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日産 童話と絵本のグランプリ
第27回(2010年度)入賞作品
第27回絵本の部・大賞 (※掲載している作品は受賞時点のものです。出版作品とは異なる場合があります。)

うみのそこの てんし
作・絵/松宮 敬治



「27」は うみのそこで しごとをする ロボットです。
まいにち、 くらく つめたい うみのそこで、 きれた でんせんを つないでいました。


27は いつも びくびく していました。
ぼくと ふねを むすぶ ロープが きれたら どうなるんだろう。
ぼくの スクリューは さびて ぼろぼろ。
きっと うかびあがれないよ。
うえの ふねにいる にんげんたちは、 ちゃんと たすけて くれるかな。
 
そう おもうと こわくて こわくて、 なんども なんども せなかに つながった ロープが きれていないかを たしかめるのです。
そして、 いつものように つぶやきます。
「むかしは よかったなあ。
だいじにされて まいにち ぴかぴかに みがいてもらったなあ。
なのに いまじゃあ からだじゅう ぼろぼろさ。
はあ、さむいよ。 こわいよ。 さみしいよ。
もう いやだよ、 こんなしごと。」


でんせんを つなぎおわった 27は、 うえの ふねにいる にんげんたちに しんごうを おくりました。
「できたよー! はやくひきあげて!」
ところが、 いくらまっても なんの へんじも ありません。
「どうせまた、 トランプでも してるんだろうなあ。」
27が やれやれと ふねのほうを みあげようとした そのとき、 あしもとが ぐらりと ゆれたのです。
「しまった! がけくずれだ!」


27は いわと いっしょに、 がくんと おちて しまいました。
「またか!
でも、 ロープで つながれているから、
いつも へいきさ。」
おちながら ふりかえった 27は、 おどろいて さけびました。
「ロープがきれてる! たすけて!」


27には どうすることも できません。
ひっしに スクリューを まわそうとしても、
がりがりと さびの けずれるおとが するばかり。
どんなに もがいても、 どんどん しずんでいくのです。
27は うえのふねの にんげんたちに はらをたてました。
「どうして スクリューを なおしてくれなかったんだ!」


ふかいうみに すむ ふしぎなすがたの さかなたちが、 もがきながら しずみつづける 27をみて、 ささやきあいます。
「にんげんが スクリューを なおさなかったのはな、 あいつのかわりに しんがたのロボットを かってもらうため なんだぜ。」
そのこえは 27にも きこえました。
そうか、 ぼくは ようなしの、 おんぼろロボットなのか・・・。
そうおもうと、 27のこころも どんどん しずんで いきました。
ふかく ふかく。


27は どんどん ふかく しずみます。
それにつれ うみのみずも どんどん おもく なりました。
おしつぶされそうになった からだが ぎしぎしと おとをたて、 とうとう せなかのライトが ぱりんと つぶれてしまいました。
 
まっくらになった うみのなか、きれた
ロープの うっすらとした かげだけが、
うえにむかって のびています。
27は それをみて なさけなく おもいました。
「でんせんを つなぐのが ぼくの しごとなのに、 あのロープを つなぐことが できないなんて・・・。」


27は なにもかも あきらめました。
「ロボットも てんごくに いけるのかなあ」
そうつぶやくと しずかに めを とじました。
どれだけ ふかく しずんだのでしょう。
27は とつぜん、 ふわりと からだが
うきあがる きがしました。
「ああ、 ついに おしまいか・・・。
てんごくから おむかえが きたみたいだ・・・。」


27は ひとめ てんしを みてみたいと、
びくびく しながら うすめを あけました。
すると なぜか くろい かたまりの うえに のっているのが わかりました。
しかも すごいはやさで うごいているでは ありませんか。
 
27は ふりおとされそうになり、 あわてて その くろい かたまりに しがみつき さけびました。
「ぼくは いきているの?」
「ぐわはは! そう おもえるなら そうなんだろうよ!」
その くろい かたまりは、 おおきな こえで わらうと、 どんどん はやく およぎました。
うえに! うえに!


