<参考資料>

 

2005年度中間決算報告記者会見

2005年10月28日

日産自動車(株)社長兼CEO カルロス・ゴーン

 

今年の9月末、私は日産の完全復活を宣言いたしました。日産180最後の、そして最も厳しいコミットメントである100万台の増販を達成し、日産は1999年10月以来、公約してきた事業計画の全てのコミットメントを過達しております。

今年4月からは次の3ヵ年計画である日産バリューアップを実施し、長期的且つ持続可能な利益ある成長を目指しています。当社は好スタートを切り、2005年度上期の売上高は前年同期から12.1%増加し、営業利益は4,115億円に達しました。

年度の初めに、今後自動車業界が直面する原材料市況の高騰、金利の上昇、記録的に高いレベルにあるインセンティブ等、数多くの課題を挙げました。更に自然災害や原油価格の高騰等のマイナス要因により、先行きは不透明性を増し、消費者不安、そして車種構成の悪化が特に米国で顕在化しています。

この厳しい環境の下、日産は引き続き順調なペースで正しい方向に進んでおり、本日ご説明いたします業績が、当社のビジネス基盤が更に強化されていることを裏付けています。

本日はまずグローバルな販売状況をご説明した上で、財務実績の詳細をご報告いたします。そして最後に2005年度通期の見通しを申し上げます。

 

2005年度上期販売実績

販売台数は各国の会計年度に基づいてご報告いたします。日本と米国については4月から9月、欧州、メキシコ、そして一般海外市場の一部は1月から6月までの実績です。当社の2005年度上期の販売台数は、グローバルで183万4,000台に達し、前年同期から15%増加しました。

2005年度上期の全体需要については日本、米国、欧州市場は微増、一般海外市場は大幅に増加しました。インセンティブの上昇は引き続き全ての市場において課題となっています。特に今年は米国、欧州、そして中国で拡大しました。日産は引き続き慎重にインセンティブを管理しますが、市場に見合った商品価格設定の必要性は認識しております。厳しい状況ではありますが、会社としては、商品とブランドを重視し、安売りはしない方針です。

2005年度上期には国内に新型車2車種を投入しました。ミニバンのセレナと軽自動車のオッティです。下期には、グローバルで4車種を発売する予定です。内3車種は日本、1車種は欧州に投入します。販売台数の増加には、中国に投入したティアナや米国で発売したインフィニティのM等、日産180の最終年度に投入した新型車も寄与しました。また、発売からしばらく経った現行車の一部も、引き続き販売増に大きく貢献しています。例えばアルティマ、ムラーノ、エクストレイル、そしてインフィニティG35です。当社は全ての主要な市場において強力な商品ラインアップを揃えており、最も厳しい環境においても、競争力を維持する力があります。

では地域別の販売状況をご説明しましょう。まずは日本です。

国内販売台数は421,000台に達し、前年同期比14.5%増となりました。その間、全体需要は3.5%増加しました。市場占有率は軽自動車込みで15%と、前年同期から1.4ポイント上昇しました。ティーダとセレナ等、新型車の販売は好調です。軽自動車の販売も前年同期から37%伸びましたが、これには新型オッティが大きく寄与しています。

次に米国の状況です。2005年度上期の販売台数は過去最高の571,000台となり、前年同期から16.7%伸びました。米国における市場占有率も過去最高の6.1%を記録し、前年同期から0.7ポイント上昇しました。

米国ではニッサン、インフィニティ、両チャンネルとも販売を伸ばしました。ニッサン・チャンネルの販売は、前年同期から17.8%増加しましたが、これはアルティマ、セントラ、並びに発売して間もないパスファインダー等の新型車が大きく寄与しています。インフィニティ・チャンネルの販売も引き続き拡大しており、過去最高を記録した2004年度上期から9.7%増加しました。

次に欧州の状況です。欧州の2005年1月から6月までの販売台数は287,000台となり、前年同期から0.8%伸びました。4x4(フォーバイフォー)、特にパスファインダーそして投入したばかりのムラーノが重要な役割を果し、着実な販売増に貢献しています。2005年度の下期にはマイクラC+Cが新たに小型車ラインアップに加わり、ピックアップトラックのナバラの登場で4x4(フォーバイフォー)ラインアップも強化されます。

続いてメキシコとカナダを含む一般海外市場です。販売は好調です。2005年度上期の販売台数は前年同期比22.4%増の555,000台に達しました。ではいくつか重要な市場についてご説明しましょう。

  • 中国における販売は140,000台となり、前年同期から67%増加しました。現地合弁会社である東風汽車有限公司の好調な売上を支えたのは、この1年間に発売したティアナとティーダです。
  • 中近東の販売台数は前年同期比40%増の62,000台となり、インフィニティが牽引役を果しています。
  • 最後にメキシコの販売台数は106,000台となり、前年同期比0.5%増でした。

 

2005年度上期業績

では2005年度上期の業績に移りたいと思います。

連結売上高は4兆4910億円となり、2004年度上期から12.1%増加しました。今回は連結対象範囲を変更し、カルソニック・カンセイ等が加わった結果、537億円の増収となりました。

