ご参考
2006年度決算報告 はじめに 年度当初、私は2006年度が日産にとって厳しい年になると申し上げましたが、残念ながら予想通りの結果となりました。 想定していた逆風は全て現実のものとなり、環境は厳しくなりました。成熟市場の全体需要は伸び悩み、インセンティブは高いレベルで推移し、自動車メーカーは原材料費の増加を価格に反映することができませんでした。 当社は、厳しいビジネス環境に晒される中、新車投入が極めて少なく、同時に将来に向けた多額の投資も行ってきました。 2006年度上期はけわしい道のりになると想定していましたが、新車攻勢の始まる下期からは販売・利益の両面で回復すると見込んでいました。 しかしながら、通期の業績は予測を下回りました。当社の取り組みは、設定した課題に対して不十分でした。この8年間で初めて、当社の業績は当初の目標を割る結果となりました。 2006年度通期の実績は次の通りです。
本日はまず、グローバル販売台数と財務実績についてご説明した後、日産バリューアップの進捗状況をご報告いたします。最後に、2007年度の業績見通しと、長期的な展望についてお話しして、ご質問にお答えしたいと思います。 2006年度販売状況
これらはいずれも好調なスタートを切ったものの、年度の後半に投入されたため、グローバルな台数増には至りませんでした。 国内の全体需要は前年から4.1%落ち込みました。軽自動車は4.2%伸びる一方、登録車は8.3%減少しました。当社の国内販売台数は前年比12.1%減の74万台となり、市場占有率は1.2ポイント減の13.2%に留まりました。 米国の全体需要は前年比3.4%減となり、当社の販売台数は前年比4.0%減の103万5,000台となりました。通期の市場占有率は前年とほぼ同水準の6.3%でした。 会計年度が暦年ベースの欧州では、全体需要が横ばいの中、当社の販売台数も前年とほぼ同水準の54万台となりました。 メキシコとカナダを含む一般海外市場の販売は前年比5.1%増の116万8,000台となりました。中国が健闘し、販売台数は22.2%増の36万3,000台に達しました。 2006年度財務実績 最初に自動車業界標準に合わせた連結会計期間の変更についてです。既に発表しましたように、透明性と一貫性を確保するため、従来、暦年ベースを採用していた海外子会社である欧州やメキシコ等を、日産自動車の会計期間である3月末決算に統一します。 規制上変更できない中国と台湾を除く、全ての海外子会社の会計期間を統一しております。従って、2006度は暦年ベースを採用していた会社の第5四半期の実績を織り込みました。これによる、2006年度の営業利益増加分は214億円となります。 その結果、連結売上高の10兆4,686億円には、7,676億円の第5四半期実績分が含まれることとなります。
今年の定時株主総会では、一株あたり17円の期末配当金をご提案する予定ですが、これにより、2006年度通期の配当金は34円となります。また、2007年度通期の配当金は、株主の方々にお約束しました一株あたり40円で変更ありません。 日産バリューアップの進捗状況 2006年度の実績は日産バリューアップの目標達成に貢献しませんでした。しかし、当社には中期計画のコミットメントを実現する潜在力があり、引き続きコミットメント完遂に全力を尽くします。従って、日産バリューアップの全てのコミットメント達成時期を1年延長することとしました。 同時に、次の事業計画の策定も継続し、1年後に発表する予定です。 そのような中でも、この1年間で、日産バリューアップの中心となる、4つのブレークスルーは確実な前進を遂げました。 一つ目のブレークスルーはインフィニティを、世界に名だたるラグジュアリー・ブランドにすることです。 2005年度にはインフィニティを韓国に投入しました。2006年度には急成長を遂げるロシア市場に投入し、滑り出しは順調です。 今後、インフィニティのグローバル展開を加速し、今年は中国とウクライナ、2008年には西ヨーロッパ全体に拡大していきます。 新規市場に対応するべく、新車投入も控えています。G35セダンに続いて、今年はG37クーペとコンパクト・ラグジュアリー・クロスオーバーのEXを発売予定です。 今後、インフィニティは急成長を果たします。 二つ目のブレークスルーは小型商用車、LCVのプレゼンスをグローバルに強化することです。 小型商用車のグローバル販売台数は日産バリューアップ開始以来、57%伸び、2006年度には490,000台に達しました。更に、売上高営業利益率のコミットメントである8%も過達したのです。今や小型商用車は、当社のグローバル事業を支える確かな柱となり、今後は更に勢いを増していくでしょう。 三つ目のブレークスルーは部品、機械、設備、ベンダーツーリング、そしてサービスを、リーディング・コンペティティブ・カントリー(LCC)、すなわち価格競争力のある国々から調達することです。 