な財務上のKPIをご説明しましょう。売上高は前年比35%減の1兆5,000億円に落ち込んでいます。通期の営業損失は1,000億円を見込んでおりますが、第1四半期では、我々の想定を上回る116億円の営業利益が得られました。これは主として、全社的な原価低減活動の効果と、予想より円安にふれた各国通貨の影響によるものです。第1四半期のフリーキャッシュフローは195億円のマイナスですが、継続的な運転資本の徹底した管理と堅実な投資管理により、過去数年に比べて大きく改善しました。年度末にはフリー・キャッシュフローをプラスにする計画は順調に進んでいます。


2009年度第1四半期販売状況
では2009年度のグローバルな販売実績をご報告いたします。
2009年度第1四半期のグローバル全体需要は前年から16.3%減少しました。中国以外の主要な市場は10%以上落ち込んでいます。当社の販売台数は前年比22.8%減となりました。

第1四半期にはグローバルで新型車を3車種発売しました。欧州では、低燃費で、CO2の排出量を低減したコンパクトカー、PIXOを投入しました。国内では、新世代の小型商用車、NV200バネットを発売しました。北米では、G37コンバーチブルがインフィニティGのラインアップに加わり、カー・アンド・ドライバー誌の2009年テン・ベスト・カーに選ばれました。

では地域別の販売実績をご紹介いたします。

日本国内の全体需要は前年比18.5%減となり、95万8,000台となりました。当社の販売台数は前年同期比21.6%減の11万6,000台に留まりました。日産エコ・シリーズと称した豊富な車種ラインアップをもつエコカー減税対象車は健闘したものの、当社の市場占有率は微減の12.1%となりました。

米国の販売台数は前年比31.5%減の17万3,000台となりました。全体需要は前年比32.1%減となり、この結果、当社の市場占有率は前年並みの6.6%でした。第1四半期にはインフィニティG37コンバーチブルとキューブの2車種を発売しております。

欧州における販売台数は前年比24.6%減の11万8,000台となりました。欧州における当社の市場占有率は0.2ポイント減少しました。ロシアにおける市場占有率は58.6%の販売台数減に伴い、0.3ポイント悪化しました。ロシアを除くと、欧州の市場占有率は前年並みの2.2%となります。新型PIXOとキャシュカイの販売は引き続き好調です。また、スクラップ・インセンティブの導入で、西ヨーロッパ市場の需要は戻りつつあります。ロシアのサンクトペテルブルグで、新しい車両組立工場を6月に操業開始しました。

中国の1月から3月までの販売台数は前年比9.3%増の14万5,000台に達しました。1.6リッター以下のクルマを対象とする減税措置で、ティーダ、リヴィナ、そしてシルフィの販売が伸びています。さらに、第2四半期にあたる4月から6月の販売は28.4%増加しました。当社は広州の花都工場の生産能力を新たに24万台増やし、60万台に拡張。2012年に操業開始する予定です。

アジア、アフリカ、南米、中東を含むその他市場の当社の販売台数は29.8%減の11万9,000台に留まりました。中東における当社の販売台数は前年比34.8%減の4万2,400台に落ち込みました。南米では、リヴィナ・シリーズのフレックス燃料対応車を拡充しました。


2009年度第1四半期財務実績
次に2009年度第1四半期の財務実績についてご説明します。

売上高は前年比35.5%減の1兆5,148億円となりました。台数減で27%、為替レートで8%、それぞれ減収に影響しました。

営業利益は116億円のプラスとなりました。
当期純損失は165億円です。
それでは営業利益の増減要因をご説明いたします。

  • 627億円にのぼる為替変動による減益は、ほぼ全ての通貨に対して円高が進んだことによるものです。通貨別には、米ドル、カナダドル、豪州ドル、そしてロシアルーブルが大きく影響しています。
  • 購買コストの削減は、前年に比べて299億円の改善となりました。原材料価格・エネルギー費の上昇による減益が僅かにあったものの、購買コスト削減の効果で相殺されました。
  • 台数・車種構成はグローバル販売台数が減少した結果、1,518億円の減益要因となりました。
  • 販売・マーケティング費は宣伝費等の固定費削減で、347億円の増益要因となりました。
  • 2008年度第1四半期には、北米のリース車両残存価値リスクに対する引当金は420億円にのぼりました。これに対し今期は当社のリース車両の中古車価格が安定していたため、引当金の積み増しはしませんでした。その結果、リース車両残存価値リスクに対する引当金は450億円の増益要因となりました。
  • 研究開発費は142億円減少しました。2009年度通期では2008年度に対し555億円削減する計画となっており、第1四半期はその計画通りに推移したものです。
  • 残る差異は224億円の増益要因ですが、これは製造費用や一般管理費を含む様々な固定費削減活動によるものです。


