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CEOメッセージ


日産自動車株式会社
社長兼最高経営責任者
カルロスゴーン

日産にとって「サステナビリティ(持続可能性)」とは何を意味するのでしょうか。

昨今話題となっているこの言葉は、日産にとってさまざまな意味合いを持っています。持続可能性とはまず、私たちのあらゆる活動がすべてのステークホルダーに対してプラスの効果を生み出すことでなくてはなりません。そのためには、すべての取り組みにあたってバランスをとることが必要です。たとえば、短期的な課題と長期的な課題のバランス、お客さまのニーズと会社のニーズのバランス、社員の仕事と私生活のバランス、環境への配慮と人のモビリティ(移動すること)とのバランス、などが挙げられます。
つまり日産は、人と社会と自然環境がバランスよく、互いに持続可能なものとなるよう積極的に貢献することによって、自らの事業の持続可能性を確かなものにできると考えています。20万人規模の社員を抱え、数え切れないほどの商品を扱う私たちのような企業にとって、持続可能なバランスを見出し、それを維持することは、複雑かつ終わることのない課題です。しかしひとつだけ、決して欠かすことのできない要素があります。それは、いかなる状況においても現実を把握し、分析することです。
きれいに整えた庭に雑草が生えたらすぐ分かるように、職場において怠慢や不正、不公平が生じた場合に、すぐにそれを察知できる環境を整えておかなければなりません。雑草がはびこって庭木の成長を妨げる前に、根絶やしにする必要があるからです。それこそが、このサステナビリティレポートの狙いです。
本報告書は、日産の活動を社外にアピールする試みではありません。自らの活動に対する評価基準を年々厳しくし、オープンにしていく取り組みの一環なのです。
競争の激しい自動車業界で生き残るためには、事業のあらゆる側面においてつねに実績を評価し、向上に努めなければなりません。したがって、生産効率であれ、持続可能性であれ、そのプロセスに作り話の入り込む余地などないのです。

今年のレポートは前年よりもさらに厳密な評価基準を採用しました。「CSR(企業の社会的責任)スコアカード」には、「誠実」「経済的貢献」「ブランド」「品質」「環境」「社員」「安全」「バリューチェーン」そして「社会貢献」という、日産が定めたCSRの重点9分野における進捗を測るための指標が詳しく記されています。
日産の現状を明らかにすることで、お客さま、株主、社員、そして社会というすべてのステークホルダーの皆さまと、より具体的な議論ができるようになるでしょう。そうした対話を通して、私たちは皆さまの期待値に照らして実績を評価し、いかにして現状を改善すべきかを知ることができるのです。

このように、透明性はあらゆる側面で持続可能性の鍵を握っています。コーポレートガバナンス(企業統治)においては、堅固な土台を築く要素となります。透明な情報開示によって、投資家すなわち株主の方々には、日産が皆さまの資産価値の保持、向上に絶えず努めていることをご理解いただけるでしょう。
事業のうえでもあらゆる面で透明性を浸透させていかなければなりません。このことは日産だけにとどまらず、サプライチェーン全体における課題です。企業は今日、直接的な取引先のみならず、その取引先の先の先におけるガバナンスと倫理についても、最高水準を維持する責任を求められています。
このように、ますます高まるステークホルダーの期待に応えるべく、日産はサステナビリティレポートのベースとなる評価プロセスを、年々強化させているのです。

しかし、持続可能性という点から、自動車メーカーが社会からもっとも期待されているのは、明らかに環境への配慮です。クルマ中心の現代社会がどこまで永らえることができるのか、という懸念は世界中で高まっています。
日産はこうした動きを心から歓迎しています。世界中で数十億人の人びとが問題意識を持ち、対応を求めていることこそ、環境問題の改善に向けた究極の原動力となるからです。
クルマの世界というのは極めて民主的な性格を持っています。国を問わず、消費者一人ひとりのクルマ選びが票につながり、人気のあるクルマには瞬く間に票が集まります。それゆえに自動車メーカーは、消費者の嗜好のわずかな変化をも感じ取り、それに対応しようと努力するのです。
私たちを動かしているのは消費者からの要求です。つい最近までは、環境性能を求める声は決して大きくありませんでした。しかし、人びとの意識の向上にともなって環境対応がクルマ選びを左右するようになれば、急速な進歩を遂げるでしょう。

技術力を誇る日産にとって、消費者の意識が環境保護に傾いていることはたいへん喜ばしいことです。
私たちはいわゆる販売促進のためのインセンティブ(優遇策)ではなく、技術革新で勝負をしたいと考えているからです。
環境性能に対する消費者の関心が一貫して続けば、1960年代の「宇宙開発競争」のごとく競争に火がつき、メーカーは環境対策に努力と情熱を傾け、経営資源を惜しみなく投じることになるでしょう。日産はこのレースに臨む準備ができています。
持続可能性を追求するうえで利益は欠かせません。利益なくして大規模な研究開発活動をまかなうことはできないからです。経営難に陥っていた8年前にはなかったその鍵が、今の日産にはあります。
日産の研究開発費は1999年以降倍増しており、2007年度には5,000億円近くに達します。アライアンス・パートナーであるルノーと協力して研究開発を進められることも日産の強みです。
しかし、投資額の多さがすべてではありません。研究開発の効率化についても飛躍的に向上させています。さらに、すべての事業分野に二酸化炭素(CO2)の排出基準および削減目標を導入しました。

以上のように体制を整えたうえで、2006年12月には「ニッサン・グリーンプログラム2010」という意欲的な環境計画を始動させました。これにより、環境対応でトップクラスの企業になることを目指しています。
本プログラムは、環境面で有望視されるさまざまな技術の可能性を追求しています。現時点では、すべての問題を解決する万能薬のような技術はまだ見つかっていないからです。そして何より、主流となる技術を決めるのは技術者ではありません。環境対策を前進させるのが消費者であるように、その方向性を決めるのも消費者なのです。
すでに、世界の市場はそれぞれ異なる方向へと進んでいます。日本市場がひたすら小型車への移行を図る一方、ブラジルはエタノールに力を入れています。欧州市場では、手ごろなコストで具体的な成果を実現できる高性能ディーゼルが人気を博しており、米国市場ではハイブリッド車がメディアの注目を集め、ニッチ市場として拡大しています。
自動車メーカーが競って次世代技術を開発することで、いずれ劇的な変化がもたらされるでしょう。
ただし、それには時間がかかります。したがって企業は目先の機会にも目を向けなければなりません。
たとえば、先進国市場で使われている古いクルマを一掃し、新興市場には環境性能の優れた新型車を投入することで、環境への取り組みは大きく前進します。いずれの場合も、いかに手ごろな価格で環境対応を実現できるかが、成功の鍵となるでしょう。

本報告書をお読みいただけばお分かりのように、持続可能性が事業のあらゆる面において日産のビジネスの理にかなっていることは明らかです。従来と同じ、あるいはさらに少ない資源で、より大きな効果を生み出すことは、無駄を廃するだけでなく、新たな価値を創出することになるのです。環境問題への対応は日産の長期的な成長に大きく寄与することでしょう。
本報告書が日産のCSR活動の進捗を測る良い指標となり、ステークホルダーの皆さまとの対話の基礎となることを願っています。そうした対話を通じて新たな手法を学び、持続可能性をさらに確かなものとするためです。
あらゆる事業分野で持続可能な価値を創造することが日産の目標です。ぜひ、今後の改善に向けたご意見やご感想をお寄せください。

Carlos Ghosn

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