連結営業利益は前年同期比2%増の4,115億円に達しました。売上高営業利益率は9.2%です。では増減要因をご説明しましょう。

1) 為替レートの変動は2005年度上期の営業利益に対して104億円の増益要因となりました。その大部分はメキシコペソ、豪州ドル、そしてカナダドルによるものです。米ドルに対する平均為替レートは2004年度上期の109円80銭からほぼ同水準の109円50銭となり、ユーロは133円10銭から136円30銭となりました。米ドル、ユーロ共に2005年度上期の営業利益に対する影響はほとんどありませんでした。
2) 先ほど申し上げた連結対象範囲の変更は2005年度上期の営業利益に対して112億円の増益要因となりました。
3) 台数増及び車種構成は581億円の増益要因となりました。
4) 販売費は307億円の減益要因となりましたが、これは特に米国におけるインセンティブ上昇によるものです。
5) 購買コストは引き続き改善し、営業利益に対して497億円の増益要因となりましたが、これには原材料市況の高騰により生じた223億円のコスト増も織り込んでおります。
6) 商品性の向上と規制対応に関わるコストは474億円の減益要因となりました。
7) 研究開発費は増加し、83億円の減益要因となりましたが、これは技術開発と商品開発の為の投資拡大を目的とするものです。
8) 製造費と物流費は174億円増加しましたが、これには日産バリューアップで予定している28の新型車の発売に伴う生産能力増強と商品に関わる投資が含まれています。
9) サービス保証費は販売台数が伸び、より積極的且つ迅速なお客様へのサービス対応を推進した結果、210億円増加しました。
10) 一般管理費他は35億円の増益要因となりました。

各地域の営業利益は、2004年10月よりグループ会社間の支払い条件を変更し、グローバルな開発費の大部分を負担する日本の収益を適正化しました。

日本事業の営業利益は1,994億円となり、前年同期の1624億円を上回りました。

米国とカナダの営業利益は1,521億円となり、前年同期の1,695億円を下回りました。

欧州の営業利益は182億円となり、前年の193億円から減少しました。

最後に、メキシコを含む一般海外市場については前年同期の521億円から462億円となりました。

地域間の内部消去はマイナス44億円となりましたが、2004年度上期はプラス1億円でした。

営業外損益は159億円の損失となり、経常利益は3,956億円と、2004年度上期の4,014億円を下回りました。

特別損益は282億円の損失となり、前年同期の309億円から若干改善しました。

税引前当期利益は3,674億円となりました。

法人税等は1,172億円で、前年同期の1,207億円から減少しています。実行税率は31.9%となり、前年の32.6%を若干下回りました。

少数株主利益、即ち100%子会社ではない、カルソニック・カンセイ、愛知機械、日産車体等からの少数株主利益は195億円となりました。

当期純利益は2,307億円となり、前年同期の2,388億円に対し3.4%減少しました。これは主として、新たな固定資産の減損に係る会計基準を適用した結果、148億円の減益となったためです。

 

2005年度通期予想

リスクと好機について申し上げますと、最大のリスクは世界的なインセンティブの上昇、特に米国市場における車種・グレード構成の悪化、そして原材料市況の高騰、高金利、エネルギー価格の上昇です。主な好機は日産バリューアップの徹底、そして有利な為替レートです。特に、日本円と米ドルのレートは有利に働くものと見ています。

以上のリスクと好機を鑑みても、有利な為替レートがリスクを補う為、通期については当初の予測を変更する必要はないと考えています。

 

まとめ

私どもが日産再生の過程で学んだ教訓は記憶に新しく、将来にも通用します。この6年間の日産のスピード、焦点の当った取組み、そして緊張感がこれからも試されるでしょう。

今までも成果を収めるのは、簡単なことではありませんでした。今後、自動車業界が直面する逆風は日増しに強まってくるでしょう。この数ヶ月間の米国市場の状況は、短期間で消費者のニーズが別のセグメントや商品に移ることを証明しています。世界的にみて、当社は北米、西ヨーロッパ、そして日本市場の今後の成長は期待しておりません。新興市場である中国等については、プラスとマイナスの両面があるものの、今後の市場の大きな成長に伴い、利益を確保できると見込んでいます。直近の見通しがはっきりしているのはロシアとインドのみと考えています。

商品計画については、2005年度は日産にとって米国とカナダでは静かな年、現行車の発売を予定している欧州と一般海外市場では賑やかな年、5つの新型車の投入を控えた日本では忙しい年になるでしょう。確かに2005年度は新型車の発売が集中する年ではありませんが、日産バリューアップ全体では数多くのイベントを予定しております。こちらをご覧いただきますとわかるように、日産の新車攻勢は来年度から始まります。2006年度には10車種、2007年度には12車種の新型車を発売します。日産バリューアップでは現行車のモデルチェンジだけでなく、新たな市場やセグメントへの参入も予定しています。

日産はひるむことなく、課題をチャンスに変えて突き進んでいます。日産バリューアップでは三つのコミットメントを掲げています。2008年度末までにグローバルで420万台を達成すること。グローバル自動車業界トップレベルの売上高営業利益率を確保すること。そして3年間平均で20%以上の投下資本利益率を維持することです。計画は予定通り進んでいます。今後も日産にご期待ください。