日産グローバルTOP
日産 童話と絵本のグランプリ
第23回(2006年度)入賞作品
第23回絵本の部・大賞 (※掲載している作品は受賞時点のものです。出版作品とは異なる場合があります。)

スイカぼうず
作・絵/富田 真矢



 スイカみたいなスイカぼうずは、つよくなることだけを考えて、きびしいしゅぎょうをつんできた。
「しゅぎょうは、おわりだ。もう、おれよりつよいやつは、いないはずだ。」
 そのとき、どこからか声がした。
「しゅぎょうがおわるのは、おまえが、ひっくりかえされたときじゃ。」
 スイカぼうずは、ムッとした。
「なんだと?おれをひっくりかえせるやつがいるというのか。」
 スイカぼうずは、しばらく考えてから、大声でさけんだ。
「よーし、それなら山で一番つよいやつよ、でてこーい。」
 すると…


「なんだ、呼んだか?」
 地面がゆれるような声がして、山のぬしがでてきた。
 スイカぼうずは、からかうようにいった。
「おい、 へなちょこ!おれを、ひっくりかえしてみろ。」
 山のぬしは、かんかんにおこって、
「なんだと、なまいきなやつめ。」と、毛をさかだてながら、おそいかかってきた。
 そのとき、スイカぼうずは、さっと地面にもぐって、頭だけを出してさけんだ。


「つるつる頭だ、そりゃーっ。」
 すると、山のぬしは、スイカぼうずのつるつるした頭にすべって、
 ツルン、ドッシーン!
まっさかさまに、ひっくりかえってしまった。
「あいたたたたっ。」
 山のぬしは、泣きながらにげていった。
「どうだ、まいったか。」
 スイカぼうずは、頭をなでながら大いばり。
 そして、また大声でさけんだ。
「よーし、それなら次は、海で一番つよいやつよ、でてこーい。」
 すると…


「だれだー、ひるねのじゃまをするのは?」
 海がゆれるような声がして、海のぬしがでてきた。
 スイカぼうずは、また、あいてをおこらせるさくせんをとった。
「おい、へなちょこ! おれを、ひっくりかえしてみろ。」
 海のぬしは、あんのじょうかんかんにおこって、
「なんだと、なまいきなやつめ。」と、まっかな顔で、おそいかかってきた。
 スイカぼうずは、まってましたとばかりに、さっと地面にもぐって、頭だけを出してさけんだ。


「つるつる頭だ、そりゃーっ。」
 すると、海のぬしは、スイカぼうずのつるつるの頭にすべって、
 ツルン、ドッブーン!
「あぷぷぷぷっ。」
 海のぬしも、泣きながらにげていった。
「どうだ、まいったか。」
 スイカぼうずは、頭をなでながら、ますます大いばり。
 そして、また大声でさけんだ。
「よーし、のこるは空で一番つよいやつよ、でてこーい。」
 すると…


「だれだー、わしを呼んだのは?」
 空がゆれるような声がして、空のぬしがあらわれた。
 スイカぼうずは、いつものように、あいてをおこらせた。」
「おい、へなちょこ!おれを、ひっくりかえしてみろ。」
 空のぬしも、スイカぼうずのさくせんどおり。もうかんかんにおこって、
「なんだと、なまいきなやつめ。」と、大声でいいながら、おそいかかってきた。
 スイカぼうずは、また頭だけを出してさけんだ。


「つるつる頭だ、そりゃー。」
 すると、空のぬしはスイカぼうずのつるつるの頭にすべって、
 ツルン、ドッターン!
「あいてててっ。」
 空のぬしも、やっぱり泣きながらにげていった。
 スイカぼうずは、あの声にむかってたずねた。
「おれを、ひっくりかえせるやつは、もういないぞ。しょぎょうはおわりじゃないのか?」
 しかし、なんのへんじもない。


「おれより、つよいやつなんて、いるものか。」
 ブツブツいいながら歩いていると、道のまん中に、ちいさい花がたっていた。
「じゃまなやつだ。わるいが、ちょっとひっくりかえってもらおうか。」
 スイカぼうずは、いつものさくせんだ。
「おい、へなちょこ!おれを、ひっくりかえしてみろ。」
 しかし、ちいさい花は、だまってうごかない。


