| 第21回童話の部・優秀賞 |
ごほうびカプセル
作/正木 恭子
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僕が今一番夢中になっていることは、間宮先生からごほうびカプセルをもらうことだ。僕だけじゃない。僕のクラスみんなが、ごほうびカプセルゲットに一生懸命なのだ。 |
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たかしが照れくさそうにカポッとカプセルを開けると、大きなくわがたが入っていて、カプセルから、のそのそでてきた、と思ったら、今度はどんどん、どんどん大きくなって、後ろ足でたちあがると、教室の天井に届くほどの大きさになった。みんなが、大パニックに陥ったのはいうまでもない。
間宮先生のカプセルとその中身は、開けてしばらくたつと、ふっと、消えてなくなってしまう。それで、中身は、いつも日常のできごとをはるかに超えているので、大人に言っても信じてもらえない。しかも、巨大クワガタ出現のように、大騒ぎになることもよくあったから、みんな、親には、ナイショにする、と言う暗黙の了解があった。だって、大騒ぎが親にバレて、先生のカプセルが2度ともらえなくなるのは、絶対いやだったからね。
カプセルをもらえる時は、いいことをした時、というわけではない。
今までのデータによると、
(1)カプセルをもらうために、放課後残って、みんなの机をピッカピカにした時は、すごくほめてくれたけど、カプセルはもらえなかった。
(2)算数のテストで、クラスでただひとり、百点をとったヤツももらえなかった。
(3)授業の後、黒板をみがきあげる作業を三日間ほど続けてみたが、もらえなかった。頭をなでてもらったけど・・・
(4)市の水泳大会に学校代表で出場して、二着をとった女子ももらえてない。
逆に、カプセルをもらえた時は、虹・クワガタの他の例をあげると、
(1)よく飛ぶ紙飛行機の折りかたを考えついてみんなに教えてくれた黒田君。
→青い星型のカプセルで、カポッと開けると、らくだ色のシャツとステテコ姿の小さなおじさんがでてきて、黒田君の作った紙飛行機に乗って、「みんなぁ、見送りありがとうよ〜。」と言いながら窓の外へ飛んでいった。(あのときは、カプセルをもらった黒田君のこと、ちっともうらやましくなかった。そう、カプセルにはあたりはずれがあるんだ。)
(2)帰り道、カバン持ちをしていて、じゃんけん九連敗中の沖田君が、六個のランドセルをよろよろ運んでいたとき。
→たまたま通りがかった先生が、沖田君の力持ちぶりに感心して、ピンクのカプセルを渡した。プチンと開けると、ピンク色のけむりとともに、真っ赤なチャイナドレスのオネーサンが出てきて、沖田君の肩をマッサージして、最後に沖田君のほっぺにちゅーして、ぱっと消えたんだ。先生は「女子にはナイショな。」とウインクして歩いてった。その後、みんな、じゃんけんはせず、沖田君にずぅっとランドセルを持たせたね。
(3)長い間、病気で入院していた広沢さん
→クラスに戻ってきた時、「よくがんばったね。」と言って渡したのは、むらさきのひよこの形のカプセルだった。広沢さんがカポンとカプセルを開けるのと、「しまった!まちがえた!」と先生が叫んだのは、同時だった。カプセルの中から広沢さんの顔めがけて、勢いよく水がとびだし、広沢さんは、びしょ濡れ。びっくりぎょうてん、大きく目を見開いて、絶句している広沢さんの前にタオルを持った河童がでてきて、「ごめんねぇ。」と言いながらぐしょ濡れの広沢さんをふいて、「おわびのしるし。」ときゅうりを渡してふっと消えた。びしょ濡れだった広沢さんも一瞬でもとどおり、ひとしずくの水滴もたれていなかった。でも不思議ときゅうりだけは、消えなかった。先生は、「ほう、こりゃあ珍しいな。」と小さくつぶやいてから、「河童のくれたきゅうりを食べると、病気知らずの丈夫な体になるんだよ。」と言った。広沢さんは、にっこり笑って、ポリン、とかわいらしい音をたてて、その場できゅうりを食べた。そのせいかどうか知らないけど、広沢さんは欠席せずにまいにち元気よく学校に来てる。
僕らは、毎日、学校へ行くのが待ち遠しかった。カプセルをゲットするために、いろんな方法を試してみるのが、すごく楽しかった。自分がもらえなくても、誰かがもらえば、どんなことがおきるのかと、わくわくした。
そんなある日、先生との別れは、突然やってきた。もともと、間宮先生は、本当のクラス担任の葉子先生が、赤ちゃんをうむためのお休みの間の代理の先生だったのだ。
「明日から、みんなの大好きな葉子先生が、クラスにもどって来られます。だから、僕は、今日でみんなとお別れです。」
確かに、みんな、葉子先生のことは大好きだけど、間宮先生のことも、とっても好きだった。
「最後の記念にカプセルをひとつ、一番がんばってた人に、あげようと思う。」
みんな、おぉ〜っと、歓声をあげた。一番がんばってた人って誰だろう、ひょっとして、もしかして、僕かなぁ?
クラス全員が、期待いっぱい顔を紅潮させて、先生の発表を待っていた。
「発表します!最後のカプセルをゲットするのは・・・」
もう僕の手は、汗でびっしょりだった。
「間宮先生です!」
「えええ〜っ」
みんなが大きな不満の声をあげると、先生はにやっと笑って言った。
「だって、このクラスでひとつもカプセルもらってないのは、僕だけだからね。自分へのごほうびだよ。」
まあいいか。最後は、どんなカプセルだろう。みんながじぃっと見つめる中、先生がとりだしたのは、透明だけど、ダイヤモンドみたいにきらきら光るカプセルだった。
「キュポン。」
と軽い音をたてて開いたカプセルの中からは、白いペガサスが出てきた。間宮先生はペガサスにさっとまたがると、
「じゃみんな、元気でな!」
と手をふって、窓から空のほうへ上っていった。
その後黒板の隅のほうから、赤い屋根の、家の形のカプセルが見つかった。そのカプセルには、手紙が添えてあった。手紙には、『がんばったみんなへ』と書いてあった。カプセルをパカンと開けると、小さい間宮先生が出てきて、
「久しぶり。」
と言って、またカプセルの中へ戻っていった。
カプセルにある小窓をのぞくと、小さい間宮先生がコーヒーを飲んでいた。
その小さい先生は時々出てきて、
「勉強がんばってる?」
などと質問したり、教室内をジョギングしたりしている。
あれから、本物の間宮先生とは会っていないけれどさびしくない。
だって、間宮先生が残してくれた、小さい先生が一緒にいてくれるから。
正木 恭子(まさき きょうこ) |
短評 |
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