日本向けの調達先は、中国とアセアン諸国、北米向けはメキシコ、欧州については東欧にそれぞれ確立しています。活動を加速させるべく、次のステップではインドで調達先を確保します。 2006年度、日・米・欧の購入額の15%をLCCが占めましたが、2005年度は12%でした。2007年度はこれを加速し、24%まで拡大する予定です。 更に、原価の低減と従業員をコア業務にシフトする一環として、間接業務と開発、情報システム、生産における様々な業務の外部委託を進めています。2006年度には、この活動は、原価の低減とコスト発生の回避によって、430億円にのぼる節減効果をもたらしました。 四つ目のブレークスルーは新興市場、いわゆるBRICsと今後台頭してくる国々における地理的拡大です。 ブラジル事業には1億5,000万ドルにのぼる投資を行い、2009年までに40,000台の販売台数を達成する見込みです。 ロシアでは、サンクトペテルブルグの工場に2億ドルの投資を行い、2009年の操業開始時には、50,000台の生産能力を確保します。 インドでは、ルノーと共に、マヒンドラ・マヒンドラと提携します。3社共同でチェンナイに新工場を建設し、2009年に操業を開始する予定です。生産能力は将来的に40万台を予定しています。 中国においては、2003年以来、東風との合弁事業に16億ドルを投じ、最近では、エンジン工場と研究開発センターを新設しました。 2007年度の見通し まず、経営体制を変更し、エグゼクティブ・コミッティの人数を7人から9人に増やして、事業上の優先課題への対応を強化しました。 また、収益性向上を目的とした取り組みを多数、行っています。
以上のような対策を既に実施しています。 現在、私どもは業績向上を目指し、事業内容の調整を行っています。短期的な課題に取り組むと同時に長期的な目標も見据えて、従業員のモチベーション向上と参画を注視しています。 2007年度の販売予測は以下の通りです。
2007年度も年間を通じて厳しい環境が続きます。原材料価格の高騰、エネルギー費の増加、金利の上昇、為替レートの変動、そしてインセンティブも高いレベルで推移し、苦境に陥るサプライヤーや自動車メーカーが増えるでしょう。数々の障壁を克服する唯一の手段は、日産バリューアップを徹底的に完遂することです。 以上を鑑み、2007年度の業績予測について、次の通り東京証券取引所に届出を行っております。為替予測は2006年度の期中平均レートである1米ドル117円、1ユーロ148円を前提としています。
何よりも、2007年度、日産は利益ある成長に向けた軌道に戻ります。 今後の展望 革新 当社は現在、将来に向けた多額の投資を、特に研究開発を中心に行っています。 1990年代、当社の財務基盤は疲弊しており、日産のブランド・アイデンティティの中核である、技術優位のイメージを維持することができませんでした。 1999年以降、年間の研究開発費は倍増し、2007年度にはほぼ5,000億円に達します。しかし、費用の拡大は取り組みの一部に過ぎません。当社の研究及び先行開発機能は1999年に対して5倍以上、効率が向上しました。焦点の定まらない単発的な技術革新ではなく、安定した、機能横断的な革新を促す企業文化を確立したのです。 また、アライアンスを通じて、ルノーの研究開発部門と多くの協力関係を築きました。両社は共同で、あらゆる分野で進歩を遂げています。 世界初の技術である四輪アクティブステアの最近投入した新型スカイラインへの搭載に続き、2007年度には8つの日産独自の技術を商品化します。例えば、新たな安全技術である車間維持支援システム、レーン・ディパーチャー・プリベンション、アラウンドビュー・モニター等を世界初の技術として投入します。 さらに2009年度から3年間に、毎年15を越える新技術を商品化する予定です。 しかし、最も切迫した研究開発の課題は、社会が求める環境対応です。その一環として、先行開発の予算の4割を、環境戦略の5ヵ年計画である、ニッサン・グリーン・プログラム2010に充当しています。 自動車業界にとって、環境の持続可能性は最大の技術課題です。様々な意見がありますが、万能な特効薬や応急処置は存在しません。また、ゴールも見えないのです。 従って、日産はルノーと共に、あらゆる環境技術を追求していきます。ハイブリッドから燃料電池、電気自動車、そしてクリーン・ディーゼル等、全ての可能性を模索しています。先週、当社は日系企業で初めて、米国全州でクリーン・ディーゼル搭載の乗用車を2010年に発売すると発表しました。クリーン・ディーゼル車第一号であるマキシマは、日産・ルノーが共同開発したアライアンス・エンジンを採用することになります。 焦点の定まった技術が、再び当社の競争力の柱となり、ブランド・アイデンティティの中核となるでしょう。 ブランド力の向上 現在、ブランドの弱いメーカーは悪いイメージの払拭に苦労しています。一方、評判の高いブランドは、その名声によって大きなプレミアムを享受しています。