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日産 童話と絵本のグランプリ
第30回(2013年度)入賞作品
第30回絵本の部・大賞 (※掲載している作品は受賞時点のものです。出版作品とは異なる場合があります。)

「木(きぃ)ちゃん」
作・絵/ながやま ただし



森のおくの ちいさな原っぱに
木のあかちゃんが うまれました。

木(きぃ)ちゃんです。


木(きぃ)ちゃんは
太陽にむかって
げんきいっぱい。


太陽も風も
木(きぃ)ちゃんを
やさしく つつみます。
木(きぃ)ちゃんは うれしくて
どんどん どんどん
大きくなります。


そんなある日、
けむしのきょうだいがやってきて
木(きぃ)ちゃんのはっぱを
むしゃむしゃ むしゃむしゃ。


うごけない木(きぃ)ちゃんは、
けむしのきょうだいが
おなかいっぱいになって
かえっていくのを
じっと まちます。


けむしのきょうだいが
かえったあと、
森は雨のふらない日が、
なんにちも つづきました。


のどがからからで
ふらふらの木(きぃ)ちゃん。
「もうだめだ〜」とおもっていたら、
はいいろのくもがやってきて…
つめたくてきもちのいい雨が
ふりだしました。


雨のおかげで
すっかりげんきになった
木(きぃ)ちゃんのところへ
こんどは、かたつむりのおやこが
やってきて木(きぃ)ちゃんの
はっぱを むしゃむしゃ むしゃむしゃ。


うごけない木(きぃ)ちゃんは、
かたつむりのおやこが
おなかいっぱいになって
かえっていくのを
じっと まちます。


雨があがって
かたつむりのおやこもかえった
しずかなよる、
木(きぃ)ちゃんは すこしだけ
おとなの木になっていました。


だって、こんなにもたくさんの
きれいな花をさかせることが
できたんですから。

その うつくしさは森じゅうの
ひょうばんになりました。
          すると…


みつばちやちょうちょがやってきて、
木(きぃ)ちゃんの花のみつを
ぜんぶ すってしまいました。

うごけない木(きぃ)ちゃんは、
花がちっていくのを
かなしいきもちで
じっと見ています。


じまんの花も
ぜんぶ ちってしまいました。
かなしくて かなしくて
木(きぃ)ちゃんは
なみだをひとつぶ おとしました。

それから しばらくすると…
なんと!


かわいい赤い実が
えだじゅうに みのりました。
木(きぃ)ちゃんは
うれしいきもちでいっぱいです。

そのうつくしさは、
森じゅうの ひょうばんになりました。
          すると…


つぎからつぎに
とりたちがやってきて
木(きぃ)ちゃんの赤い実を
ぜんぶ たべてしまいました。

うごけない木(きぃ)ちゃんは、
赤い実がなくなっていくのを
くやしいきもちで じっと見ています。


風もつめたくなり
おなかいっぱいになった とりたちは、
さっさとどこかへとんで行きました。
きれいな花もかわいい赤い実も
すっかりなくなった木(きぃ)ちゃん。
今では、うつくしいと森じゅうで
ひょうばんだったことも
まるで うそのよう。


森にも
冬がやってきました。
つよい北風が木(きぃ)ちゃんの
じまんのはっぱまで
ちぎってしまいます。

それでも木(きぃ)ちゃんは、
じっと、じーっと立っています。


つめたい北風のきせつがおわり、
やっと あたたかい
太陽のきせつがやってきました。
木(きぃ)ちゃんの えだにも
あたらしいはっぱが
はえてきました。


太陽も風も木(きぃ)ちゃんを
やさしく つつみます。
木(きぃ)ちゃんは、うれしくても
かなしくても くやしくても
いつでも ただ じーっと
立っているだけ……
だけど見て!
木(きぃ)ちゃんのそばには あたらしい
木のあかちゃんが うまれましたよ!



ながやま ただし
55歳 グラフィックデザイナー 沖縄県那覇市
<受賞のことば>
初応募から10年。ここまで導いてくださった審査員の皆様に心から感謝しています。ありがとうございました。

短評
描画の技術が高まると、必然的に目線が細かく敏感になる。気づくと本当に必要な造形なのか、色彩なのか?神経が疲れ、持っていたものがポロポロと落ちる。残ったものがキラリと光った。今がスタートだ。頑張れ!
(杉田 豊)


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