(サステナビリティレポート2007のCEOメッセージから抜粋しました)

カルロス ゴーン
社長兼最高経営責任者(CEO)
日産自動車株式会社
持続可能性という点から、自動車メーカーが社会からもっとも期待されているのは、明らかに環境への配慮です。クルマ中心の現代社会がどこまで永らえることができるのか、という懸念は世界中で高まっています。
日産はこうした動きを心から歓迎しています。世界中で数十億人の人びとが問題意識を持ち、対応を求めていることこそ、環境問題の改善に向けた究極の原動力となるからです。
クルマの世界というのは極めて民主的な性格を持っています。国を問わず、消費者一人ひとりのクルマ選びが票につながり、人気のあるクルマには瞬く間に票が集まります。それゆえに自動車メーカーは、消費者の嗜好のわずかな変化をも感じ取り、それに対応しようと努力するのです。
私たちを動かしているのは消費者からの要求です。つい最近までは、環境性能を求める声は決して大きくありませんでした。しかし、人びとの意識の向上にともなって環境対応がクルマ選びを左右するようになれば、急速な進歩を遂げるでしょう。
技術力を誇る日産にとって、消費者の意識が環境保護に傾いていることは大変喜ばしいことです。私たちはいわゆる販売促進のためのインセンティブ(優遇策)ではなく、技術革新で勝負をしたいと考えているからです。
環境性能に対する消費者の関心が一貫して続けば、1960年代のいわゆる「宇宙開発競争」のごとく競争に火がつき、メーカーは環境対策に努力と情熱を傾け、経営資源を惜しみなく投じることになるでしょう。日産はこのレースに臨む準備ができています。
持続可能性を追求するうえで利益は欠かせません。利益なくして大規模な研究開発活動をまかなうことはできないからです。経営難に陥っていた8年前にはなかったその鍵が、今の日産にはあります。
日産の研究開発費は1999年以降倍増しており、2007年度には5,000億円近くに達します。アライアンス・パートナーであるルノーと協力して研究開発を進められることも日産の強みです。
しかし、投資額の多さがすべてではありません。研究開発の効率化についても飛躍的に向上させています。さらに、すべての事業分野に二酸化炭素(CO2)の排出基準および削減目標を導入しました。
以上のように体制を整えたうえで、2006年12月には「ニッサン・グリーンプログラム 2010」という意欲的な環境計画を始動させました。これにより、環境対応でトップクラスの企業になることを目指しています。
本プログラムは、環境面で有望視されるさまざまな技術の可能性を追求しています。現時点では、すべての問題を解決する万能薬のような技術はまだ見つかっていないからです。そして何より、主流となる技術を決めるのは技術者ではありません。環境対策を前進させるのが消費者であるように、その方向性を決めるのも消費者なのです。
すでに、世界の市場はそれぞれ異なる方向へと進んでいます。日本市場がひたすら小型車への移行を図る一方、ブラジルはエタノールに力を入れています。欧州市場では、手ごろなコストで具体的な成果を実現できる高性能ディーゼルが人気を博しており、米国市場ではハイブリッド車がメディアの注目を集め、ニッチ市場として拡大しています。
自動車メーカーが競って次世代技術を開発することで、いずれ劇的な変化がもたらされるでしょう。
ただし、それには時間がかかります。したがって企業は目先の機会にも目を向けなければなりません。
たとえば、先進国市場で使われている古いクルマを一掃し、新興市場には環境性能の優れた新型車を投入することで、環境への取り組みは大きく前進します。いずれの場合も、いかに手ごろな価格で環境対応を実現できるかが、成功の鍵となるでしょう。
持続可能性が事業のあらゆる面において日産のビジネスの理にかなっていることは明らかです。従来と同じ、あるいはさらに少ない資源で、より大きな効果を生み出すことは、無駄を廃するだけでなく、新たな価値を創出することになるのです。環境問題への対応は日産の長期的な成長に大きく寄与することでしょう。
あらゆる事業分野で持続可能な価値を創造することが日産の目標です。ぜひ、今後の改善に向けたご意見やご感想をお寄せください。


