2003年10月16日
「日産180」進捗状況及び03年度上半期決算見通しに関する記者会見
社長 カルロス ゴーン スピーチ
日産自動車株式会社
I. はじめに
皆様、こんにちは。
今日は日産180の中間地点にあたりますが、この上期の実績も再び、数字が全てを物語っています。日産は半期として7期連続で過去最高の営業利益を計上する見込みです。
過去最高の利益は、当社が、好ましくない市場環境にも拘わらず、引き続き効果的な実績をあげている証です。主要な市場では、いずれも、全体需要が縮小しています。特に米国に顕著に見られる過去にないレベルのインセンティブ競争により販売環境が厳しく、また為替レートの変動により、グローバル市場は更に不透明感を増しています。以上の環境にも拘わらず、日産は引き続き一貫した方針を貫いています。私どもは、正しい軌道に乗って、日産180を一歩ずつ進め、発表したコミットメントを達成する所存です。
当社の売上高は8.2%上昇しました。また、営業利益は4,010億円となり、売上高営業利益率は11.3%となる見込みです。これはグローバルな自動車メーカーの営業利益率としては過去最高となる数字です。しかし、私どもは単に数字を追求しているわけではありません。日産は、価値を伴う結果、即ち利益ある成長を目指しているのです。
本日はまず、今年度上半期における当社の全世界の販売状況をご説明した上で、暫定値ではありますが、上半期の営業実績をご報告いたします。続いて2003年度通期の見通しを発表いたします。尚、本日発表する数字は暫定値であり、損益計算書での重要な数値に限られています。11月6日に東京証券取引所に届け出る正式な最終決算値とは若干異なる可能性がある旨ご了承ください。
II. 03年度上半期営業実績
2003年度の上半期には、過去に発表しました日産の将来にとって重要な2つの決定が実現しました。米国ミシシッピー州新キャントン工場が、この5月に生産を開始し、7月1日には、米国の地球の反対側に位置する中国で、新・東風汽車有限公司が操業を開始したのです。
日産は、米国のミニバン、フルサイズ・ピックアップトラック、そしてSUVセグメントに新規参入を果たすことになるのです。この3つのセグメントを合算すると、日本の登録車の年間の全体需要にほぼ匹敵するのです。日産はこの3つのセグメントにおいて、白紙の状態から始めたわけですが、出だしは順調です。マスコミとお客様からは心強い初期反響をいただいております。
キャントン工場では、起工式から25ヶ月で操業開始に至りました。弊社生産部門は、期限を守り、予定通り、予算内で工場を立ち上げたのです。これはグローバルな自動車業界では特筆に価し、比類のない功績であります。本日、これを可能にした日米の何千人もの人々の努力をここで称えたいと思います。
中国に目を転じると、市場は引き続き目覚しい速さで成長しています。中国は世界最大のトラック市場のひとつであり、最も急成長を遂げている乗用車市場でもあります。東風汽車を通じて、当社は、乗用車を日産ブランド、小型商用車、バス、小型バス、及び大型トラックを東風ブランドで販売します。日産と東風との折半出資となる新会社は、中国では他に例のない構成であり、日産180以降、大きな成果に結びつくと考えております。
新たに就任した東風汽車有限公司の経営陣は、3ヵ年の事業計画策定に着手しました。計画の内容は、来月発表予定です。
これらの2つの主要イベントに加えて、将来の利益ある成長に向けて幾つかの決定を致しました。5月には日産ライトトラック株式会社の設立を発表し、この会社は10月1日より稼働しています。この会社は日産自動車が85%、日産ディーゼルが15%出資した会社ですが、グローバルで拡大する小型トラックや商用車市場での両社の成長に貢献する見込みです。
また、デザイン部門、先行技術開発部門を強化し、商品開発プロセスを変革するため、我々が「イマジネーション・ファクトリー」と呼ぶ厚木市の拠点の拡大を2006年完了に向けて着手する旨決定しました。デザイン、商品コンセプトそして技術の革新は、これまでもそして今後もグローバルな自動車業界での成功を左右するものです。
III. 03年度上半期販売実績
では2003年度上半期の、販売状況を振り返ってみましょう。
当社のグローバル販売台数は各国の会計年度に基づいてご報告いたします。つまり、今年度の最初の6ヶ月の販売台数です。日本、米国については、4月から9月までの台数。欧州、メキシコ、南アフリカについては、1月から6月までを基準としております。その結果、2003年度上半期のグローバル販売台数は、前年同期比5.9%増の1,467,000台でした。2003年の4月から9月までの直近6ヶ月間の各地域の販売台数を合算すると、前年同期に比べ、7.3%上昇しており、世界中で販売増加の勢いが加速していることを示しています。
