
社長兼最高経営責任者(CEO)
カルロス ゴーン
世界経済とグローバル自動車産業にとって、2009年度は極めて厳しい年となりました。今回のように、自動車産業が、金融危機、世界的な経済不況、サプライヤーの経営悪化、そして不安定な為替レートの脅威に同時に晒されたことは、歴史上初めてと言ってよいでしょう。
この危機に際し、日産はリカバリー・プランに基づき、業績回復に集中的に取り組んできました。当社は危機対応の体制を依然として継続しているものの、完全回復に向けて、順調に活動を進めています。2009年度の業績は、2008年度の赤字から、黒字に転じました。また、自動車事業のフリーキャッシュフローはプラスとなり、バランス・シートが強化されました。その結果、自動車事業実質有利子負債は飛躍的に減少し、前年度から大きく改善しました。
日産は、金融危機と景気後退に対処しつつも、重点戦略を犠牲にすることはありません。たとえば、ゼロ・エミッション社会の実現に向けた投資活動の手も緩めてはいません。今年の「日産リーフ」の発売をもって、ルノー・日産アライアンスは世界で初めて、手頃な量販電気自動車を販売することになります。当アライアンスは年間50万基のバッテリーの生産能力を目指して投資を行っていますが、これほど大規模な台数のバッテリーや電気自動車を生産するメーカーは他にはありません。そして、市場では電気自動車を受け入れる準備が整っています。「日産リーフ」への反響は大きく、1万を超えるお客さまの予約希望者登録をいただきました。米国および日本では、すでに2010年度の生産能力を上回るご予約をいただいています。
電気自動車に加え、日産は手頃なモビリティにも投資を行っています。現在、エントリー・セグメントは、グローバル全体需要6,400万台の25%を占めており、今後さらに拡大する見込みです。当社は、最大の価値を、手頃な価格でご提案していきますが、最新のVプラットフォームを採用するグローバルコンパクトカー・ラインアップはその第一弾です。同プラットフォームの展開が本格化した暁には、年間100万台の販売台数に達する見込みです。また、これら小型車に搭載される新型エンジンで、世界中のお客さまに燃費の新たな基準をご提供します。
さらに、新興国では、具体的な取り組みを進めています。中国では、2012年に年間100万台以上の生産体制を確保し、その後もさらに市場の成長に合わせて拡張していきます。インド チェンナイでは、アライアンス工場が操業開始しました。現在は20万台の生産能力ですが、本格稼働時には40万台に拡大し、インドの国内市場で販売するとともに、欧州、アフリカ、中東等、100ヵ国以上に輸出も行う予定です。またアショック・レイランド社との提携のもと、小型商用車の生産を開始し、バジャージ社とはアライアンスの超低コスト車の開発を進めています。ブラジルでは、商品ラインアップの拡充と販売網の拡大で、中期的に市場占有率を伸ばし、同市場におけるルノー・日産アライアンスのプレゼンス強化に寄与します。ロシアでも、複数の新車投入で、市場占有率の向上を図ると同時に、パートナー企業のルノーとアフトヴァズ社のプラットフォームと生産拠点を共用し、当社の生産能力の適正化を進めます。中東においては、販売網強化を通じて攻勢をかけていきます。また、インドネシアをはじめとするBRICs諸国に続く新興国の対応に備えて、準備を進めています。
2010年度はある程度の成長を見込みつつも、厳しい一年を想定しています。グローバル景気は回復しつつあるものの、未だ健全な状態とは言えません。日本と同様に、大部分の西洋諸国の消費傾向は、消費者心理の低迷を物語っています。また、原材料価格も、景気回復とともに高騰していくでしょう。しかしながら、最悪の時期は去りました。今年度、日産は完全に危機を脱し、2011年度には新たな中期経営計画を開始する予定です。
2010年度は前年に対し、売上高と利益の増大を見込んでいます。引き続きバランス・シートの改善に取り組み、プラスのフリーキャッシュフローを目指します。2010年度末には、自動車事業実質有利子負債をゼロにする見込みです。
当社の戦略的な取り組みは、日産がグローバル企業として、持続可能な価値創造を果たすという長期的なビジョンだけでなく、株主価値を最大化するという約束の証でもあります。現在の経営状況と、今年のリスクおよび好機を鑑みたうえで、2010年度は、中間期に5円、期末に5円と、年間で10円の復配を実施する予定です。詳しい配当政策については、次期中期経営計画を発表する時点でご説明いたします。
日産の戦略の基礎は、発足から11年目になるルノー・日産アライアンスに準拠します。アライアンスは今後も引き続き、価値創造と業績改善に力を発揮するでしょう。2009年度はアライアンス活動を専門とするルノー・日産B.V.のサポートのもと、コストと設備投資の低減および回避を中心に、アライアンス全体で大きなシナジー効果を享受しました。2010年には、売上の増大とコスト・設備投資の低減・回避等の領域で、新たなシナジー効果を見込んでいます。意思決定の早い段階で、アライアンス視点を入れることで、両社の将来計画により多くのシナジーの機会を織り込みます。
ダイムラーとの戦略的な協力関係においても、シナジー効果を追求していきます。ダイムラーとは、同社の4気筒ガソリン/ディーゼル・エンジンおよび6気筒ディーゼル・エンジンをインフィニティに採用する等、パワートレインの共用を進める予定です。また、小型車、小型商用車、電気自動車、バッテリーを含め、双方にとって利益となる領域で協業を進めます。
ルノー・日産アライアンスは、自動車業界で有効なビジネス・モデルを確立しました。大規模且つ複雑な組織体系でも、各社のアイデンティティと自主性を維持しつつ、規模を活かして協業することに成功しています。ルノー、そして新たに加わったダイムラーとの協力が、日産の本格回復に寄与し、今後の成長を支えるでしょう。
日産は正しい方向に進んでおり、今後も明確な優先順位に基づいて、積極的に取り組みを進めています。1999年の日産リバイバルの経験および2009年のリカバリー活動を教訓とし、今後もグローバル事業の運営に活かしていきます。日産は、今回の危機の経験を経て、競争力を向上し、より強くなります。私どもを突き動かすのは、価値を創造しお客さまにモビリティの楽しみをご提供することへの情熱です。これは、成熟市場においても新興市場においても、また、今現在においても将来の持続可能なモビリティの時代においても、変わることはありません。今後どのような状況にあっても、つねに全力を尽くすことを、ステークホルダーの皆さまにお約束いたします。

ビジョン
日産:人々の生活を豊かに
ミッション
私たち日産は、独自性に溢れ、革新的なクルマやサービスを創造し、 その目に見える優れた価値を、全てのステークホルダーに提供します。それらはルノーとの提携のもとに行っていきます。
