2008年度第3四半期決算及び業績改善策報告
<志賀 俊之> 昨年9月に加速度的に広がったグローバルな金融危機と景気低迷は依然として続いており、当社の第3四半期決算にもマイナス影響が出ています。当社は必要な措置を講じ、金融市場とグローバル市場の悪化に対応しています。 まず複数の指標を元に、今回の危機の自動車業界への影響についてご説明しましょう。2008年度当初、通期のグローバルな全体需要は6,900万台を見込んでいましたが、現時点では10%減の6,200万台に修正しました。第3四半期には、成熟市場は深刻な景気後退を受け、全体需要は米国で35%減、国内は14%減、欧州は20%減とそれぞれ落ち込み、新興市場も縮小しています。 もう一つ深刻な課題は主要通貨に対する円高基調です。円高が当社の利益を圧迫しています。2007年12月に1米ドル当り114円で推移していた為替が2008年12月には20%円高の91円に達しました。ロシアルーブル等、他の通貨に対しては更に円高が進んでいます。例えば12月末にはルーブルに対して27%円高となりました。 今回の金融危機の速度と深刻度は予想を遥かに超えています。需要の減速は9月に始まり、第3四半期には消費者心理の冷え込みと信用収縮で需要は急速に縮小しました。
販売実績 当社のグローバル販売台数は4月からの累計で263万台となり、前年から3%減少しています。2008年度第3四半期のグローバル販売台数は前年比19%減の73万1,000台に留まりました。 地域別の内訳を申し上げましょう。国内の全体需要はこの9ヶ月間で6.4%減少し、12月は1968年以来の最低水準まで落ち込みました。当社の販売台数は前年比9%減の43万6,000台となりました。市場占有率は0.3ポイント減の12.6%です。第3四半期にはキックス、キューブ、フェアレディZの新型車3車種を発売しました。市場の低迷を受け、生産実績は10月から12月の間に対前年比で29%以上減少しました。 米国は全体需要が21%落ち込み、当社の市場占有率は0.7ポイント増の7.1%に達しました。また、カナダとメキシコでもそれぞれ市場シェアを拡大しました。米国における当社の販売台数は累計で13.6%減の68万2,000台となりました。ヴァーサやローグ等、低燃費のクルマが引き続き好調な販売を継続しています。国内と同様に、需要低迷を受け、米国とメキシコを合わせた生産実績は10月から12月の間に対前年比で37%減少しました。 欧州の全体需要は8%減少しました。特に大きく落ち込んだのは34%減のスペイン市場と16%減のイギリス市場です。日産の欧州における販売台数は前年比7.7%減の41万7,000台に留まり、市場占有率は前年並みとなりました。10月には西ヨーロッパにインフィニティブランドを展開しました。一方、ロシアにおける販売台数は累計で13%増加しています。10月から12月の3ヶ月間に、欧州の生産は45%減少しました。 一般海外市場の販売台数は前年比13%増の87万7,000台に達しました。中東における販売台数は31%近く伸び、18万5,000台にのぼりました。中国では新型ティアナの健闘で販売台数は19%増加しました。中東と中国の販売増が、台湾、タイ、南アフリカの落ち込みを補いました。
財務実績 9ヶ月間の連結売上高は累計で前年比14.7%減の6兆7,000億円となりました。それぞれ台数・車種構成が6%、為替レートが8%の減収要因となりました。 連結営業利益は925億円となり、前年から84%減少しました。主に、円高、主要市場の低迷、原材料価格の高騰等による経営環境の悪化が収益を圧迫しています。 売上高営業利益率は1.4%に留まりました。 当期利益は432億円となり、前年から87.5%減少しました。 第3四半期累計の営業利益の増減要因をご説明しましょう。 では2008年度通期予想についてご説明します。 2008年度通期予想の前提となるグローバルな販売台数は対前年比で10%減の338万台、生産台数は16%減の307万台となります。 連結売上高は8兆3,000億円。 2008年度上期決算で発表した修正値を下回る今回の営業利益の予想は、主として三つの要素に起因しています。 一つ目は為替レートです。為替による悪化は609億円となります。 今後の見通しの詳細と取るべき対策については、引き続き社長のゴーンよりご説明いたします。
<カルロス ゴーン> 今年度、当社がこれまで実施してきた取り組みと、今後、回復に向けて講じていく対策についてご説明したいと思います。目的は2009年度にフリー・キャッシュ・フローをプラスにすることです。尚、2009年度はグローバル全体需要5,500万台、1米ドル当り90円を想定しています。 まず当社の業績改善に集中するために、中期計画の日産GT 2012を一時中断することとしました。品質と電気自動車に関わるコミットメントは重要な事業目標として維持します。 それ以外の活動は次の三つのテーマを中心に行います。一つ目は利益の改善、二つ目はキャッシュの確保、三つ目はアライアンス・パートナーであるルノーとの更なるシナジー効果の徹底です。
