燃料電池車(FCV)への期待 |
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燃料電池車(FCV)開発の特徴は、目標がとても明確だということです。21世紀を持続的成長が可能な時代とするためのトランスポーテーションの要件として、 を満たすものが求められています。FCVが究極のエコカーと言われるゆえんは、従来の技術がこれらの要求に関して、状況を緩和するか、解決までの猶予期間を延ばすことしかできなかったのに対し、問題を根本的に解決する可能性を有しているからです。 |
エネルギー構造の変革 |
FCVは、水素を燃料として走ります。水素は、ガスの形では自然界にほとんど存在しませんが、元素としては水や炭化水素の形で多くの物質に含まれています。それが水素の製造方法を多様化し、エネルギー源を石油以外に分散できるのではないかと期待されています。長期的に見て、水素や電気を太陽、風力、バイオマスなどの再生可能なエネルギー源から製造できれば、二酸化炭素を発生させない交通体系が可能になるのです。
エネルギー源のシフトは一朝一夕には出来ませんが、過去の歴史を見ても、20〜30年の周期で計画的にエネルギー源のシフトを行っています。
木材にしても石炭にしてもエネルギー源として全く使われなくなることはありませんが、主役交代という形で、エネルギー源としての位置付けは変化しています。現在は、エネルギー源として石油が圧倒的に重要な役割を果たしていますが、将来の環境負荷の増大を考えると、再生可能なエネルギー源の役割を着実に根づかせていくことが期待されています。
ある本に、こんな文章がありました。「石器時代が終わったのは、石がなくなったからではない。石油時代の終焉も、石油の枯渇によってもたらされるものではない。」石油会社の経営者の言葉です。FCVは、エネルギー構造変革のきっかけになりうる技術です。と同時に、社会全体としてエネルギー構造を変革しようという大きな決意なしには実現しない技術である、とも言えるのです。
開発チーム |
FCVの本格的な開発は世界的に歴史が新しく、長いところでもまだ十数年という、とても若い技術です。日産がFCVの開発を本格的に開始したのは2001年から。世界の主要な自動車メーカーの中では、遅れてのスタートだったと言わざるを得ません。当時の社内には、FCV開発の経験者はほとんど存在しませんでした。
開発チームも集まった当初は全員が素人で、その草分けのメンバーを核として急速に大きくなっています。2001年、2002年、2003年と毎年新たなプロトタイプを開発してきたことにより、チームとして急速に成長しつつあります。
FCV開発チームの中には、自分で志願してきた人が数多くいます。その理由は、自動車の環境問題を自分の手で解決したかった、というものがほとんど。若いエンジニアがこんなことを言っていました。
「FCVの開発部署に異動してよかったと思うのは、お父さんが会社でどんな仕事をしているかを、子どもに話すのがとても楽しい。」
FCVの技術が大きく花開くのは、子どもたちの時代かもしれません。それでも、将来世代のために何かを残そうと課題に取り組むのは、とても心弾むことなのです。
広く使っていただける技術を、多くのクルマに採用 |
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自動車メーカーにとってCO2削減は、技術開発における最も重要な課題です。日産は、燃料電池車などクリーンエネルギー車の開発を進めると同時に、現在広く社会に提供しているクルマの燃費向上に力を注いでいます。 |
エンジンの燃焼効率を上げるために |
エンジン内では、部品どうしによる摩擦などで、本来発揮できるエネルギーの多くを損失しています。この損失を減らすことがエンジンの効率を向上させ、ひいては燃費向上につながるのです。そこで私たちは、エンジン内にある部品間の摩擦を削減する技術をいくつも積み上げ、摩擦抵抗を従来のものに比べて約30%低減することに成功しました。この新型エンジンは「ティーダ」、「ラフェスタ」にすでに搭載。今後、グローバルで幅広い車種に搭載していく予定です。
商品化のためには、エンジン設計技術のレベルアップはもとより、それらを量産するための生産現場の技術レベルアップも不可欠です。例えば、部品を鏡面のように磨き上げる匠のような技術や、それらを量産するための生産システムが重要になってくるのです。
一筋縄ではいかなかった、トランスミッションの効率向上 |
トランスミッションでのエネルギー損失。ここにもまだ改善の余地があります。日本ではオートマチック車(AT車)が95%を占めていますが、AT車は変速を段階的に行うため、常に最適な運転条件でエンジンを働かせることはできません。こうした課題を解決するための技術の一つが、無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)です。トランスミッションを連続的に変速させることにより、より効率の良い運転条件でエンジンを働かせることができるため、燃費性能と運転性の向上を両立できるのがCVTの良さです。
日産は1992年、1.0LクラスのマーチにCVTを採用し、2003年には3.5Lクラスの「ムラーノ」、「ティアナ」にCVTを搭載しました。これによって、小型乗用車から大型乗用車まで幅広くCVTラインナップを提供できる世界で唯一の自動車メーカーとなっています。
しかし、その道のりは平坦ではありませんでした。CVTは金属のベルトを用いて連続的に変速していくのですが、その変速は油圧によって調整されています。しかし、当時の技術では、高トルクCVTに対応できる高油圧ポンプがまだなく、この点も含めたいくつもの課題から、排気量の小さいクルマにしか適用できないと言われていたのです。実際、あまりの難しさに開発途中で部品メーカーが開発を辞退してしまうほどでした。当時の状況を、常務の薄葉は語ります。
「3.5Lクラス用のCVTは、社内ですら本当にできるのかという半信半疑の声がありました。しかし、日産と関連子会社ジヤトコの多くの技術者たちが苦難にぶつかりながらも、この技術には絶対将来性がある、きっと成功すると信じ、取り組み続けた。CVTはその努力の賜物です。」
新型エンジンや車両改善との組み合わせにより、「ティーダ」で20%、「ラフェスタ」で37%、従来よりも実用燃費※を改善することに成功。そして、今後3年間で日産は、CVT搭載車両のグローバルでの販売台数を、現在の4倍に当たる100万台に拡大していきます。低燃費のCVT車を100万台普及させることは、ハイブリッド車20万台分を提供するのと同等のCO2排出削減効果があると考えるからです。
複数の技術を組み合わせ、商品として世に送り出していく |
このように一つひとつの技術は地味かもしれませんが、それをクルマに搭載し商品として世に出すまで、決して妥協せずに取り組んでいます。
「難しいと言われる技術を開発している途中は、ひたすら苦しい。でも、努力を続けて困難を乗り越えたときの達成感――。これこそ技術者の醍醐味でしょう。街中で自分たちが開発に関わったクルマを目にすると、何とも言えない愛着が湧いてきますね」と、薄葉は語ります。
環境に貢献し、かつ広くお客様に使っていただける技術開発への挑戦は今日も続いています。
| ※ | 実用燃費:実際の走行状況調査をもとに、渋滞や市街地、高速道路など、種種の走行状況を組み合わせた社内基準による平均的な実用燃費 |



