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まるでクルマが自分の手足

もし鳥のように左右の翼をまったく別々に羽ばたかすことができるなら、飛行機はもっと自由自在に飛ぶようになるだろう。実は、自動車の分野で同じような技術が進歩している。ただし自動車の場合は...

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2013/11/25

左右の翼を別々に動かす
アクロバット飛行などに登場する旋回性能の高い飛行機でも、1秒間に720度(つまり2回転)のロール運動(きりもみ回転)が限界だという。ところが、ある種のツバメは、1秒間に5000度以上のロール運動をこなす。
もし鳥のように左右の翼をまったく別々に羽ばたかすことができるなら、飛行機はもっと自由自在に飛ぶようになるだろう。
実は、自動車の分野で同じような技術が進歩している。ただし自動車の場合は左右の翼ではなく、左右の車輪を別々にコントロールする技術だ。左右の車輪を、独立して制御し、駆動力を与えることで、車はドライバーの操作に対してこれまで以上に素早く反応し、思い通りに走るようになる。
運転操作を素早く伝える
左右の車輪を別々にコントロールできるのは、インホイールモーターという技術による。インホイールモーターとはタイヤに組み込まれたモーターで、リチウムイオン電池が供給する電力で駆動する。つまりはEV(電気自動車)の一種である。現在、日産が開発を進めている車両は、4輪のうち後輪の左右2つがインホイールモーターとなるタイプだ。
左右の車輪を個別に制御するインホイールモーターを用いると、車がこれまで以上に思い通りに走るようになる理由はふたつある。
ひとつは、左右の車輪それぞれの駆動力を独立で増減できることだ。
たとえば、左に曲がるときであれば、ステアリングの操作量に応じて、左後輪の駆動力を減らして減速し、右後輪の駆動力を増やして増速する。すると前輪が発生するクルマの向きを変えようとする力に加え、左右輪の車輪速の差が生み出す力もクルマの向きを変える力として働く。前後のタイヤの性能をフルに使い、従来車よりも素早く、安定した姿勢で、ドライバーが思い描いた通りにカーブを曲がることができるのだ。
左右どちらかの車輪にブレーキをかけて車両の動きをコントロールするという技術は、以前から存在した。インホイールモーターの場合は車輪速を減速するだけでなく、増速することもできるので、より自由に車両の動きをコントロールすることができるのだ。
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左右の後輪の駆動力を、それぞれ独立して増やしたり減らしたりすることで、クルマの動きは今までよりはるかに自由になる。この技術は、日産が2013年の東京モーターショーで発表したコンセプトカー「ニッサン ブレイドグライダー」にも搭載されている。
インホイールモーターが思い通りに走るもうひとつの理由は、タイヤに素早く駆動力を伝えることができることである。そもそもモーターはエンジンよりも素早く駆動力を増減させることができるため、EVである日産リーフは鋭い加速を楽しむことができる。インホイールモーターはこうしたモーターの利点に加え、さらに素早く、タイヤに伝える駆動力を変化させることができる。ここで日産リーフの方式と、インホイールモーターを比較してみよう。
日産リーフの場合は、エンジン車のようにボンネットの下にモーターが収まっている。モーターの駆動力は、ドライブシャフトを介してタイヤに伝わるが、この時にドライブシャフトはねじれてしまう。一方インホイールモーターはタイヤの近傍にモーターを搭載できるためドライブシャフトを非常に短くでき、ねじれる量が極めて少ない。そのため、モーターの駆動力がすぐにタイヤの動きとして伝わる。したがって、より緻密でレスポンスのよい制御が可能となり、前述した左右独立の駆動力制御を最大限生かすことができる。結果、ドライバーは思い通りに走ることができるのだ。
クルマの新しい可能性
もちろん、どのような車にもインホイールモーターが最適というわけではない。日産リーフのように、これまでエンジンを搭載していた位置に通常のモーターを搭載することで、比較的安価にEVを作ることも最適解の一つといえる。
従来の高性能車は、よりパワーのあるエンジンが強力な動力性能を発揮するものだった。このようなタイプのクルマも非常に魅力的なのは間違いない。けれどもインホイールモーターに乗ると、また違ったクルマの魅力を知ることができる。人間の体にフィットするような、一体感である。
人間から離れていく高性能ではなく、人間に近づく高性能。そんな、新しい価値観をインホイールモーターは見せてくれる。