「第25回ニッサン童話と絵本のグランプリ」入賞作品決定及び表彰式開催

大賞受賞者インタビュー<絵本の部> みやこし あきこ さん


<プロフィール>
美術大学在籍中から絵本創作に興味を持ち、第20回からグランプリに挑戦。現在はイラストレーターとして活躍するかたわら、出版を目標に絵本の創作に取り組んできた。優秀賞2回、佳作3回の入賞を経て、第25回の今年、見事大賞を受賞。
 ホームページ: http://grafz.net/miyakoshi/

<受賞作>
「たいふうがくる」
あらすじ
金曜日、ぼくは悲しい。なんでかっていうと、明日は台風が来るから。明日は、お父さんやお母さんと海へ行くのに。お父さんもお母さんもがっかりしているみたい。空はどんどん暗くなる。雨が強くなってきた。そして・・・。

大学生の頃から応募し続け、6回目のチャレンジで大賞を受賞


Q:受賞の感想は?
A:受賞の連絡をいただいた時、すぐには実感がわきませんでした。家族や友達に話すうちに少しずつ「ああ、大賞をいただいたんだ」という喜びがわいてきた感じです。大学3年生のときから毎年応募してきましたが、6回目の応募で大賞をいただけるなんて、本当にありがとうございました。
Q:絵本を描きはじめたきっかけは?
A:大学ではデザインを専攻していたため、授業で絵本に取り組む機会はほとんどありませんでした。でも絵本は昔から好きで、「いつか出版したい」という夢があったので、「大賞=出版」につながるグランプリに応募するようになりました。
Q:今回の作品の着想はどこから?
A:具体的な体験があるわけではありません。小さな頃の思い出や、自分の中に断片的に残っているシーンをつなぎ合わせて紡いだ物語です。台風が来る前の静けさ、そして台風一過のスカッと晴れた青空。子どもの頃に好きだったそれらの風景を描いていくうちに、こんな物語になりました。ある意味、感覚的に描いた作品なので、それを評価していただいたことはとても嬉しいです。
その一方で、私は自分の考えや意見を言葉にすることなくここまで来てしまった、というのも事実です。今回の受賞でそのことに気づかされたので、今後は「私はこういうことを考えて、こういうことを表現したい」という思いを、自分の言葉でしっかりと語れる作家になりたいですね。
Q:画材や技法について工夫している点は?
A:アメリカの絵本作家、クリス・ヴァン・オールズバーグが好きなので、今回の絵のアングルなどは、その影響を受けていると思います。とはいえ、これまでは描きたいことを描いてきただけなので、作風はその物語に合わせて変化してきました。初めて応募いたときは、確か、色紙をコラージュしたような、図形的な作風だったと記憶しています。今回は、主人公の持ち物や部屋の感じなどのディティールを書き込みたかったので、こうした画風になりました。
Q:お気に入りのシーンはどこでしょう?
A:ラストシーンの青空は大好きです。それより気になるのが、主人公が学校の教室にいるシーン。子どもがたくさんいる中で、主人公が端の方にちょこんと座っている構図なのですが、描き込んでいるうちにどんどん主人公に感情移入してしまって。子どもの授業参観に来た親の気分とはこんな感じ?というくらい、思い入れがあります。
Q:どんな点に苦労しましたか?
A:今回の作品に限っていえば、身近に主人公と同じ年頃の男の子がいないので、ディティールの描き込みには苦労しました。ちゃんとモデルを観察して描かなくては、と思っています。
また、もともと絵を描くのが好きではじめたことなので、描きたい風景を物語の一場面として取り込み、自然な流れをつくることには、いつも苦労します。今回は、思いついたことをサラッと描けてしまったという意味で、例外的な作品といえるかもしれません。


Q:次の目標は?
A:「自分の絵本を出版する」という夢の第一歩が踏み出せたので、2冊目、3冊目と続けて出していくことが次の目標です。そのためには、自分のテーマや表現の仕方などをきちんと考え、言葉にしていくことも大切だと思っています。私自身、作家としてはもちろん、人間としてもまだ未熟な点が多いと感じています。絵本にしたいお話はまだまだあるので、怠けずに精進して、創作活動に取り組んでいきたいですね。

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