現時点で、ニッサンとインフィニティのブランドはかなり改善しているものの、いずれもその中間辺りに位置しています。当社は依然として、企業ブランドの魅力よりも、個別車種の商品力によって成功しているのです。 従って、ブランド力向上は極めて重要です。粘り強く、一貫して、お客様とのあらゆる接点に集中すると同時に、並行して二つの分野に取り組まなくてはなりません。 まずは魅力度ですが、これは感性に訴えるものです。内外装のデザイン、ドライビング・プレジャー、顧客対応、ブランド・イメージ等です。 もう一つは競争力ですが、これは合理性の面です。例えば品質、信頼性、価格、入手のし易さ等がこれにあたります。 今のところ、ベンチマークをすると、日産は競争力より魅力度が勝っています。まだやるべきことは残っているものの、デザインの魅力とドライビング・プレジャーについては定評があります。革新的な技術の評判を回復すれば、更に良くなるでしょう。 改善の余地があるのは競争力の面です。重要なのは品質と信頼性ですが、これらはお客様との長期的な関係を支える土台です。 米国では、クルマを購入する多くのお客様は、クルマ選びに、影響力のあるコンシューマー・レポート誌を参考にしています。従って、最近のコンシューマー・レポートで、日産の新型アルティマがトップタイに輝いたことには大きな意味があります。更に、インフィニティG35とMは、信頼性・安全性のカテゴリーで、それぞれ全米自動車ベスト・テンの一位に選ばれました。 時間はかかりますが、以上のような成果の積み重ねが、ブランド力の強化につながるのです。 人財への投資 当社は、会社の将来が、従業員のやる気にかかっていると考えています。今後、日産は今まで以上にグローバルになる中、世界中の人財の力を結集しなくてはなりません。 であるからこそ、日産は多様性を包含する企業文化の醸成に取り組んでいるのです。私どもは、あらゆる国々の最も才能ある、やる気に溢れた人々から見て、日産を、実績だけが、チャンスの扉を開く職場だと評価される会社にしたいと思います。 当社は人に投資しています。就業環境に投資を行い、従業員がより効率的且つ、機能横断的に仕事ができる職場を提供しています。例えば、
新車攻勢 しかし、自動車メーカーが最後に試されるのは、勿論、一貫して、魅力的で競争力のある商品を提供する力です。私どもは、長きに亘って、この重要なテストをクリアする用意があります。 2007年、日産はグローバルで11の新型車を投入します。 1. 一般海外市場では、中国を皮切りに、2列シートのミニバン、リヴィナを発売します。 2. この夏、新型エクストレイルを欧州、日本に続いてグローバルに投入予定です。 3. 米国ではアルティマの派生車、アルティマ クーペを発売します。 4. 国内の小型商用車事業の強化を目指し、新型アトラスのシングル・キャブとダブル・キャブを投入します。 5. メキシコでは、好調なルノー・ロガンの派生車である新しいエントリーレベルのセダンを発売予定です。 6. 米国のインフィニティ・チャンネルでは、第一世代から進化を遂げた新型G37クーペを投入します。これには新型の3.7リッターVQ VVEL(バルブ作動角・リフト量連続可変システム)エンジンを搭載します。 7. それに続いて、新型のコンパクト・クロスオーバー、ローグが米国で発売されます。 8. また、2007年度下期の目玉は東京モーターショーにおける、GT-Rのグローバル発表です。GT-Rは日産のクルマに対する究極のシンボルです。 9. その後、間をおかず、コンパクト・ラグジュアリー・クロスオーバーのインフィニティEXを投入します。 10. さらに、好評を博している新型ムラーノの投入も控えています。 11. 最後に、タイをはじめとする市場で、ピックアップ・トラック、新型フロンティア・ナバラ シングル・キャブを発売します。 日産バリューアップで予定している28車種の新型車の発売後、次の三カ年計画では33を越える新商品を投入予定です。これは平均するとほぼ、ひと月に1車種、新車発売がある計算になります。 まとめ
このアライアンス・モデルは他に例がなく、広く理解されていませんが、その有効性は明らかです。 日産とルノーはプラットフォーム、技術、ベスト・プラクティスを共有しています。毎年、前年を上回る購買のシナジーを生み出しています。また、先日のディーゼルの発表にもあるように、更に協力関係を拡大する余地があります。 2006年度、当社は壁にぶつかりましたが、1999年当時のような瀕死の状態ではありません。存続が危ぶまれているわけではないのです。 しかし、早い段階で、警鐘に気づきました。日産はスヌーズ・ボタンを押して、再び眠りにつくような会社ではありません。私どもは会社を再生に導いた客観性、警戒心と危機感をもってこの状況に対処しています。 当社は問題を克服し、そこから学ぶことで競争力を磨きます。今後の日産にご期待ください。 以 上 |