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日産 童話と絵本のグランプリ
第31回(2014年度)入賞作品
第31回絵本の部・大賞 (※掲載している作品は受賞時点のものです。出版作品とは異なる場合があります。)

「せかいのはての むこうがわ」
作・絵/たなか やすひろ



ていぼうぞいの道は 大きな工場のうらで いきどまりに なっていて、ぼくはそのばしょを「せかいのはて」ってよんでいた。
もちろん、ほんとうに そこで せかいが おしまいに なってるわけじゃ ないのは わかってるよ。 でも、ぼくには そんな かんじが したんだ…。

「せかいのはて」は、いつもの あそびばとは すこしはなれた ばしょに  あるから、ここに あそびにくるときは いつも ぼくひとりだった。 ここは、しんゆうの ハヤシくんや ゲンちゃんにも まだ おしえていない、ぼくだけの ひみつの場所なんだ。


学校で なにか イヤなことがあったとき、ぼくはここで、あたまをカラッポにして、なにか たのしいことを そうぞうする。そうすると 気もちが おちついて、とてもスッキリとした きぶんに なるんだよ。

そうぞうの中で、いつも ぼくは この ていぼうのむこうに ながれている
川をさかのぼって どこまでも どこまでも すすんでゆく…

そしてそこには いままで 見たこともないけしきが ひろがっているんだ…。


さんすうのテストで いい点がとれなかった日、ぼくは ここにきた。

そうして、きょうりゅうのすむ ジャングルを たんけんした。


かけっこで ビリになった日も ぼくは ここにきた。

そうして、ゲームに でてくるみたいな、がいこくの お城の まわりを
馬にのってさんぽした。


ろうかで はしゃいで 先生に おこられた日も ぼくは ここに来た。
でも、その日は いつもと ちょっとようすが ちがっていた。

だれかの いたずらかな? かなあみに かかっていた ぬのが やぶかれていて、いきどまりの むこうがわが 見えたんだ。

ほんの なん十メートルか先、草はらの むこうには これまでと おなじような道が また つづいていた。

いままで かんがえても みなかったけど ちょっと遠まわりして、工場の はんたいがわに 出れば この道を 川上にむかって どこまでも たんけんすることが できるんだ!

でも、じっさいに やってみようとは しなかった…。


なぜって、そんなことしたら、そうぞうする たのしみが なくなっちゃうような きがしたから…。

そうして、ぼくは 未来の のりもので うちゅう船の基地に むかったんだ。

ぼくは だんだん 「せかいのはて」であそぶことが おおくなった。


今日も学校でイヤなことがあった。ハヤシくんと ゲンちゃんがケンカしたんだ。ケンカっていっても、ただの口げんかだけどね…。

ふたりは どっちが じてんしゃで とおくまで行けるか、朝からずっと いいあってた。 ゆうとうせいのハヤシくんと ガキ大将のゲンちゃん…正反対のふたりだけど、ふたりとも じてんしゃの 遠のりが大すきで、そのことになると どっちも 一歩も ゆずらないんだ…。

それはいいんだけど、そうやってケンカしてるとき、 ふたりとも なんだか とっても たのしそうなんだよ。

     ぼくは それが おもしろくなかった…。


つぎの日は 学校が やすみだったから ぼくは いちにちじゅう 「せかいのはて」に いることが できた。でも、ぜんぜん きもちが はれないんだ。なにか たのしいことを 考えようとしても あたまに うかぶのはきのうの ふたりの けんかのこと ばっかり…。

「ぼくだって ひみつの場所を しってるんだよ!」そう言って はなしに 入っていけば よかったのかな?だけど「せかいのはて」は 学校からそんなに 遠くにあるわけでもないし、ふたりから見れば、あそこは ただの
いきどまり なんだよね…。

でも、 気がついたんだ。


ふたりのはなしに 入りたいなら、ふたりと おんなじことを
すれば いいんじゃないか!

ちょっとだけ まよったけど…

工場のはんたいがわへの道は すぐに見つかった。

こうして ぼくは 「せかいのはて」のむこうがわが どんなようすか
じぶんの目で たしかめて見ることにしたんだ。


そこには ジャングルもなかったし きょうりゅうも いなかった。

そのかわりに パワーショベルが てつくずの山を かきわけていた。


その先では 道は ひろくなって 川の むこうぎしが 見えた。
そこには がいこくの お城は なかった。

でも、そこにあった 工場は お城みたいに 大きくて かっこうよかった。


そのまた先では あたらしい ビルディングが いくつも ならんでいて、 その横では べつの ビルディングが たてられてる さいちゅうだった。

その ようすは そうぞうした 未来のまちとは だいぶ ちがっていたけど すこし にているところもあって これから だんだんと 未来らしく なっていくんだろうなって おもった。


しばらくして、また道は せまくなった。

 川ぞいの道には 「せかいのはて」とそっくりな場所がいくつもあって…。

ぼくは そのたびに ちょっとだけ道を ひきかえして、国道に出たり、

土手を のぼったり おりたりしながら 先へすすんだんだ。

いくつ「せかいのはて」をこえても,そのさきには まったくべつのけしきが ひろがっているのは なんだかふしぎな 気分だったな…。

ぼくは

    ペダルを

        こぎ続けた。


そうして たどりついたのは とても みはらしのいい 場所だった。右がわには もっと大きな川が流れていて、二つの川がまじわった ところに かんらん車が見えた。あれは なんていう遊園地かな?ここまでくれば ハヤシくんや ゲンちゃんも かんしんして くれるかも しれないな。

まだ道は どこまでも つづいていた。でも、もう 帰るじかんだった。家につくころには ばんごはんの じかんは とっくに すぎていたので、おかあさんに目の玉がとびでるほど しかられた。でも、その夜ぼくは わくわくして ねむれなかったんだ、なぜって あした ふたりに 言えるからね…


「ひみつの ぬけみちを みつけたんだ!こんど さんにんで  たんけんして みようよ!」って。


おわり



たなか やすひろ
46歳 アルバイト 東京都荒川区
<受賞のことば>
最初に電話で受賞の連絡をうけた後、実は何かの聞き間違いだったんじゃないかと不安に駆られ、後日、書面での案内が届くまで、この件を親しい友人にも話せずにいました。(笑)
私の作品が過去の優れた受賞作と並ぶことが出来るなんて光栄です。本当にありがとうございました。

短評
大袈裟な題は、少年の見る幻想の秘密の世界のこと。それは好奇心の塊が現実の風景と重なり、友達に告げる証として展開する。舞台装置風に見える遠近法を効果的に使った絵が、淡淡と並ぶ情景を楽しめる絵本である。
(杉田 豊)


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