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025

クルマがカラダの一部になる

これまでのステアリング操作はシャフトを通じてタイヤに伝わっていた。けれどその操作を電気信号としてタイヤに伝わるようになるという。人間の体の仕組みと同じく、電気信号で操作する次世代ステアリング技術とは?

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2013/04/11

人間の体は、電流によって動いている
人間の脳には、無数の神経細胞がある。神経細胞は神経繊維で結ばれており、動きが起こるときには微弱な電流が流れる。つまり,神経細胞同士、あるいは神経細胞から筋肉に情報を伝える時には「電気信号」が使われるのだ。
自動車の仕組みも、人間の体に近づきつつある。機械的に繋がって動きを伝える仕組みが、電気信号のやりとりに取って代わりつつあるのだ。近い将来は、ステアリング操作も電気信号で伝達することになる。
これまでは、ドライバーのステアリング操作(ハンドル操作)はシャフトを通じてタイヤに伝わっていた。けれど今後は、その操作を電気信号としてタイヤに伝わるようになるという。人間の体の仕組みと同じく、いずれ当たり前の技術になるはずだ。日産が開発に成功した、電気信号で操作する次世代ステアリング技術を紹介したい。

快適かつ直感的にクルマを操縦できる
なぜ熟成された技術があるにもかかわらず、わざわざ電気信号での操作に移行するのだろうか。
第一の理由は、思い通りにクルマを走らせるためだ。従来のシャフトを介してハンドルの動きをタイヤに伝える場合と異なり、ゴム部品(ブッシュ)を介さない分、正確にステアリングが切れる。従来のステアリングシステムには、トーションビームや樹脂製のブッシュという部品が不可欠だった。段差などを乗り越えた時にタイヤが受ける衝撃を、トーションビームやブッシュが変形することでハンドルに伝わりにくくしていたが、ステアリング操作がタイヤにダイレクトに伝わらない原因ともなっていた。一方、電気信号であればシャフトを介する必要がなくなり、トーションビームやブッシュをなくすことができる。そのため、ドライバーがステアリングを切った瞬間にダイレクトにタイヤの向きを変えることができる。
第二の理由は、快適にクルマを走らせるためだ。これまでのステアリングシステムでは、路面の凸凹や轍を乗り越えるとステアリングシャフトを通じて余計な振動がドライバーに伝わった。また、路面不整と傾斜によって、車がピッタリにまっすぐ走らないこともある。
次世代ステアリングのキーポイント
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上図は、次世代ステアリングシステムのポテンシャルを示す3つのキーポイントを示すイラストだ。(左)ドライバーの操作をタイヤへダイレクトに伝える。(中)ステアリングの位置は進行方向さえ向いていれば自由自在にレイアウトが可能。(右)たとえ凸凹道を走行中でも、無駄な入力を排除したフラットで快適なドライブを楽しめる。
一方、次世代ステアリングシステムでは、ステアリングラック(ステアリング操作をタイヤの動きに変換する装置)に配置した駆動モーターを使ってステアリングラック及びタイヤを動かしている。駆動モーターはセンサーの役目も果たし、路面状況やタイヤにかかっている力を検知する。システムは検知した情報から、運転に不要な細かな振動やショックの情報をカットし、必要な情報のみをステアリングに反力として伝える。結果、クリアな路面状況がドライバーに伝わることになる。
例えば、高速道路をまっすぐ走っているような場面で、ドライバーは路面からのガタゴトに進路を乱されないよう無意識のうちにステアリングを修正している。けれどもこの技術であれば、路面のガタゴトでタイヤが動かされないように駆動モーターが押さえこみ、路面からのガタゴトした入力や余計な振動、キックバックをステアリングには伝えない。したがって車が進路からずれることなくドライバーがステアリングを修正する頻度が減る。この結果、運転時の疲労は軽減され、快適さが増すことになる。
ドライバーの意思と、運転に必要な路面からの情報がダイレクトに行き交うことによって、従来の車より直感的に車をコントロールできることが、このシステムの魅力だ。

では、どのような仕組みでステアリング操作をタイヤに電気的に伝えるのだろうか。上図を見ていただくと、ステアリングの後ろに位置する小型モーターと一体化したセンサーが配置されているのがおわかりいただけるだろう。
ステアリングを操作した量、速度といった情報をこのセンサーが取得、コンピューターが実際にタイヤを切る量、速度を演算する。そして演算の結果をもとに、駆動モーターでタイヤの向きを変えるのだ。
逆に、タイヤが凸凹を乗り越えた時のショックなどは、タイヤにかかる力などの車の状態を伝える必要な情報とともに、駆動モーターと一体のセンサーで電流として検知する。そしてコンピューターが計算を行い、ドライバーが運転に必要な情報と不必要な情報に選別する。選別した情報からステアリング後ろの小型モーターを使ってステアリングの手ごたえを作り、ドライバーに伝える。
すなわちドライバーの操作はモーター+センサーへ伝わり、そこからコンピューターを経由してタイヤに届く。逆に路面の情報は、タイヤからモーター+センサーを経由して、ステアリングからドライバーの手のひらに伝わる。まるで、人間の脳から神経と、筋肉へと伝わる指令のようだ。

現在は、日産は安全面を考えてあえてステアリングシャフトを残した。通常では機械的に切り離されており使われないが、システム異常時には接続され、従来のステアリングシステムと同じように作動する仕組みだ。将来、ステアリングシャフトがなくなれば、ステアリングはどこにあってもいいことになり、クルマの形が自由になる。ステアリングの形も、現在の円環から変わるかもしれない。
次世代ステアリング技術は運転する楽しさや快適性はアップする。しかもそれだけでなく、車の形を根底から変えるほどのポテンシャルも秘めているのだ。