利益改善 労務費は減収に応じて削減します。日本、米国、欧州等、高コストな国々における労務費を2008年度の8,750億円から2009年度には20%下げ、7,000億円に抑える予定です。 例えば、今年の3月から明らかに状況が改善したと分かるまで、取締役と執行役員の報酬を10%引き下げます。また、今年3月から日産自動車と国内の関係会社の全管理職の基本年俸を5%引き下げます。 また、2008年度、取締役への賞与は支払いません。 国内の従業員の総労働時間は大幅に短縮しています。2008年度当初に比べ、時間外労働は30%短くなり、2009年度には更に75%短縮する見込みです。 国内工場の稼働日数は2月から3月にかけて50%減少し、月当たり約20日から10日に抑えます。米国の工場は週4日稼働となっています。それ以外の地域でも需要に応じて生産調整を行っています。 事態収拾の目処がつくまで、従業員を対象にワーク・シェアリングの導入を協議する予定です。状況が更に悪化した場合は選択の余地はなくこれを実行することになるでしょう。本件に関する発表は今年度中に行う予定です。 全世界に影響を及ぼす今回の危機を受けて、販売と生産台数減に応じてグローバル従業員数を見直す必要があります。2008年3月、日産グループのグローバル従業員数は24万人でした。現在は23万5,000人です。2009年度末、すなわち2010年3月末には2万人削減し、21万5,000人以下とする見込みです。今後も状況の深刻度に応じて必要な追加対策を実施していきます。 全社的に、高コスト諸国における新規採用を最小限に抑え、出張費も75%削減します。 2009年度も円高が続いた場合は会社を守るために、グローバルなオペレーションの見直しを迫られる可能性もあります。
キャッシュの確保 そのために、事業の適正化を進めています。生産台数を調整するべく勤務シフトを減らし、休業日の設定や稼働時間の短縮を世界中の車両・パワートレイン工場で行っています。その結果、2008年度のグローバル生産台数は当初予定していた水準から21%減の78万7,000台減産となる見通しです。 収益が減少する中、事業運営のためのキャッシュ確保を目的に、設備投資も削減しています。当社の年間設備投資額は2007年度の4,890億円から2008年度には3,840億円に下がり、21%の節減となります。2009年度には更に14%減の3,300億円以下に抑え、必要に応じて追加策を実行します。 一部の設備投資は経済危機終息の目処がつくまで、延期、縮小、あるいは取りやめることとしました。 インドのチェンナイでは乗用車工場を、当初予定の2ラインではなく、1ラインのみで生産開始し、短・中期的な需給バランスをとります。しかしながら、生産第一号となる次世代マーチ/マイクラの生産開始は当初の予定通り2010年です。 運転資本を買掛金と売掛金を中心に改善することで、2009年度には1,300億円以上のキャッシュ・フローを生み出します。 特定のノン・コア資産および事業の売却も進めます。
ルノーとのシナジー効果創出の徹底
今後の好機 適切な商品を適切な場所に適切なタイミングで投入する戦略の一環となるのは、当社が開発を進める二つの重要な車両プロジェクトであるグローバル・エントリー・カーと電気自動車です。 手頃な価格で低燃費のクルマは、この世界同時不況では、適切な商品となります。私どもは迅速に生産計画を進めています。2005年以来、日産は三種類以上の車型に対応するエントリー・カー専用のプラットフォーム開発に注力してきました。このプラットフォームは競争力のある国々(LCC)五カ国で生産予定で、まずタイ、インドそして中国で2010年初旬に立ち上げます。本格稼働時には、150カ国以上で100万台を超えるエントリー・カーを販売することになります。 先ほど申し上げましたように、日産は引き続きゼロ・エミッション車でリーダーになるというコミットメントを目指しています。既に座間では5万台分のバッテリー生産能力に対する投資を決め、これまでに世界各国の政府や企業と11件のゼロ・エミッション車の供給契約を結びました。技術開発は多額のキャッシュを要するため、重要な環境技術を対象とした助成を各国政府に呼びかけています。更に、米国、日本、欧州、中国で、車両とバッテリー工場を対象とする政府からの助成を得るための交渉を進めています。日産の電気自動車生産開始は2010年の後半を予定しており、グローバルな量販は2012年度に開始します。 今後も数多くの技術を投入し、環境、安全、ダイナミックな走り、快適性でお客さま満足度向上を図ります。2008年度には11にのぼる重要な技術を商品化しました。2009年度には17、2010年度には15の新技術を発表する予定です。 最後に、厳しい経営環境に対応するべく、組織体制を変更します。 本日以降、全ての役員は日産の最高執行責任者である志賀俊之にレポートします。志賀は同時に渉外、生産、研究・開発、購買、商品企画、デザイン、販売・マーケティングを統括します。 更に、当社は現在の4地域の構成から、新たに3地域を構成する体制に変更し、志賀がこれを統括します。 3地域の一つであるアフリカ、中東、インド、そして欧州は常務執行役員のコリン・ドッジが統括します。 日本、中国、アジア太平洋市場から成る地域は副社長の西川廣人が統括します。西川は現在の購買に加えて関係会社管理を兼任します。 三つ目の地域である北米・中南米は副社長のカルロス・タバレスが統括します。 常務執行役員のコリン・ドッジは新たにチーフ・リカバリー・オフィサーに就任します。ドッジは先ほどご説明した様々な活動を含む、危機に対応するための対策の立案・実行を指揮します。加えて、ドッジは経営企画とコントロールを担当します。 執行役員のアンディ・パーマーは常務執行役員に昇格し、商品企画、インフィニティ事業部、小型商用車事業部、そして新設の電気自動車事業部を統括します。 パーマーは先ほど名前の挙がった役員と、アラン・ダサス、遠藤淳一、今津英敏、山下光彦と共に日産のエグゼクティブ・コミッティに加わります。
まとめ 日産の掲げる今後の方向性は明確であり、状況が落ち着いたあとの長期的な将来を見据えています。私どもは持続可能性を目指しています。ご静聴ありがとうございました。 以上
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