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日産 童話と絵本のグランプリ
第34回(2017年度)入賞作品
第34回絵本の部・大賞 (※掲載している作品は受賞時点のものです。出版作品とは異なる場合があります。)

こぐまのアーリーとあかいぼうし
作・絵/わだあい

 


「おいしい はっぱは みどりいろ
 ひるねは ちゃいろい きのしたで」
もりのなかで うたっているのは、
ちいさな くまの アーリーです。
「おひさま きいろに かがやいて
 あおい おそらで わらってる
 くろい めだまは だれのこと 
 アーリー ぼくだよ ぼくのこと
 あかい、 うーんと ・・・なんだ あれ。」
アーリーの うたが とまると、
あるいていた アーリーの あしも とまりました。


アーリーの めのまえに なにか あります。
それは あかい ぼうしです。
ですが、 アーリーは このとき はじめて 
あかい ぼうしを みたものですから、
それが なにか わかりませんでした。
そこで アーリーは そっと、 そーっと ちかづいて、


ちいさな つめで ちょん ちょん ふれたり、
まるい はなを つきだして
くん くん くん、
かおのまえで ぼうしを なんども まわしてみましたが、
まさか、あたまに かぶるなんて 
おもいつきもしませんでした。
だって、 アーリーの あたまには、 
ふたつの まるい みみが ついていましたから!


アーリーは ひとしきり かんがえたあと、
まるくて あかい、まんなかに あなの あいた それを、
りょうてで そっと つつみますと、ゆっくり あるきだしました。
すると、 また うたが はじまりました。


「おいしい はっぱは みどりいろ 
 ひるねは ちゃいろい きのしたで
 おひさま きいろに かがやいて 
 あおい おそらで わらってる
 くろい めだまは ぼくのこと 
 だけど あかいの これ なあに
 まんまる あかいの これ なあに」
そうして、あっとゆうまに おうちへ かえってきました。


「アーリー なにを しているの。」
おかあさんが ききますと
「まるくて あなの あいたもの、 どーれだ。」
アーリーは いえのなかの まるくて 
あなの あいたものを ひっぱりだしてきて、
あれでもない、 これでもない と、 いっています。


「アーリー、 こんどは なにを しているの。」
また おかあさんが ききますと、
「ぼくが おうちへ かえるころ 
 あおい おそらの てっぺんを 
 あかい おひさま ころがった
 ころころ ころころ ころがって 
 さよなら おひさま また あした」
アーリーは おひさまに てを ふると、
「ああ だけど おひさまには あなが ないー」
と、 つけくわえました。


「アーリーは なにを してるんだい。」
こんどは おとうさんが ききました。
「ぼく いま まねっこ しているの。」
「ぼくが まねっこしたら、 これが なにか 
 わかるかもしれないからだよ。
 ねえ おとうさん、 ぼく にてる?」
おとうさんは それぞれを よく ながめますと、


「そうだな、 アーリーは くまだから、 
 あかい ぼうしには にてないけれど、
 おかあさんと おとうさんには よく にているよ。」
おとうさんが そう いいますと、
「ぼうし! これ、ぼうしって ゆうの! 
 おとうさん、 ぼうしって なあに?」
「そうだなあ・・・。」
おとうさんは まめいりの スープを ごくごく のみほすと、 
いいことを おもいつきました。
「よし、アーリー、 それなら もちぬしに きいてみよう。
 あかい ぼうしを おとした もちぬしなら、 
 それが なにか よーく しっているよ。」


つぎの あさ、 おひさまが そらに のぼりますと、
こぐまの アーリーと おとうさんは でかけてゆきます。
「ぼうしの もちぬしは だれだろう。 
 おとうさんより おっきくて とがった つめと きばを
 もっていたら ねえ、 どうする? 
 そしたら ぼく にげちゃうよ。」

アーリーは しんぱいそうに いいました。
「それなら おとうさんも まけないぞ。」
おとうさんは おおきな くちを あけて わらってみせました。
すると とつぜん、 
びゅうー びゅる びゅる びゅる びゅうー。


つよい かぜが ふいて、 
ぼうしは そらを まいました。

「あっ わたしの ぼうし!」


あかい ぼうしは かぜに のって ふわり、 ふわり、 
おんなのこの あたまのほうへ おりてゆきました。
「わたしの ぼうし、 かえってきたわ!」
おんなのこが ぼうしを そっと なでますと、 
あたまに ぴたりと おさまりました。

アーリーは、 あかい ぼうしの おんなのこを 
みつめたまま、
じぶんの あたまを なんども なでてみましたが、
ふたつの まるい みみが、 くすぐったいばかりなのでした。


アーリーの てのなかは からっぽに なりました。
かわりに、 くろい めだまから こぼれた なみだが 
ひとつぶ、 また ひとつぶ。
ですが そのとき、 ふいに おとうさんの こえがして、

ちいさな あかい まるものが ひとつぶ、 また ひとつぶ。
「アーリー、 これ なーんだ?」
それは、 アーリーの てのなか いっぱいに なりました。


「きいちごだ!」
アーリーの くろい めだまは きらきらと かがやきました。
「おおあたり!」
おとうさんは にっこり わらって、 
アーリーの あたまを なでました。
「さあ かえろう。 おかあさんに おみやげだ、 
 きっと うーんと よろこぶよ。」
さて、アーリーが げんきよく あるきだしますと、 
ほら、 あの うたが はじまりましたよ。


「おいしい はっぱは みどりいろ 
 ひるねは ちゃいろい きのしたで
 おひさま きいろに かがやいて 
 あおい おそらで わらってる
 くろい めだまは だれのこと 
 アーリー ぼくだよ ぼくのこと
 まんまる あかい み あまずっぱい 
 てのひら いっぱい ほら ここに
 ぼくの しあわせ みいつけた♪」



わだあい
37歳 図書館臨時職員 福岡県福岡市
<受賞のことば>
ありがとうございます。もう一度描き直してでも出版したいと、強く望んだ作品でした。幸運にも、そのチャンスに恵まれましたこと、いつも変わらずに見守ってくださるすべての方に感謝しています。目の前に続いた絵本の道を、元気に長く歩いていきます。そして、こぐまのアーリーが、たくさんの大切な友だちに出会えますように。

短評
明度を押えた色調で、きめこまやかに表現された絵、巧みな空間の処理、などを含め、この画面から伝わってくる空気感が、とてもよくストーリーと合って、この絵本のグレードをあげ、魅力的な絵本になっています。
(篠崎 三朗)


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