「どうした、よわむし、かかってこい!」
「そらそら!」
「えーい、どうしたーっ!」
 スイカぼうずが、どんなにいっても、ちいさい花は、じっとしてうごかない。
 あいてが、かかってこないことには、さくせんはつかえない。
 スイカぼうずは、くたくたになってつぶやいた。
「どうして、かかってこないんだ。」


 すると、それを見ていたウサギたちが、やってきた。
「地面のしたに、ねっこがあるから、うごけないんだぞ。」
 スイカぼうずは、おどろいていった。
「うごけないやつなんているのか?」
「うごけないけど、つよいんだぞ。おまえなんかより、ずっとつよいんだぞ。」


「なにい?」
 スイカぼうずは、そのちいさい花をじっと見た。
「おいっ、それならやっぱり、おれをひっくりかえしてみろ。」
 でもちいさい花は、だまったまんま。
 すると、べつのウサギが、ちょっとしんぱいそうにいった。
「道のまん中なのにうごけないから、ふみつぶされるかもしれないの。」
 しばらく花を見ていたスイカぼうずは、ウサギたちをみわたしていった。
「おれよりつよいとは、おもしろい。たすけてみよう。」


 そして、花がふみつぶされないように、道をつくったスイカぼうずはいった。
「ああ、はらがへった。スイカをつくろう。」
 できたスイカは、ウサギたちにも分けてやった。
 ウサギたちのうれしそうな顔をみると、自分もちょっと、うれしくなった。
 花はぐんぐん大きくなって、スイカぼうずを見おろした。
「さあ、おれを、ひっくりかえしてみろ。」
 花は、だまって風にゆれた。


 ふんわり、わたがしみたいに大きくなった花に、スイカぼうずは、はなしかけた。
「おまえみたいな、やさしそうなやつが、おれを、ひっくりかえしたりはしないよなあ。」
 そして、こたえない花をぼんやり見ていた。
 すると、なぜか山のぬしたちの姿が、うかんできた。
「そうだ、いつかのおわびに、このきれいな花を見せてあげよう。」
 スイカぼうずは、しょうたいじょうをかいた。


 みんな、よろこんで、やってきた。
「おお、すばらしい花だ。」山のぬしがいった。
 スイカぼうずは、つくったスイカをぜんぶごちそうした。
「これはあまい。」海のぬしがいった。
「うん、あまい。」空のぬしがいった。
「こんなにあまいものは、はじめてだ。」山のぬしがいった。
 スイカぼうずは、みんなのほうに、むきなおり、てれくさそうにいった。
「ひっくりかえしたりして、すまなかった。このとおりだ。」


 スイカぼうずが、おじぎをすると、ごろんとさかさまにひっくりかえった。
 すると、どこからか、またあの声がした。
「はいっ、しゅぎょうはおわりじゃ。おめでとう!」
 スイカぼうずは、さかさまに花を見ると、わらいながら、つぶやいた。
「やりやがったな。」


富田 真矢(とみた しんや)
44歳 非常勤講師 福岡県筑紫野市
<受賞のことば>
 家族で、お祝いをしてくれました。「おめでとう。」と言った妻の言葉がちょっと涙声になっていたことを忘れないようにこれからも制作に励みたいと思います。ありがとうございました。
●第17回ニッサン童話と絵本のグランプリ優秀賞
●第18回ニッサン童話と絵本のグランプリ佳作
●第20回ニッサン童話と絵本のグランプリ優秀賞
●第21回ニッサン童話と絵本のグランプリ優秀賞
●第22回ニッサン童話と絵本のグランプリ優秀賞

短評
 レベルの高いところの壁に鍛えられて、大きく逞しく成長し見事突き抜けた。過去の受賞歴で力量の程は証明済みだが、更に力強さと風格がプラスされた。壁を無駄にしなかったのは見事。だが「しゅぎょう」は終らない。
 (杉浦 範茂)


入賞作品一覧に戻る