2003年度上半期には、中国を例外として、私どもにとって主要な市場である日本、米国、欧州、並びにメキシコで全て全体需要が減少しました。同時に、インセンティブ競争も激化し、例えば米国ではインセンティブが史上で最も高いレベルまで悪化しました。
以上のような状況下、日産では新型車の商品力が拡販を支えました。日産180の3年間に、当社は28の新型車を発売予定ですが、内12車種は2002年度に投入しました。その12車種が拡販の牽引役を果たしているのです。今年度はグローバルで10車種投入予定ですが、内8車種は既に販売しております。
では地域別にご説明しましょう。まずは日本です。
2003年度上半期の当社の国内販売台数は前年同期比0.9%増の387,000台でした。軽自動車を除いた登録台数は3.7%増加しています。その間、軽自動車を含んだ全体需要は1.3%減少しました。
この3年間に亘る商品ラインアップの刷新と強化対策は、街を走る新型車という、目に見える成果を生み出しました。現在、日産には軽自動車3車種が揃うと共に、マーチとキューブによって拡充したエントリーカーの品揃えを実現し、キューブ・キュービックが、小型車と充実したミニバン・ラインアップの橋渡しとなっています。キューブ・キュービック発売から1ヶ月経った時点で、キューブは日本で2番目のベストセラー車となっています。
7月のミニバン、プレサージュの投入により、日産はミニバンセグメントでの確固たる地位を築きました。発売後3ヶ月の販売台数は前モデルの8.7倍にもなります。
国内の登録車市場での占有率は19.4%となり、日産180の目標である30万台の増販に向けて、予定通り進んでいます。
次に米国の状況です。2003年度上期の販売台数は、2002年度上期から11%増の420,000台となりました。市場占有率も4.7%となり、前年同期比0.5ポイントの上昇です。
米国ではニッサン、インフィニティの両チャンネルとも販売を増加しました。ニッサン・ディビジョンの販売は上半期で6.3%増加し、これには新型車であるミニバンのクエストやクロスオーバー車のムラ−ノ、引き続き好調なセダン、アルティマやマキシマ、そして350Zが寄与しています。 インフィニティ・ディビジョンはそれまでの記録を塗り替える実績を享受しており、2002年度に比べ39.7%販売を増加させましたが、これはスポーツセダン、スポーツクーペのG35、FX45といった新型車が好調であることが理由です。これらの全ての新型車はより優れた車をダイナミックに投入できる当社の力を表しており、市場はこれを評価しています。その結果販売は増加していますが、これはインセンティブ等、人為的な操作の結果ではありません。
このスライドは、前回もご覧いただきましたが、改めて、インセンティブについて、私どもの姿勢に変わりがないことをお伝えしたいと思います。それはインフィニティ・ディビジョンについても同様ですが、インフィニティの売上は引き続き拡大しています。日産は利益を犠牲にして、拡販を目指すことはありません。
アメリカについて、もう一言付け加えたいと思います。予定している大イベント、タイタンの発売です。
キャントン工場で生産しているミニバン・クエストとパスファインダー・アルマーダは、予定通り投入しました。日産生産方式の効率性の証です。来週、タイタンの生産を開始し、インフィニティ系のフルサイズSUVもそれに続きます。新車攻勢は勢いを増していますが、その成否を決めるのはアメリカのお客様です。
次に欧州の状況です。欧州の2003年1月から6月までの販売台数は前年同期比6.6%増の267,000台でした。また、市場占有率は2.5%から2.7%に上昇しています。
新型マイクラの販売が予測を大きく上回り、発売開始の1月から6月までに8万台、1月から9月では126,000台の販売、対前年同期比51%増を記録しました。マイクラは欧州カーオブザイヤー最終候補車7台のうちの1台として選ばれたばかりです。マイクラに対する需要の増加を受け、当社はサンダーランド工場でのマイクラの生産能力を25%増強し、200,000台に引き上げました。尚、サンダーランド工場は、欧州で最も生産性の高い自動車工場に、7年連続で選ばれています。
欧州市場での当社のSUV、四輪駆動車も好調で、エクストレイルは46%、ピックアップトラックは37%、それぞれ2003年1月から6月の販売を前年同期比で増加しています。
先月開催されたフランクフルト・モーターショーでは、350Zを発表しましたが、日本と米国と同様に、熱烈な反響をいただいております。
