エネルギー損失を究極まで削減して、燃費を30%向上

日産では、現在広く普及しているエンジンの効率を大幅に向上させていくことが真に実効的なCO2低減と考えています。そのため、ガソリンエンジンのエネルギー効率を2015年までに30%向上することを目標として、技術開発を進めています。
エネルギー効率を大幅に向上させるためには、現在のガソリン車が抱えているエネルギー損失をいかに低減するかが大きな課題となります。
現在のガソリンエンジンは、稼動に必要なエネルギーを100とした場合、エンジンが動く様々な過程の中で損失が生じており、実際には20の出力しかできていないのが現状です。このエネルギー損失を究極まで減らし、70のエネルギーで現在と同じ20の出力を実現していきます。
燃費向上のための大きな3つのアプローチ

日産では、このエンジンのエネルギー損失を究極まで減らしていくために、①効率よく燃やす②吸気・排気の抵抗を減らす③軽やかに回転させるという3つの大きなアプローチで、総合的な技術開発を進めています。
①効率よく燃やす
低速走行時と高速走行時では、エンジンの回転数が異なり、燃焼に最適な空気の量やその圧縮比も違ってきます。走行状況に合わせた空気制御をはじめ、エネルギーをより効率よく燃焼させる技術を開発しています。
②吸気・排気の抵抗を減らす
エンジン内に空気を取り入れる吸気時、そして燃焼後の排出ガスを排出する際、エンジン内では空気やガスの抵抗によって、損失が生じてきます。この抵抗を徹底的に削減する技術を開発しています。
③軽やかに回転させる
エンジンはさまざまな部品によって構成されており、部品どうしがすり合わさる時に生じるフリクション(摩擦)によってエネルギー損失が発生します。このフリクションを究極まで低減させる技術を開発しています。
この3つのアプローチに従い、主に下記の技術を導入することで燃費を向上させていきます。
【主要技術の詳細】
①効率よく燃やす技術
CVTC(Continuously Variable Timing Control:連続可変バルブタイミングコントロール)
高速走行・低速走行によって変るエンジンの回転数に応じて、最適な吸気と排気を行うバルブ開閉の制御システム。吸気あるいは排気のタイミングを最適ににコントロールすることで、常に走行状況に応じた最適な燃焼ができ、これによって燃費が向上します。
DIG(Direct Ignition Gasoline engine:直噴着火エンジン)
エンジン内の圧縮比が上がると燃焼効率がよくなります。しかし、圧縮比が上がるほどに空気の温度も上がり、ノッキング※が起きやすくなります。DIGは、従来の燃料を燃焼室の外で噴射するエンジンとは異なり、燃料室内に直接噴射するエンジン。直接噴射された燃料が気化する際に空気の温度を奪うので、燃料室内の温度を下げることができます。これによって、ノッキングが発生しにくい状態で、圧縮比をあげることができるのです。
- ※ノッキング:高温、高圧時に燃料が正常なタイミングで燃焼せず、異常な燃焼状態になること。音や振動の発生要因になります。
HCCI(Homogeneous-Charge Compression Ignition:予混合圧縮着火)
ガソリンをディーゼルエンジンのように自己着火させて、CO2削減とクリーンな排気を両立させる究極の燃焼方式といわれています。安定した燃焼領域が限られており、この領域を広げることが実用化に向けての課題となっています。
VCR(Variable Compression Ratio:可変圧縮比)
新開発のピストン・クランク機構により、従来のエンジンでは固定であったエンジンの圧縮比を可変にすることができるシステム。高速運転時と低速運転時、それぞれの回転速度に合せて圧縮比を最適に変更できるので、常に最適な燃焼となり、出力や、燃費の向上が実現できます。
②吸気・排気の抵抗を減らす技術
大量EGR(Exhaust Gas Recirculation system:排気ガス再循環)
排気ガスの一部を吸気に再利用することにより、インテークマニホールド内の真空領域を減らし、この抵抗を抑えます。これによって小さなエネルギーでエンジンを回転させることができるようになります。また、排気ガスを再利用することで、NOxの排出量を減少させることもできます。最新のエンジンでは、排気ガスをより大量に吸入することが可能となり、より少ない燃料消費で、確実なパワーを発生させています。
VVEL(Variable Valve Event & Life System:バルブ作動角・リフト量可変システム)
吸入空気量を燃焼室の吸気バルブで直接コントロールするシステム。従来のエンジンでは、低出力時、エンジンに送る空気量を調整するスロットルバルブを絞ることで大きな吸気抵抗が発生していましたが、VVELではスロットルバブルを開いているので、抵抗が小さくなり、その結果燃費もよくなります。
ノンスロットル&リーン燃焼
どちらもエンジンに空気を送り込むときに発生する、スロットルの絞りによる吸気抵抗を削減するアプローチです。ノンスロットルは、スロットルそのものを無くすことで、吸気抵抗を削減。リーン燃焼は、スロットルを絞らないことで吸気抵抗を削減します。
③軽やかに回転させる技術
鏡面加工
エンジンの軸部分を鏡面レベルまで研磨することで、回転時の摩擦を徹底的に削減します。
真円ボア加工
一般的なエンジンでは、シリンダーヘッド取り付け時のボルト軸力によって、シリンダーボアは取り付け後に変形してしまいます。この変形分を考慮し、取り付けた状態で真円となるようにしたのが真円ボア加工。これにより、シリンダーボアと中のピストンリングの接触が小さくなり、摩擦が小さくなります。
水素フリーDLC
エンジンオイルとの結合性を向上させることで、摩擦抵抗を減らす特殊なコーティング。
この水素フリーDLCは、現在一部の部品にのみに採用していますが、今後採用領域を拡大し、よりフリクションの低減をはかっていきます。
次世代ターボ
例えば2リッターエンジンと同等の出力を、ターボをつけると小排気量エンジンで発生することが可能になります。小さなエンジンでは、動く部品も小さくでき、結果として摩擦のロスを低減します。また従来のターボに比べてよりタービンを効率よく回転させるツインスクロールシステムなど、2010年の実用化を目指して開発が進められています。
