|
|
 |
 |
| 第19回絵本の部・優秀賞 |
 |
サルのピキ
作/成田 聡子
|
あるところに 大きな木とサルのピキがなかよく暮らしていました。大きな木は雲よりもたかく、おほしさまにもとどきそうな高さでした。ピキは、大きな木がつけるおいしい木の実を食べたり、大きな木の枝でおやすみしたり、ひなたぼっこをしたり、大きな木の枝にぶらさがってブランコあそびをしたり、いつだって大きな木といっしょです。ピキは大きな木が話してくれるちょっと昔のおかしい話や、そのちょっと前の昔の楽しい話や、とても遠い昔のびっくりする話が大好きです。
|
 |

|
|
あるとき 大きな木はピキに言いました。「ピキよ 私はこれから百年のねむりにつかねばならない。私がねむりについたら 私の枝を使って ながいながいはしごを作りなさい」 そう言って大きな木は 百年のねむりにつきました。ピキはとてもさみしくなしました。いつもいっしょにいた大きな木は 百年のねむりについてしまって ピキはひとりぼっちになってしまったからです。
|
 |

|
|
ピキはしばらくの間 しょんぼりしていましたが 大きな木が言っていたことを思い出し ながいはしごをつくることにしました。
のこぎり ゴリゴリ ギーコ ゴリゴリ ギーコ なんて大変な作業でしょう ピキのからだから汗がポタポタ ポタポタ
切り出したたくさんの木の棒を ヨイショ ヨイショ ひろい集めて さあ次は はしごのくみたてです。たくさん動いているうちにピキのさみしさも少し小さくなっていくようでした。
とんかちトントン とんかちトントン さあ いよいよはしごの完成にちかづいてきました。
|
 |

|
|
とうとう ながいながいはしごができあがりました。ピキはながいはしごをどうしようかとしばらく考えていましたが、おそるおそる雲の下にはしごをおろしてみました。はしごをさいごまでおろした時、なにかに コツンとあたる音がしました。
|
 |

|
|
ピキは おやつの木の実をたくさんもって ながいはしごをおりてみることにしました。ピキの心臓は バクバク しています。だってピキは雲の下に今まで一度もいったことがなかったからです。
|
 |

|
|
ながいはしごをおりていくと そこは大きな葉っぱのある森でした。そして そこにはピキがはじめてみる生き物がいました。それはうさぎのピッピです。ピキとピッピは「やあ」「やあ」とおたがい あいさつをしました。二人はすぐになかよくなり いろんな話をしました。ピキは雲の上の大きな木との暮しのこと ピッピはこの森での暮しのことなどです。 話しているうちに 森の上から ポッツ ポツッ ポッツ 水のつぶがふってきました。それはピキのはじめてみる雨というものでした。
|
 |

|
|
ピッピが雨やどりのできる 大きな葉っぱの下に案内してくれました。葉っぱにあたる雨の音が ザーザー トン ボンボン ザー トントン ボン まるでリズムのようです。二人は雨のリズムにあわせて へんてこなおどりをはじめました。ながい間 二人は楽しくおどりつづけました。ザー トントン ボン
|
 |

|
|
日も暮れてきて ピキは雲の上の大きな木にかえることにしました。ピキはピッピのつんだやわらかくておいしい葉っぱをたくさんもらいました。ピッピもピキのもってきたあまくておいしい木の実をたくさんもらいました。ピキとピッピはまた会うことを約束して お別れしました。
|
 |

|
|
ピキは この前とは反対のほうに はしごをおろしてみることにしました。今度は前よりこわくありません。ピキがおりてきたところは たくさんの水がジャブジャブとながれる川というところでした。そこでピキは はじめてみる生き物に出会いました。それはワニのトットです。ピキとトットは「やあ」「やあ」とおたがい あいさつをしました。トットは少しこわそうでしたが 話してみると とても楽しくて二人はすぐになかよくなり いろんな話をしました。
|
 |

|
|
ピキとトットは川の中を スイスイ フワフワ 泳ぎました。もちろん ピキにとって泳ぐということははじめてです。それは まるで空に浮かんでいるようで とても気持ちのいいものでした。それから2人はながい間 川の中で おにごっこをしたり いっしょに泳いだりしてたくさん遊びました。
|
 |

|
|
日も暮れてきて ピキは雲の上の大きな木にかえることにしました。ピキはトットのつかまえたおいしい魚をたくさんもらいました。トットもピキがもってきたあまくておいしい木の実をたくさんもらいました。ピキとトットはまた会うことを約束して お別れしました。
|
 |

|
|
ピキは よこにはしごをのばしてみることにしました。もうピキはこわいことはありません。よこにのばしたはしごを歩いていくと ピキの前をみたことのない生き物が こちらに向かってあるいてきます。それは鳥のポッポでした。ピキとポッポは「やあ」「やあ」とおたがいに あいさつをしました。ピキとポッポはすぐになかよくなりました。そしていろんな話をしました。
|
 |

|
|
二人はながいはしごをてくてく歩いていき ポッポの暮らしている岩山につきました。そこは たくさんの岩山が空にむかって そびえていました。二人はいちばん高い岩山にのぼりました。なんて素敵なながめなんでしょう ポッポが大きな声でうたいだしました。ピキもつられて大きな声でうたいだしました。
うたは岩山じゅうにひびきわたりました。ピキとポッポの大合唱は ながい間かなでられました。
|
 |

|
|
日も暮れてきて ピキは大きな木にかえることにしました。ピキはポっポが雲でつくったおいしいジュースをたくさんもらいました。ポッポもピキのもってきたあまくておいしい木の実をたくさんもらいました。ポッポは空を飛びながらピキを途中まで送りました。そしてピキとポッポはまた会うことを約束して お別れしました。
|
 |

|
|
こうして ピキはたくさんのはしごを作って いろんな方向にのばして いろんな友達に出会いました。大きな木の上には いろんなおいしい食べ物や かわった食べ物がいつもあるようになりました。そして たまには友達が大きな木に遊びにくるようになりました。
ピキはもうさみしくありませんでした。
大きな木もうれしそうにほほえんでいるようです。
こんどはあなたのところにも ピキがはしごをつたっておりてくるかもしれません。
|
 |

|
成田 聡子(なりた さとこ)
32歳 派遣社員 愛知県名古屋市
<受賞のことば>
初めて描いた絵本が賞をいただいて、大変びっくり、うれしく思います。これをはげみに自分の描いた絵本が多くの人に読まれる夢を見続けて、描き続けていきたいと思います。 |
短評
黒一色でユニークな主人公のサルに魅了される。スクラッチ風の画法は、シンプルな空間を演出している。つくられる画面構成に知恵が感じられるのは良いが、そのモダンさに類型的な形や、説明過多が見えるのが惜しい。(杉田 豊) |
入賞作品一覧に戻る
|