次は一般海外市場です。メキシコとカナダを含めた一般海外市場における販売も好調で、2003年度上期は393,000台に達し、前年同期から5.3%増加しました。一般海外市場は複数の国から成っているため、全体の市場占有率を計算する意味がないことはご存知の通りです。
とは言え、いくつかの重要な市場についてご説明しましょう。
・ 中国における販売は前年同期比33%増の48,000台となりました。最近投入された現地製モデルであるSUVのパラディン、セダンのサニーの販売好調により、工場はフル稼働状態です。この好調は今後5つの新型車を2006年までに投入するにあたり心強い限りです。
・ 台湾については、前年同期比31%増の34,000台です。
・ オーストラリアでは前年同期比20%増の32,000台に達しました。
・ 主な市場では、唯一メキシコの販売のみ、前年同期に比べ6.1%減少いたしました。メキシコ市場の全需は3.5%減少しています。
IV. 2003年度上半期 業績
次に2003年度上半期の業績に移りたいと思います。今日ご覧いただく決算数値は暫定値であり、11月6日に監査済みの決算値を発表するまでに若干の調整を行う可能性があります。
連結売上高は2002年度上期から8.2%増加し、3兆5,600億円となる見込みです。主な増収要因は販売台数およびモデルミックスの改善です。連結対象範囲の変更により、140億円という小額の影響が出ていますが、これには日産コーエー等の持分法適用会社化が含まれています。加えて、先に発表済みの日本でのリース会計の変更に伴う減収要因は100億円です。
連結営業利益は2002年度上期から15.2%増の4,010億円に増加する見込みです。売上高営業利益率も11.3%を達成する予定であります。では、増減要因をご説明します。
1)2003年度上半期の営業利益に対して、為替の影響は殆どありません。これはドル安による減益要因が他の通貨、とりわけユーロと英ポンドのレートが当社にとって有利に推移したことによって相殺されたためです。米ドルに対する平均為替レートは2002年度上期の123.1円から2003年度上期は118.1円となり、ユーロについては2002年度上期の116.3円から131.3円となりました。
2)ベンダーツーリングとキャントン工場のシンセティック・リースに関わる会計基準の変更等は、90億円の増益要因となりました。これは4月に申し上げた通りです。一方、連結対象範囲の変更による営業利益への影響は、マイナス10億円です。
3)台数増及び車種構成は2002年度上期に対し、2003年度上期は610億円の増益要因となりました。メキシコを除いた全地域の台数増加は連結利益の増益要因となりました。モデルミックスについては米国での改善が日本と欧州での悪化を相殺した形となりました。
4)販売金融会社は84億円の追加増益要因となりました。
5)販売費は375億円の減益要因となっていますが、これは4月に申し上げたとおり予想されていたもので、キャントン工場製の新モデルの投入や、日本、米国、欧州でのインセンティブの水準が高かったことによります。
6)製造費による収益への影響はありませんでした。生産性向上による増益要因が90億円のキャントン工場の立ち上げコストによって相殺されたためです。
7)購買コストは引き続き改善し、営業利益に対して923億円の増益要因となっています。昨年と同様のトレンドで購買コストは年率6%のペースで削減しています。
8)商品性向上と、規制対応に関わるコストは375億円の減益要因となりました。これは過去数年間の実績と同じレベルです。
9)研究開発費は増加し、300億円の減益要因となりましたが、これは当社が引き続き日産180のもと、技術開発、商品開発の強化を目的とするものです。
10)一般管理費は、119億円の減益要因となりました。これは広報、財務管理、情報システムなどの主な部門に将来に向けた投資を積極的に行っているためです。また、世界中で販売台数が増加していることに伴い、より多額のコストに対処すべく、製造物責任保険を増額いたしました。
所在地別では、3つの主要地域で利益が増加し、1つの地域では利益が減少しています。
2003年度上半期の日本事業の利益は、前年を上回ります。営業利益は2002年度の1,742億円から1,933億円になる見込みです。
米国、カナダを含む北米については、利益は大幅に増加し、営業利益は前年の1,141億円から1,601億円に増加しました。これは販売台数増とモデルミックスの改善によるものです。
欧州事業の収益性も引き続き改善し、2003年度上半期も好調です。営業利益は2002年度上期の70億円から2003年度上期には115億円となりました。
