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鳥の目を手に入れる

アラウンドビューモニターは、クルマを真上から見ているような画像を提供する技術である。あたかも頭上にカメラを備えているかのような画像は、どのように生まれたのだろうか。

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2013/07/25

クルマの周囲が一目瞭然
みなさんは「ナスカの地上絵」をご存じだろう。南米・ペルーの東西20キロ、南北15キロのナスカ台地には、鳥などの動物や、台形や直線などの図形が描かれている。これらが描かれたのは紀元前400年〜紀元後600年の間だというから、今から約2000年前ということになる。
ただし「ナスカの地上絵」の存在は知っていても、この絵の全体像を実際に見た人は少ないはずだ。「ナスカの地上絵」は、地上で見ると幅10㎝から数mの線にしか見えないのだ。上空から見た時に、初めて絵だと認識される。つまり飛行機や人工衛星が生まれる前は、鳥だけが「ナスカの地上絵」を見ることができたということになる。
山形大学人文学部附属ナスカ研究所の坂井正人教授は、2004年から人工衛星を使って地上絵を探している。空からの視点を持つことで、坂井教授は100点以上の新しい地上絵を発見したという。
実は、鳥の視点を手に入れる自動車技術がある。2007年に世界で初めて日産エルグランドに搭載された、アラウンドビューモニターである。
アラウンドビューモニターとは、車両に備えたカメラが撮った画像を処理することで、あたかも真上から見ているかのような映像を提供する技術である。ドライバーはクルマの周囲の障害物や人の存在を、鳥が地上絵を見るように確認することができるのだ。
鳥の目を手に入れる方法
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まず前後左右に設置した4つのカメラが、それぞれの位置の斜め上から映像を撮影する。次に、この映像を視点変換することで、上から見た映像とする。4つの上からの映像を合成することで、真上から見ているような絵が完成する。
あらゆる車種に搭載可能
では、どのようにして「クルマに鳥の目を与える」ことが可能になったのだろうか。
クルマには、その構造上どうしてもドライバーからは見えない死角ができてしまう。そこで日産は1990年代から、後退する時に後方の状況をカメラで映すバックビューモニターなど、カメラを使った技術に取り組んできた。アラウンドビューモニターは、そのカメラを利用した技術のひとつである。
アラウンドビューモニターの基本となる技術は、斜め上から撮った広角カメラの画像を、真上からの俯瞰画像に変換する「視点変換」である。視点変換を理解するために、ひとつ例をあげたい。本を読む時に、真上からでなく斜め上から読むとする。この時、文字の形は少し変形するけれど、何が書いてあるかはわかるはずだ。そして真上から読むと、文字の形も正確に理解できる。視点変換とは、「斜め上から」→「真上から」という視点の移動を、コンピュータ処理で行う技術である。
車両の周囲を上から見たようなアラウンドビューモニターの画像を作るためには、まず車両に4つの超広角カメラを取り付ける必要がある。そうすることで、車両周囲の映像をほとんど捉えることができる。※1
次に、4つのカメラの映像をそれぞれ視点変換し、組み合わせる。すると、車両の周囲の俯瞰映像が出来上がる。※2
この時、周囲を写すカメラは自車両を真上から写すことはできない。そこで、自車両の画像はCGをはめ込み、アラウンドビューモニターの映像が完成する。
車両の周囲の状況を真上からの視点で見ることで、駐車スペースの白線や周囲の障害物との位置関係が理解しやすくなるという利点がある。これは、運転に不慣れなドライバーだけでなく、運転に慣れたドライバーにとっても便利な映像である。
この技術は当初、大型ミニバンであるエルグランドに搭載されたが、現在ではコンパクトカーのノートにも採用されている。また、6月にデビューした軽自動車のデイズにも搭載された。
今後は、さまざまな車種にアラウンドビューモニターを装着できるようになり、多くの方が鳥の目を手に入れることになるだろう。そしてそれだけでなく、クルマの周囲を確認できるアラウンドビューモニターの機能に、動く物体を検知して、ディスプレイ表示とブザーで知らせる移動物検知機能を追加し、すでに搭載されていることをはじめ、次世代技術を担うテクノロジーの1つとしても、アラウンドビューモニターは大きな可能性を秘めている。


※1.モニターにて確認できる範囲には限界があり、カメラ位置より高い物体は表示されません。
※2.車両上方から見下ろしたような映像にはつなぎ目があり、物や車が不連続になると共に高さのある物体は表示されないことがあります。また、物や車が倒れ込み、実際の位置より遠くに表示されることがあります。