その くろい かたまりは、 クジラに にていました。
「なあ、 ロボットくん。 たすけた かわりと いっちゃなんだが、 たのみがあるんだ。 きいてくれるかい?」
かれは つのの おれた イッカクで、 じぶんの おれた つのを つないで ほしいと たのみました。
27は ちょっと かんがえて こたえました。
「うん、やってみるよ。」


それは、 27には むずかしい しごとでした。
いままで、 つないできた でんせんとは わけがちがいます。
それでも、 かっこよく がんじょうに つないであげようと ひっしに がんばりました。


「ふう、できた・・・。」
27は いつものように、 しごとが おわったことを しらせようとして きがつきました。
「そうか、 もう そんな ひつようは ないんだ!」
そう、 このしごとは にんげんに めいれいされた しごとでは ないのですから。
 
27は うれしくなって、 さびついた スクリューを、 ぐいーんと いきおいよく まわしてみました。
「あれ? まわったよ!」


イッカクは うれしそうに はなし はじめました。
「つののない イッカクは、 だれにも あいてに されないんだ。
なにもかも いやになった おれは、 もうしんでしまおうと、まっくらな うみのそこで、 めをとじて じっとしていたんだ。
そしたら とつぜん、 まわりが あかるくなったような きがしたから、 ああ、 ついに てんごくから おむかえが きたんだなって おもったんだ。
ひとめ てんしを みてやろうと こわごわうすめを あけてみたら、 てんしじゃなくて、 おまえが おちてきているのが みえた。
そのとき おれは はっと きがついた!
おまえが しごとを しているところを ずっとまえから みていたから、
おまえなら たすけて くれるかも してない!
つのを つないでくれるかも しれない!ってな。
あそこに おまえが おちてこなきゃ、 おれは そのまま しんでたぜ。
こころから かんしゃするよ!」
 
27は てれくさそうに こたえました。
「そんな。 ぼくも きみに かんしゃ しているんだ。
にんげんたちに みすてられた ぼくを すくってくれて、 おまけに ぼくの しごとを こんなに よろこんで くれるなんて、 ほんとうに いきかえった きがするよ!
ありがとう!」


「にんげんに みすてられた だって?」
イッカクは つのを ふりあげ、 いいました。
「そうだ おれ、 むかし、 じいさんにきいたことがある。
ロボットが いっぱい いる しまが あるってな。
そこが どんなところかは しらないけど、いってみるか?」
27は ちょっとかんがえて こたえました。
「そうだね、 もう ぼくを つなぎとめるロープは ないんだ。 どこへでも いけるよね。」


イッカクは 27をのせると、 あさひに むかって およぎだしました。
「ぐわっはっは! おれたちなら、 てんごくへでも およいで いけるかもな!」
「そうさ、 どこへでも いけるさ!」
ふたりの おおきな わらいごえが、 ひろい うみに ひびきわたりました。



松宮 敬治(まつみや けいじ)
46歳 自営業 大阪府大阪市
<受賞のことば>
 歴史ある素晴らしい賞を受賞でき、たいへん光栄に思います。受賞の知らせを受けて初めて気付きましたが、今回のグランプリ開催が「第27回」で、主人公のロボットの番号も「27」でした。私のラッキーナンバーである「27」をロボットの番号にしたのですが、この数字には不思議な縁を感じずにはいられません。
 応援してくれた妻、絵を教えてくださったアートスクールの先生方ならびに生徒の皆さん、モデルになってくれたカメの「マーチ」、私の作品を気に入ってくださった全ての人々に感謝します。

短評
 “うみのそこ”という現実と非現実のはざまのような場を借りて、生物と機械のはざまのようなキャラクター達をうまく使い、情感たっぷりの一冊に仕上げた力量を高く買いたい。最後の朝日を、らしく輝かせたかった。
(杉浦 範茂)


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