最後に、一般海外市場の日産全体の利益に対する貢献は昨年度上期の449億円から316億円へと減少しました。これはメキシコと中近東の利益が減少したためです。
地域間の利益の内部消去は2002年度上期のプラス81億円に対し、2003年度上期はプラス46億円となる見通しです。
営業外損益は108億円の損失となり、その結果、経常利益は前年の3,235億円から3,903億円となる見込みです。
最後に、当期純利益は前年の2,877億円から減少し2,377億円となる予定です。営業利益が前年同期比で増加しているにもかかわらず当期純利益が減少する理由は次のとおりですが、いずれも現在のビジネスとは直接の関係がありません。
・ まず、2002年度上期に比べ今期は特別利益が大幅に減少しました。前年同期には村山工場跡地売却益が564億円ありました。
・ 次に、既に4月に申し上げたように、日産は通常ベースの税金を納めはじめるということです。2003年上期の連結実効税率は34%となり、1,252億円の税額を認識しています。2002年度上期の実効税率は21.7%で税額は793億円でした。
・ 最後に、100%保有以外の連結子会社の少数株主持分が52億円のマイナスとなる見込みです。前年同期は20億円のプラスでした。
貸借対照表については、4月に申し上げた通り、自動車事業実質有利子負債の消滅は日産180のコミットメントを2年前倒しで達成したことになり、財務実績を計る主要な指標としては今後は使用されません。今後は投下資本利益率(ROIC)を使用していきます。上期末の状況は、ROIC20%以上を達成する方向で順調に進んでいます。
2003年3月末での自動車事業実質有利子負債は90億円のキャッシュポジティブとなりました。同じ会計基準を使うと、上期末の2003年上期末は210億円の有利子負債となります。
4月に申し上げた通り、2002年度に1,170億円相当のキャントン工場設備を貸借対照表に載せた結果、実質自動車事業負債が1,080億円増加することとなります。また日本におけるリース債務1,530億円を貸借対照表に含めた新会計基準の下では、最終的な実質自動車事業負債は2,780億円となる見込みですが、通年では1,500億円に削減される見込みです。
V. 予測
当社のビジネスには引き続きリスクと好機があります。最も大きなリスクは日本市場の台数及び販売ミックスです。重要な好機は日産180の迅速な実行です。
国内の全体需要は580万台を見込んでいますが、これは当初の予測から変更ありません。当社の国内販売台数は軽自動車を含め837,000台を見込んでおり、当初予測の867,000台から下方修正しました。米国の全体需要は予想以上に好調で、日産は通期の予測を当初の1,550万台から1,600万台に上方修正しました。当社の米国における販売予測も当初の852,000台から870,000を達成する見込みです。欧州の全体需要は当初の計画である1,790万台から変更せず、当社の販売台数についても、530,000台から変更はありません。メキシコとカナダを含む一般海外市場の販売予測は当初予測の791,000台から803,000台へ見直しました。
合計すると、地域間で多少の増減は予想されるものの、日産のグローバル販売台数の予測は、当初計画の、通期で前年比9.7%増の304万台から変更はありません。
最近の外国為替市場の動向を勘案し、下期の前提となる円・ドル為替レートを当初の120円から110円に変更しますが、ユーロは当初のレートである125円から変更ありません。通期の業績予測値は本日東京証券取引所に届け出を行いましたが修正はなく、通期の売上高は7兆4,500億円、営業利益は8,200億円、売上高営業利益率は11%、経常利益は7,810億円、当期純利益は4,950億円となる見込みです。
VI. まとめ
日産リバイバルプラン以降、ご覧いただいている当社の業績は、一貫しています。私どもは常に、長期的な利益ある成長というビジョンを目指しているのです。日産は一歩ずつ、歩みを進めています。私どもはコミットメントを達成しています。
当社は特定の市場や車種を頼みにしているわけではありません。日産はグローバル企業であり、それを支える柱の数も増え、将来の様々なチャンスに対応する会社なのです。
目覚しい進歩を遂げることは喜ばしいことですが、私どもは現状に満足しているわけではありません。グローバルな自動車業界トップレベルの営業利益率を実現した今も、当社の業績はピークに達したわけではないと確信しています。日産が実力を発揮するのはまだこれからです。今後の日産にご期待ください。
ご静聴ありがとうございました。続いて質疑応答に移りたいと思います。
以上 |