■選 評■



童話の部


日本児童文学者協会名誉会長

藤田 圭雄

四百字詰原稿用紙10枚以内で子どもの喜ぶような楽しい童話を創る ということは、児童文学専門の作家にとってもなかなかむつかしい ことです。作家の心の中に浮かび上り、それが、立派な作品として まとまって行くまでの苦心は、それが子どもという特別な対象を相 手にするだけに余計にむつかしいといわねばなりません。15年に わたるニッサンと大阪国際児童文学館という二つの強力な組織が今 年もこうして、美しい、楽しい力強さを大阪に花開かせた喜びをみ なさんに贈ることが出来ました。


大阪国際児童文学館理事長兼館長

中川 正文

年ごとに水準が向上していくことは嬉しいです。一様にまとめる技 術も良くなりましたが、それだけに、ずばぬけた作品が目立たなく なったような気がします。とくに今年は童話の方は生活童話風のも のが充実していましたが、ただ子どもの生活をスケッチするだけの ものも多くて残念でした。絵本も魅力的な作品がふえ、15年つづけ た甲斐があったと思いますが、絵にくらべ文章の方が低調です。絵 と同時に文章の勉強も忘れないで下さい。そしてこの催しがいい日 本語を守る最後の砦にして下さい。


童話作家

あまん きみこ

今回は、さまざまな声の作品が揃っていたと思います。その一つ一 つの作品に、自らの世界を表現したい作者の気持ちが感じられ、私 は緊張しながら出会いの時間を楽しませていただきました。賞をの がしたものの幾つかは、誰に読ませたいかという問題も浮上しました。 作品を書き終えたとき、少し時間をおいて声をだして読んでみたら どうでしょうか。1行足らずの文章や2、3字の言葉を足すこと、 または消すことがどんなに大事かわかりやすいと思いますので。


(財)東京子ども図書館理事長

松岡  享子

審査員をお引受けして2回目。昨年に比べると、童話、絵本とも 全体にしっかりした作品が多かったという印象をもちました。 入賞するしないにかかわらず、苦労して作品を完成させた方々は、 それぞれ相当の達成感、満足感を得られたことでしょう。自分の内 的世界を表現するという点では、高得点をさし上げたい人が大勢い ました。ただ、出来上がった作品が、読者、とりわけ子どもたちと どうコミュニケートするかを考えると、どうしても点がからくなっ てしまうのでした。




絵本の部


絵本作家

杉田 豊

豊応募点数が増加しましたが、優れた作品も前回より多いと感じまし た。珍しいことと同時に嬉しい第15回の記念になりました。 最終選考に残った作品はユニークなものばかりで、計算された完成 度の高い画法と構成。大胆に自由奔放なタッチと色彩の状景画。幻 想的な世界を、柔らかく伸び伸びと綴った絵。そして精緻で、ドラ マチックな舞台を丁寧に描いた絵と、将来性の表れを見ました。 その他にも良い作品が多く、それぞれの現在ある新鮮さを失わずに 大成されることを願いました。


絵本作家

杉浦 範茂

前回この欄に、どんぐりの背比べでは選ぶ方もつらい……などと大 変失礼なことを書きました。それで発憤された訳でも無いのでしょ うが、過去二番目に多い応募作品が集まりました。応募点数だけで なく、審査過程で感ずる手応えも前回とは違うものを感じました。 最後まで残った作品のレベルも例年に劣らぬ粒揃いでした。例年と 言えば、やはり例年言われることですが、絵に比べて文章に魅力が 無いということです。文章だけでも持ち堪える位の力が無いと、絵 は真珠でも文章が豚になります。




(株)日産自動車取締役社長

塙 義一

「ニッサン童話と絵本のグランプリ」もお陰様で15周年を迎えま した。第1回から現在まで23作品を出版いたしました。これら の作品は日産の各販売会社を通じて全国の図書館に、また、日産の 各事業所から周辺の幼稚園等に寄贈しております。これまでたくさ んの作品を子どもたちにお届けできたこと、そして、このグランプ リから新人作家が多く誕生されたことを大変うれしく思います。こ れからも良質な童話や絵本が生まれることを願い、皆さまの創作活 動を応援させていただきます。


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