2009年度リカバリー・プランの進捗状況
当社のリカバリー・プランは、予算項目に限った取り組みではありません。常に状況に合わせて取り組みを変更しております。当社は、世界経済の動向と市況を見極め、状況に応じて事業計画や方向性を随時修正しています。

リカバリー・プランの進捗は毎月確認しています。ご覧のように、重要な指標を定期的にモニターしています。これまでのところ、リカバリー・プランは予定通り進んでいます。

第1四半期末現在のグローバル在庫は、生産台数が2008年度第4四半期と比較して19%増加しているにも関わらず、引き続き低水準の44万台に留まっています。

また、2009年度は売上高の減少に合わせてコストを抑制しています。今年度は労務費を含む固定費をグローバルで2,000億円以上削減する計画です。時間外労働と出張費はいずれも75%削減していきます。さらに、経費の予算配分の徹底管理、最小限の資源で最大限の効果を狙う投資活動、販売・マーケティング固定費の20%削減を進めています。先ほど申し上げましたように、これらの活動の成果が短期間で収支に現れています。


2009年度の見通し
これまでのところ、リカバリー・プランは功を奏していますが、通期の事業環境は引き続き不透明であり、当社は依然として、危機対応に迫られています。

2009年度のリスクは為替レート、原材料価格の反発、サプライヤーの経営悪化、そして特に政府によるインセンティブ打ち切り以降に予想される全体需要の更なる悪化です。一方、好機は中国市場とルノー・日産アライアンスのシナジーです。最も確率の高い為替リスクを含め、あらゆるリスクを総合すると、現時点で2009年度通期予測を変更するのは時期尚早と考えます。年度末にフリー・キャッシュフローをプラスにするという目標は順調に進んでいます。


まとめ
当社は、当座の優先課題に取り組むと同時に、会社の将来にとって重要な案件にも引き続き力を入れています。

現在予定通り進んでいるグローバルエントリーカー戦略の展開もその一例です。既に発表しておりますように、グローバルエントリーカー・ラインアップの第一号、マーチ/マイクラの後継車は、今年度末にタイで生産を開始します。インドのチェンナイ新工場の建設も順調に進んでおり、操業開始は2010年5月の予定です。また、中国でもグローバルエントリーカーの生産立ち上げを2010年の半ばに予定しています。

もう一つの優先事項は電気自動車や燃料電池車を含むゼロ・エミッション車でリーダーになることを目指した戦略です。以下に挙げるように、2010年秋の電気自動車の生産開始に向けた取り組みは加速しています。

  • 合弁会社であるオートモーティブエナジーサプライ株式会社の座間事業所でリチウムイオンバッテリーの試作が始まりました。
  • 米国では、スマーナ工場での15万台の電気自動車生産能力と、20万基のバッテリー生産能力の確保を目的とした融資に関し、政府の許可がおりました。生産開始予定は2012年です。
  • 欧州では、4億ユーロ以上を投資してイギリスとポルトガルにバッテリー工場を新設します。
  • 中国では、政府の工業情報化部と電気自動車の普及に向けたパートナーシップに合意しました。ルノー・日産アライアンスはこれまで、27にのぼるパートナーシップを各国政府・機関と結んでいます。

私どもは電気自動車の量販に向けて確かな土台づくりを着実に進めています。4日後のグローバル本社の竣工式に合わせて電気自動車第一号をお披露目します。

電気自動車が自動車産業の歴史に新たな1ページを刻むと同時に、新本社完成は日産の新しい時代の幕開けとなります。横浜のグローバル本社は、日産の価値創造センターとして受け継がれていくことになるでしょう。グローバル本社を中心に、ゼロ・エミッション車やグローバルエントリーカー等、様々な画期的なクルマづくりを目指し、革新性とスキルに更に磨きをかけていきます。日産は今後も、成熟市場・新興市場におけるプレゼンスの強化を図り、お客さまとあらゆるステークホルダーの皆さまに、より大きな価値を提供して参ります。

近々、横浜で皆さんをお迎えできることを楽しみにしております。今後も日産にご期待ください。

以 上